怪談、創作、ストックなう

自作怪談、原稿募集用作品まとめです。
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☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】6懐かしい眼差しに、私は自然と唇が綻び、向こうもそれに応えるように満面の笑顔を私に向けてくれたのだ。幼い頃の娘にそっくりな、愛くるしい笑顔であった。数日後、娘から子供ができたという連絡を受けた。母なる海とはよく言ったものだ、と私はひそかに納得した。

2011-02-02 19:43:57
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】5すると魚の尾を生やした稚児が、楽しげに踊り、歌い、遊んでいるではないか。海藻が繁り、クラゲが舞い、魚が泳ぐ、海の底で広がる世界が、まるでそっくり切り取られたように、我が家の浴槽で繰り広げられていたのだ。言葉を失っていると、ふと稚児のひとりと目が合った。

2011-02-02 19:43:36
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】4どうやら、笑い声はそこから発せられ、リズムに調和するように波が起きているようだ。波立つ浴槽は、さしずめ夜の海にしか見えない。いったい、中はどう姿を変えているのだろうか。私は意を決して、足音をたてぬようソロリとタイルを踏みながら浴槽へ近づき、そっと覗いてみた。

2011-02-02 19:43:25
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】3私を嘲るかのように、浴室からはキャハハハと楽しげなはしゃぎ声が、水しぶきの音と混じって聞こえる。お化けさんがお風呂に入りにくるの、と耳元で幼い頃の娘に囁かれたような気がして、私はそっと浴室のドアを開けてみた。浴槽に溜めたままの残り湯だけがバシャバシャと波立っている。

2011-02-02 19:43:06
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】2嫁いだ娘が、幼い頃よく私や妻に話してくれた、お化けの話を思い出す。夜になると、みんなが寝ている間にこっそり、お化けさんたちがお風呂に入りにくるのよ、と。幼子の戯言だろうと当時は聞き流していたけれど、妻は確かに私の傍らで寝息をたてていたではないか。

2011-02-02 19:42:46
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【水の精】1深夜、喉の渇きを覚えて目をさまし、ふらふらと暗い台所を手探りで歩いていると、風呂場からバシャバシャ、バシャバシャと水しぶきが騒ぐ音が聞こえる。誰か入っているのだろうか、と首を傾げたが、電気は消えたままで、賑やかな水しぶきの音だけが共鳴して響いているのだ。

2011-02-02 19:42:29
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

怪集 黒蜥蜴より【水の精】で書かせていただきます

2011-02-02 19:41:37
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

【少年兵士】4達する寸前、全部ちょうだいと少年は喘ぎながら僕へねだる。いいよ、持っていけと僕は冷たく、粘膜に濡れた少年の胎内へ最後の雫を放った。もう離さない、と細い指が首にギチギチと食い込む。繋がったまま、僕は深い深い闇へと沈んだ。少年が住む、彼岸という名の世界へと。

2011-02-02 19:41:13