飯間浩明先生の出題:「川(かは)」などのハ行をワ行で発音するようになった日本語史上の大変化。これを批判する文献が見当たらない理由を述べよ

飯間先生の答案は最後に掲載。
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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

1967年10月21日、香川県高松市生まれ。国語辞典編纂者(出版社社員ではありません)。『三省堂国語辞典』編集委員。著書『日本語はこわくない』PHP、『日本語をもっとつかまえろ!』毎日新聞出版、『知っておくと役立つ 街の変な日本語』朝日新書、『ことばハンター』ポプラ社 他。『気持ちを表すことばの辞典』ナツメ社 も監修。

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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

日本語史上、「川(かは)」などのハ行をワ行で発音するようになったことは大変化でした。でも、「このごろの若き人の、かは、我はと言ふべきを、かわ、われわと聞こゆるやうに言ふ、いと聞きにくし」などと批判する文献が見当たらない。その理由を述べなさい。これ、試験問題になり得ますよね。

2016-03-05 15:48:36
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

前ツイートの問題に対し、想定される答案のひとつ。「語中語尾のハ行がワ行に移行するには百年単位の時間が必要だった。ゆっくり静かに進行したので、誰も気づかなかったのだ」。これは考えにくいですね。現在なら、タレントのアクセントが微妙に違うだけですぐ指摘される。昔の人も気づいたでしょう。

2016-03-05 15:48:39
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

語注語尾のハ行がワ行になることを「ハ行転呼」と言います。この変化は平安時代に特に進行しました。変化を裏付ける資料は膨大な量があります。でも、「ハ行転呼けしからん」と批判する資料を知りません。仮名遣いが混乱したので、それを系統立てようという動きは出てきますが、ずっと後のことです。

2016-03-05 15:48:44
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

ことばの大変化は、ゆっくり静かに進行しますが、最初は小さなところから始まります。「ら抜きことば」も、最初は「来れる」「見れる」など少数の語から始まった。ハ行→ワ行の変化も、最初は「うるはし(麗し)」→「うるわし」など、少数の語から始まりました。批判の対象になってもよさそうですね。

2016-03-05 15:48:51

飯間先生の答案はこちら

飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

ちなみに、私の答案はこうです。 pic.twitter.com/MV6knfg1Ys

2016-03-05 16:55:17
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