思い出話をしましょうか ~吉野泉さんの青春ミステリ『放課後スプリング・トレイン』重版決定によせて~

思い出語りをまとめました。
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K島氏 @blue_airship

書籍編集者です。飛行船ロゴのレーベルを立ち上げ、ひたすらミステリの編集に勤しんできましたが、2019年からは一般文芸作品(ノンジャンル)のほうも担当することにしました。たとえお仕事についてつぶやいていたとしても、このアカウントは会社と一切関係がないのであった。


 

K島氏 @blue_airship

むかし話を連投します。第8回ミステリーズ!新人賞二次選考の際、「スプリング・ロコモーティブ」というきらきらしたイメージの短編を読みました。最終選考に上げるわけにはゆかなかったものの、印象に残る美点があって「なかなかいいな」と思ったので、直接作者の方に電話をかけてみました。

2016-03-12 12:41:09
K島氏 @blue_airship

その電話のお相手が『放課後スプリング・トレイン』の作者である吉野泉さんなわけですが、最初わたくしは、たぶん思いきり警戒されていました(笑)。「いったいなにか問題でも」「いえ、最終に残すわけにはゆきませんでしたが、いいなと思いましたので、この続きとか書いていらっしゃらないかなと」

2016-03-12 12:41:59
K島氏 @blue_airship

「書いてません」「あ、そうですか、ではお書きになってみませんか」「書けないと思います」「えっ」「続きを書くなんて考えてもみませんでした」「でもこれ、続きが書ければ本にもできそうだな、と」「誰かに読んでもらいたいと思って応募しただけで、作家になりたいだなんてそんな大それたことは。

2016-03-12 12:42:53
K島氏 @blue_airship

第一やっぱり書けるかどうかわかりませんし、きっと書けないと思います」「いやでもたぶんお書きになれますし、きっとまた書いてみたくなりますよ」「そうは思えません」「ああ、じゃあ、もし書けたら読ませて戴けませんか、気長にお待ちしてますから」「そんな申し訳ない」「いやその」

2016-03-12 12:43:35
K島氏 @blue_airship

結果「奇跡的に新作が書けたら読ませて」ということで遣り取りを終了し、それから二年くらい経ったでしょうか、吉野さんは新作をお書きになりました。ただし、僕に直接送ってくれれば良いものを、律儀にというか、鮎川賞に応募していらっしゃったのです。僕は鮎川賞の選考には関わっておりませんので、

2016-03-12 12:44:27
K島氏 @blue_airship

落ちたら読んでまた電話するか、と思っていたら、最終までするする上がってゆきました。その選考の過程で、吉野さんの応募作を思いきり気に入った同僚がいて、それが『放課後スプリング・トレイン』の担当者です。僕は担当になれませんでしたが、新作が読めたからいいや、と思っています。

2016-03-12 12:45:20
岡崎琢磨@『Butterfly World 最後の六日間』発売中 @okazakitakuma

@blue_airship 『放課後スプリング・トレイン』を最後まで拝読すると、一話だけ送ってきたということが、とても不思議なことのように感じられます。

2016-03-12 12:50:34
K島氏 @blue_airship

@okazakitakuma 最初の作品だけ読んで電話をかけようと判断した僕偉い、といまになって思います(笑)。ちなみに、たしかこの電話とほぼ同時に、Twitter上で岡崎さんとはじめて遣り取りしてたんですよ。

2016-03-12 12:53:49
岡崎琢磨@『Butterfly World 最後の六日間』発売中 @okazakitakuma

@blue_airship 間違いなく偉い!笑 でも、一話でも光るものがあるのは確かですよね。 時期的にそうですよね! 「なんかすごいことになってる!」と興奮したことをしみじみ思い出します。8回の原稿、僕もしっかり仕上げて世に出したいです。

2016-03-12 13:08:05
K島氏 @blue_airship

そんな経緯で(?)世に出た『放課後スプリング・トレイン』ですが、先日なんと、こんなに早く重版が決まりました。デビュー作なのに! 僕は担当者ではありませんが、それなりに関係のある著者なので、どうか宜しくお願いいたします。ちなみに僕、鮎川賞応募原稿自体は結局読む機会がなかったな……。

2016-03-12 12:55:42