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tasobussharima1
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肆捌空海がトンネルを抜けると、そこは元の世界だった。赤い雪の舞う荒野。何も変わらぬ、アフター徳カリプスの世界。あの村での出来事が、まるで夢の中であったかのようだ。 ただひとつ、いつもと違う点。それは、人工物が視界の大半を覆い尽くしていることだ。 「ここは、もしや」
2016-03-22 21:04:06
得度兵器の『拠点』。奥羽山岳寺院都市が戦う、外殻防衛戦の遥かに内側。つまり、恐らくは南の方向。 「あの村は、得度兵器の領土内にあったのか……」 肆捌空海は必死で頭を働かせる。ここから北へ突破するには、どうすれば良いのか。今は姿が見えないが、得度兵器に発見されれば一瞬で死ぬだろう。
2016-03-22 21:08:06
しかし、肆捌空海に最早迷いはない。例え遙かなる道であろうと、彼は故郷への道を歩み続けるだろう。 「問題は、如何にしてすり抜けるか……」 既に発見されていてもおかしくはないが、『奇跡』の使用は可能な限り避けるべきだろう。その時、聞き慣れない高周波音が聞こえた。
2016-03-22 21:12:07
マニタービンの音ではない。彼は身体を伏せ、息を殺し、目を凝らす。やがて、巨大な黒い鳥が天から姿を現す。 今まさに眼前でホバリングから着陸態勢に移らんとしている、機械でできた黒い鳥。飛行型得度兵器、タイプ・ガルーダ。機械達の持つ空の目。 だが、肆捌空海の目は別のものを捉えていた。
2016-03-22 21:16:02
…あれ、人形都市みたいな感じのブッダデポット内にあったんだ… 研究用閉鎖都市として機密保持隔離してた筈が、すっかり忘れてヘイブンと化してる感じかね? #徳パンク
2016-03-22 21:19:25
タイプ・ガルーダの機体に、片手でしがみつく人間。いや、あんなことをする人間が、ただの人間であるものか。 人間……男の半身は、仏像だった。そして、そのもう片側の手に持つものは。 「……仏舎利」 仏舎利カプセル。見紛うことのない、彼が山中で遺棄したカプセルそのものだ。
2016-03-22 21:20:03