ゴリラ爆発#3 ゴリラバカンス◆2(終)
_火焔水鏡の街、大きな湖の湖畔に、グランガダル廃棄物処理社の火焔水鏡支店はそびえたっていた。ちょとしたスタジアムほどの大きさの建物に、塔が4つもたっている。 ザリガニ騎士団の面子が、その前に揃う。一同気まずい表情だ。特にバルメルは死んだような顔だ。 71
2016-03-10 17:20:32_金髭のエリート騎士とバルメルが代表して受付に向かう。 「電信で予約していたザリガニ騎士団ですが……」 「アーティファクト分析でございますね。係りの者が伺います。どうぞこちらへ」 赤と青のストライプの制服を着た受付嬢に案内され、すぐさまゴリラの分析が始まる。 72
2016-03-10 17:24:54_分析結果はあっけないほど簡単に出てきた。 「これ……ゴミっぽいんですけど、本当にゴミですか?」 「マジでゴミですね、これ」 「はい……すみません……」 肩を落とすバルメル。 「必要ないなら爆破処理していいですね? 爆破場へどうぞ」 73
2016-03-10 17:28:36_巨大な夕日が湖に沈む。爆破場はそんな見晴らしのいい野外に会った。バルメルは肩を落とす。 「はぁ、ゴミを買って、いらない騒ぎを起こして、処理にだってお金がかかる……最悪だ……どうしよう」 「まぁ、ちょっとは給料から引かせてもらうがな」 金髭は笑い飛ばす。 74
2016-03-10 17:32:43「まぁ、楽しかったさ」 バルメルはゴリラの最後を見届ける。高性能侵蝕爆弾を括り付けられ、悲しそうに佇むゴリラの置物。 騎士団の皆は最後を見届けようと、周りに集まっている。 そして、ゴリラが爆発した。跡形もなく、木っ端みじんに。 75
2016-03-10 17:38:43_騎士団の誰かが、フフッと笑った。ゴリラが爆発したのだ。そのあまりにもあっけない姿に、また一人、また一人と吹き出す。そして、騎士団の皆は爆発したように笑った。 「あーっはっはっは!」 「ゴリラ、爆発しやがったぜ!」 バルメルも涙を一つ零して、笑った。 76
2016-03-10 17:42:50_そしてザリガニ騎士団の皆は会社を出て、湖畔に集まり、砂地の岸辺に横になって夕日を浴びていた。じりじり照り付けるわけでもない、あたたかな夕日だった。 「サイコーかよ」 誰かが言った。 「ああ、サイコーだったな」 また、誰かが言った。 77
2016-03-10 17:46:26「ウオオー! サイコーだー!」 3人の猛士が雄たけびを上げて湖に飛び込んでいく。他の団員も、次々と飛び込んでいく! 長身の女騎士含め、女性陣はあきれて砂地に座っている。 「バカンスだな」 金髭が呟いた。 78
2016-03-10 17:50:32「いいんでしょうか……」 バルメルは金髭の隣に座って、暮れる夕日を見ていた。金髭は彼の肩を叩く。 「いいんだよ、なぜなら……」 その次のセリフを察し、女騎士が繋げる。 「我ら、ザリガニ騎士団は!」 79
2016-03-10 17:54:37「我ら、ザリガニ騎士団は、中原最強!」 そうして、高く拳を掲げる騎士団員。バルメルは最後に笑って、自分も湖へ飛び込んだ。リゾートは荒野に潤いを与える。また彼らは荒野へと行くだろう。戦いを求めて! 80
2016-03-10 17:58:50【用語解説】 【グランガダル廃棄物処理社】 帝都の主要ギルドの一つ。この世にはまともな方法で破壊できないやっかいなものが多いが、それらを分析し、破壊することを業務とする。帝都のゴミ処理業務も請け負っている。赤と青の2色の服を着ているので、非常に目立つ。火炎放射器をよく振り回す
2016-03-10 18:06:14【次回予告】 帝都の上空で見つけた、ミステリアスなおっさん。飛行船の下にロープ一本でぶら下がり、特に何もしないように見える。黒縁眼鏡に、スーツのおっさんの目的とは……!? 次回「ぶら下がりおっさんの空」 全30ツイート予定 #減衰世界
2016-03-10 18:11:40