「器用にマンガを捨てた方は勝ち組人生」なんて書かれるのは抵抗感を覚える

漫画家・作家・ジャーナリストそして大学教員として活躍中のすがやみつるさんが、好対照な生き方をした漫画家の一人として取りあげられた記事をきっかけに、漫画家から大学教員に至るまでの思いを連投なさってました。
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すがやみつる @msugaya

そこでQCサークルを題材にした描き下ろし学習マンガの企画書を書き、当時(1983年頃)、仕事をしていた小学館や講談社に持ち込みましたが、マンガ雑誌の編集者の反応は、当然ながら「何それ?」「興味ありません」。そこで知人に紹介してもらい、企画書を持ち込んだのがプレジデント社でした。

2016-03-08 12:16:45
すがやみつる @msugaya

プレジデント社のようなビジネス書の出版社に行くのは初めてでしたので、髪も切り、スーツを着て、アタッシェケースに企画書を入れて、緊張しながら出かけました。応接室で編集者と名刺交換をした後、企画書を見せると、さっと一読しただけで、「これは売れます! 出しましょう」と即決に。ただし……

2016-03-08 12:23:54
すがやみつる @msugaya

こんな条件がつきました。「1)すがやさんは子ども向けのマンガでは知られているかもしれまえんが、大人は誰も知りません。ですから知名度のある監修者についてもらいます。その方のところでQCのことを勉強してください」「2)それからビジネスの世界のことも勉強してください」という条件でした。

2016-03-08 12:29:02
すがやみつる @msugaya

監修者は、当時、松下電器で顧問をされていたQCの世界の第一人者でもある唐津一先生(その後、東海大学教授)がついてくださり、先生のところに通ってQCについてのレクチャーを受けたり、取材先を紹介してもらったり。ビジネスの世界については、紹介された異業種交流会に参加させてもらいました。

2016-03-08 12:35:24
すがやみつる @msugaya

全国に取材し、異業種交流会では一部上場企業に勤務する人たちから、ビジネスの世界の現実を学び……半年以上の準備期間を経て上梓したのが『こんにちはQCサークル』という大人向けの学習マンガでした。日程の関係で、私がネームをすべて担当し、作画は元アシスタントなどに担当してもらいました。

2016-03-08 12:39:27
すがやみつる @msugaya

ほぼ同時期に、『こんにちはマイコン』を読んだ旧知の徳間書店の編集者から声をかけられ、『こんにちはニューメディア』という大人向けのニューメディア解説マンガを上梓しました。QC本と合わせた2冊が最初の大人向け学習マンガとなりました。

2016-03-08 12:42:31
すがやみつる @msugaya

『こんにちはニューメディア』は、やはり現場への取材を重ねて描いたものですが、いま、「マンガ図書館Z」で無料で読むことができます。このマンガの最後に描かれた「未来図」が、けっこう当たっているのでは……などと言われたりしています。 mangaz.com/book/detail/67…

2016-03-08 12:45:22
すがやみつる @msugaya

この頃から大人向けの学習マンガを多く手がけるようになり、1986年に情報雑誌「DIME」が「大人向け学習マンガ」の特集を組んだときには、紹介されている半数が私の作品になっていました→ m-sugaya.jp/manga/business…

2016-03-08 12:47:40
すがやみつる @msugaya

その後も多くの大人向け学習マンガを上梓しますが、次第にネーム(コマ割りと構図)までを担当し、作画は別のマンガ家に依頼するようになります。仕事が増えたこともありますが、自分の画力にコンプレックスを持っていたのが理由です。そんなことから自分のマンガについては限界を感じていました。

2016-03-08 13:02:54
すがやみつる @msugaya

マンガ作りでも、絵を描くことより企画やストーリー作りに関心が高く、それを編集者に認められて、『ゲームセンターあらし』を描いていた頃からマンガ原作もやっていました。「週刊少年マガジン」や「月刊少年チャンピオン」で。小説も好きで、いつかは書いてみたいという希望も持っていました。

2016-03-08 13:10:47
すがやみつる @msugaya

大人向けの学習マンガを手がけながら、自分の事務所は縮小し、文章によるコンピューター解説書などを書くようにもなります。テレビでも紹介された『CompuServe徹底活用マニュアル』という本は3,200円で5万部ほど売れました。印税額は『ゲームセンターあらし』50万部分と同じです。

2016-03-08 13:13:11
すがやみつる @msugaya

ただし、この本を書くにも1年という時間と膨大な国際通信費の経費をかけています。そういえば1988年には、「マンガ家が、なぜ、こんなに国際通信費を使うんだ?」と税務調査が入ったことがあります。アメリカのネットにつなぐために、1年で480万円もつかっていたからです。

2016-03-08 13:17:23
すがやみつる @msugaya

将来、マンガの原稿を電話回線(いまならネット)で送ったり、パソコンの画面でマンガを読んだりするようになります。そのための先行投資ですと言って納得してもらいました。そのとき税務署の方に「何年くらいしたら、そんな時代が来るんですか?」と問われ、「あと5年くらいで……」と答えたのですが

2016-03-08 13:19:54
すがやみつる @msugaya

結局、マンガの原稿をネット経由で送ったり、パソコンの画面でマンガが読めるようになるまで、約20年かかりました。おかげで先行投資は…(泣)。また、Macが発売になった翌年の1985年、「週刊ポスト」にMacで描いたマンガが載りました→ m-sugaya.jp/macomic/

2016-03-08 13:27:03
すがやみつる @msugaya

日本で商業誌に掲載された最初のデジタルマンガだと思っていましたが、実は寺沢武一さんの『黒騎士バット』(少年ジャンプ)という作品が2ヶ月ほど先でした。でも、あちらはPC-9801で描いたもので、「Macで描かれた日本初の商業誌掲載作品」という称号(?)は揺らいでおりません(笑)。

2016-03-08 13:30:28
すがやみつる @msugaya

この直後、Macのエバンジェリストでもあった「日経パソコン」編集者(当時)の林伸夫さんにそそのかされてMac+を購入しましたが、本体は49万8千円で値引きなし。同時に買ったレーザーライターIIは値引きしてもらって120万円でした。収入は多くても出ていく額も多かったのです。

2016-03-08 13:32:51
すがやみつる @msugaya

パソコン通信を通じて文章を書く楽しさにも目覚め、ニフティサーブのフォーラムに連載した小説を読んだ編集者から声をかけられて、その気になって小説の執筆に熱中するようになりました。書いていたのはミステリーですが、ネットワークを題材にしていたため、上司の方が「わからん」とのことでボツ。

2016-03-08 13:46:53
すがやみつる @msugaya

これを他の出版社に持ち込み預けたのですが、返事はなし。それでもしつこく、さらに2作ほどを持ち込んだら、やっと電話がありました。「マンガ家の手慰みだと思って読んでいなかったけれど、しつこく持ってくるので、読ませてもらった。予想外にきちんと書けていたし水準には達しているけれど……」

2016-03-08 13:49:36
すがやみつる @msugaya

「ミステリーは江戸川乱歩賞や横溝正史賞でも受賞した作品でないと新人の作品は売れないので、うちみたいなノベルスの出版社では出せない」とのこと。まあ、納得です。でも、続きがありました。「ところであなた、戦記小説って書ける?」というのです。ブームになっていた架空戦記小説のことでした。

2016-03-08 13:54:11
すがやみつる @msugaya

小学生のときに最初に描いたマンガは航空戦記ものでした。その頃から飛行機が大好きで、その延長でレーシングカーにも興味を抱くようになりました。アシスタント時代にも、こんな絵を描いていましたので、仮想戦記小説にも抵抗はありませんでした。 pic.twitter.com/CVGHoDj350

2016-03-08 13:58:56
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すがやみつる @msugaya

注文されたのは近未来のハイテク航空戦記小説でした。そこであわてて関連書籍を集め、洋書まで買い集め……気づいたら資料代だけで70万円を超えていました(司馬遼太郎氏などに比べたら可愛いものです)。航空自衛隊出身者にも取材し(朝まで一緒に飲んで)原稿を書いたのですが、あっさりボツ。

2016-03-08 14:02:36
すがやみつる @msugaya

列挙された修正点を書き直しましたが、またダメ。結局、3回目の書き直しでOKに。400字詰め360枚の作品でしたので、本になるまでに1000枚も書いていたことになります。この『漆黒の独立航空隊』というデビュー作を、親しくしていた石津嵐さん(元・虫プロ文芸課長)のところに届けたら……

2016-03-08 14:06:11
すがやみつる @msugaya

石津さんは、「おめでとう。で、次は何をやるんだ?」と言うのです。 「は? このまま精進して、文芸寄りの作品も描いて、死ぬまで小説家でいきます」と答えると、「そんなことあるめえ。お前は10年くらいで一つの仕事がモノになってくると、すぐに飽きて、別の仕事に手を出してきたじゃねえか」

2016-03-08 14:11:22
すがやみつる @msugaya

こんなことを言われました。「飽きる」という実感はなかったのですが、新しいことに目移りして、そちらに突っ走ってしまう性格ではあったようです。同じようなことは、翌年、小説家のお披露目の会を開いたときにも、石ノ森章太郎先生から言われました。

2016-03-08 14:13:13
すがやみつる @msugaya

「児童マンガで頂上に近いところまでハシゴを登っていたはずなのに、自分からハシゴを降りて、大人向けマンガのハシゴを登り始めて、そこでも頂上に近づいたと思ったら、また自分からハシゴを降りて……。ふつう、いちど昇ったところから降りるのが怖くてしがみつくものなのに」と呆れられたのでした。

2016-03-08 14:17:08