龍驤と牛丼のお話

コラボの話を聞いて、これからは高級料亭松屋を贔屓にしようと思った。
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筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

某社の献納の代わりに、海軍艦娘隊で牛丼の広報が行われるとなったときの話。

2016-03-12 02:38:11
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「はぁ、なんやこれ、ほんま勘弁して欲しいわ」 海軍会報で、牛丼を持った龍驤の写真があった、なんでも各基地の高練度の龍驤はみな、牛丼を宣伝する仕事を、一般向け広報でしなければならないという。

2016-03-12 02:42:28
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「龍驤さん、会報を見ながら大きなため息をつかないでください。」 司令室兼、新聞購読スペースで同じく会報を読んでいた加賀も、ため息をもらいそうになった。 「そうは言っても、加賀さんは、広報で食いもんもたされたことないやろ。」

2016-03-12 02:47:22
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「黒百合で厭な顔をしていることなら。」 基地公開時加賀岬を歌う際、一部の基地では、レコードのジャケットにちなんで、マイクとともに黒百合を持たされるというケースがあるという。当基地ではそれはなかったが。

2016-03-12 02:51:22
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「じゃあそれでもいいけど、あれくっさいやろ。」 「…黒百合は実に悪い匂いがしますが、食べ物にそれは感心いたしかねます。」 「…ウチ、牛肉苦手なんや。ベジタリアンとかそういうのやないけど。」

2016-03-12 02:57:08
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

どのぐらい、この龍驤が牛肉が苦手かというと、祝賀会のご馳走の一品で出たビーフステーキを赤城に譲り、更には皆が食べ終わるであろうタイミングまで会場の外で煙草を吸って待っていた始末である。

2016-03-12 03:03:09
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

カレーにも牛肉は使われない、カレーが料理されてるにおいで気分が悪くなるらしく、これで夜間警戒の仕事を赤城が代行したことがあったためである。 「もう、においだけで駄目。アレだけは勘弁や。」

2016-03-12 03:07:51
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

そういえば、この期間の交流担当は確か…」 「あー、ホント嫌や、勘弁して。サンタクロースはいいけど、あの牛丼はホント勘弁」 「龍驤改二」

2016-03-12 03:13:05
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「あ、なーんや。」 会報、よくよく読むと、そこには龍驤改二とあった。現在、龍驤は練度こそ高いが、それでも改二の装備に交換するほどではない。会報を読んだときの心配事は、無用だったようだ。 「良かったわホント、あれ持って挨拶するとか、勘弁やで…」 「…本当に、牛肉が嫌いなのね…」

2016-03-12 03:17:44
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「龍驤、おんしもそのうち改二になる。」 書類とにらめっこしていた基地司令官の白石が、書類越しに声をかける。 「え」 「え、じゃない。おんしを改二にするぞ。」

2016-03-12 03:28:55
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「いい、いきなりそんなこと言って、何するつもりなん?」 驚く龍驤に対して、司令官はこう言う。 「本土防衛じゃから、なっかなか大規模な戦闘に参加することはない。しかし、おんしは訓練で鍛えとる、このままにしておくのは惜しい。」 「えー………」

2016-03-12 03:33:08
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「そこでおんしによりハードな実戦経験を積ませて改二にする。」 「すぐにでも、龍驤さんは改二該当練度に達するでしょうね。」 どこに向かうのか、宿毛湾泊地支援に度々行っている加賀はよくわかっている、その場所がどれぐらい艦娘を鍛えられる場所なのかも含めて。

2016-03-12 03:38:28
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「あの、ウチ、すぐに改二になってしまうん?つよくなるんはいいけど、あの…」 しかし、このことについては実は龍驤にとってさほど問題はない。問題は改二になってからである。

2016-03-12 03:42:33
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「ですが提督」 同時に、龍驤のある不安について、加賀は具申しようとする。 「なんじゃ」 「この期間に改二になる可能性が高いわけですよね」 「確かにすぐに改二になるじゃろうな。」

2016-03-12 03:46:41
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「あんの、ウチ、ちょっち…」 「龍驤さん、牛肉が…」 「心配するな、うちらではやらん。」

2016-03-12 03:51:07
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「よ、よかった…」 「あれはやらん、安心して、実戦経験を積んでこい。」 安堵する龍驤に、司令官は安心してがんばってこいとの一言である。

2016-03-12 03:55:26
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「大体わしはあの何が入っとるのかわからんような肉が好かん。」 司令官の愚痴が始まる。 「なんやそれ………」 「あの薄っぺらい、肉やらわからんもん、わしは食いとうもない。」 「おまけに広報用写真では晩酌に牛丼、ふざけるな。米と酒を一緒に合わせて呑めるか。」

2016-03-12 04:07:12
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「提督も、なかなか厳しいのね。」 加賀が一口挟んでくる。 「赤城は甘党、そして酒より飯じゃからこっちの方がいいじゃろうが、加賀、お前はどう思う。」 「…あれで出されたら、ご飯は残すわ。もったいないけど。」

2016-03-12 04:11:50
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「あいつらは酒の飲み方をわかってないん違うか。」 「そうね、とてもじゃないけど…気分が沈滞します。」 酒と肉の話もこの辺と、龍驤は少し気になったところを聞く。 「あー、あのさ、司令官、司令官は、肉の好みって…」 「肉の実感があるもんじゃなきゃ食いとうもない。」 「贅沢な…」

2016-03-12 04:16:26
筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

「そんなことで、うちは牛丼はやらん、今度漁師にぜんごと交換してもらう。」 「まあ、牛丼とかよりは、魚乗っけたどんぶりの方が、ウチもうれしいわ。」 「提督、上からの勧告には。」 「夕立が捕まえてきた猪でも土産に渡したらええじゃろ。」 「無茶苦茶やで…」

2016-03-12 04:23:14

注:ぜんご→小さいアジのこと

筆寫近衞(きんえい) @CurseJewelDemon

とはいえ、牛丼を持っての広報は一切ないと知った龍驤は、一安心であった。 牛丼を楽しみとしていた艦も中にはいたのだが、それらには高級料亭松屋のチケットを配ることで事無きを得た。

2016-03-12 04:27:14