真・マグロ ~地球最後の日~ #5(完結)

シン・ゴジラ、今年7月頃に公開予定!
1
劉度 @arther456

【真・マグロ ~地球最後の日~】#5

2016-03-22 21:01:15
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2016-03-22 21:02:10
劉度 @arther456

「出てこなければ、やられなかったのに!」この世界は現実だ。ミノフスキー粒子などありはしない。ビームライフルを模した銃から放たれるのはレーザー光線。威力はグロース・シュトラールの副砲と同じ程度だ。レーザーが命中するたびに、マグロ怪獣の表皮に徐々に焦げ目がついていく。1

2016-03-22 21:03:05
劉度 @arther456

「ゴボォォォッ!」怒りにかられたマグロ怪獣が、ガンダムに向かって突進!ガンダムはバーニアを吹かし急上昇、マグロの頭に飛び乗る!「ザラ、ビームサーベルだ!」「了解!」ザラの制御で、ガンダムが背中からビームサーベルを模した巨大刀を抜き放ち、マグロの背中に突き刺す!2

2016-03-22 21:06:17
劉度 @arther456

「グワーッ!」マグロが叫んだ。効いている!「くらえ!愛と!」「怒りと!」「悲しみの!」「「シャイニングフィンガーソォォォォド!」」バーニアを全開にし、マグロの背中を切り裂く!輝いていないし指でもビームでもないが、憧れのガンダムに乗ってテンションの極まった二人にとっては些事!3

2016-03-22 21:09:04
劉度 @arther456

「トロォォォ!」マグロが火を吐いた。ガンダムは、アニメの設定上は大気圏にも突入できる耐熱構造を持っている。「あっちぃぃぃ!?」「中将、逃げて、避けてください!」だが、お台場ガンダムはそうもいかなかったようだ。バーニングガンダムになる前に、慌ててマグロの炎から逃れる。4

2016-03-22 21:12:07
劉度 @arther456

《なんだよ、マグロのくせになんてバケモノなんだ!》提督の絶望的な悲鳴が聞こえる。ありったけの戦力をかき集めても、なおマグロに有効打を与えられない。大きすぎる絶望に、クルーソーとザラも攻めあぐねた、その時だった。《クルーソー中将。先陣を切ってくれたことに、感謝する》6

2016-03-22 21:15:02
劉度 @arther456

更に炎を吐こうとしたマグロに、航空隊が襲いかかる!《モンスターめ!倒れろってんだ!》ミサイルが発射されるが、マグロはそれを尾びれで撃ち落とす!《ウオアアアッ!?》《ムラタァァァッ!?》日系人パイロットの乗ったF-35が、衝撃に煽られて失速していく。5

2016-03-22 21:15:02
劉度 @arther456

厳つい男の声。そんな声の持ち主は、この海域に一人しかいない。クルーソーがグロース・シュトラールの方を向くと、艦首砲がマグロ怪獣に狙いを定めていた。《本艦はこれより、艦首レーザーカノンを発射する!友軍機は射線上より退避せよ!》巨艦の回頭が、いつの間にか終わっていた。7

2016-03-22 21:18:02
劉度 @arther456

「間に合ってたか!」マグロの踏みつけを躱して、ガンダムは後退。一気に距離を取る。追おうとしたマグロの目が、グロース・シュトラールを認め、マグロめいて見開かれた。《撃てぇーっ!》至近距離から閃光が放たれる。最大出力のレーザー砲が、マグロの巨体を飲み込んだ。8

2016-03-22 21:21:03
劉度 @arther456

「ト、トロォォォ……」紫電と蒸気の中から、形を保ったマグロ怪獣が現れた。体のあちこちは焼け焦げ、見るからに弱っている。「効いてる!」ガンダムはライフルを連射!焼け焦げたマグロの身を、レーザー光線が貫く!「各機、トドメを刺すぞ!我に……!?」突然、コクピットを青い光が覆った。9

2016-03-22 21:24:02
劉度 @arther456

「何の光!?」美しい、だが不吉な青みを帯びた光だった。「これは……X線、それにガンマ線を含んだ光です!」ザラが蒼白な顔で叫ぶ。「おい、それって」「はい!原子力の臨界で見られる光と同じです!」「まさか!?」クルーソーは咄嗟に『蔵王』を見た。原子力巡洋艦は、未だ健在である。10

2016-03-22 21:27:01
劉度 @arther456

「違う……ならこいつは一体?」光の元を視線で追う。傷ついたマグロ怪獣に、帯のように降り注ぐ光は、東京から伸びてきていた。ついさっきまでクルーソーたちがいたお台場の方からだ。《原爆マグロ……》『蔵王』の提督が呟いた。《何?》「おい、何か知ってるのか?」11

2016-03-22 21:30:09
劉度 @arther456

《昔、日本の漁船がアメリカの水爆実験に巻き込まれた事件があったんです。その時、漁船に載っていたマグロは、売られずに築地に産められました。あの光は、被爆したマグロたちの怨念……!》「マグロゴーストだっていうのか?オカルトにも程があるだろう……!?」12

2016-03-22 21:33:05
劉度 @arther456

「マ、グ、ロォォォ!」青い光を受けたマグロ怪獣は、恐ろしい雄叫びを上げた。あれだけ負わせた傷は全て治っていた。原爆マグロの怨念で、傷を埋めたとでもいうのだろうか。「Shit!各機、もう一度攻撃するぞ!奴はここで止める!」ガンダムは再びライフルを構え、マグロに立ち向かった。13

2016-03-22 21:36:04
劉度 @arther456

魚類の激情が、頭の中で荒れ狂っていた。『蔵王』の指令部で、提督はモニター越しに暴れる巨大マグロをじっと見つめている。あれは尋常の生物ではない。息を吐くように魔力を使い物理法則を書き換える、精霊や悪魔のような存在。マグロ怪獣というより、神マグロと呼んだほうが近いだろう。15

2016-03-22 21:39:02
劉度 @arther456

「提督、大丈夫ですか?」隣に控えている不知火が声をかけてきた。「大丈夫。暴れるほどじゃない、と思う」「……念のため、手錠を掛けておきましょうか」「だから大丈夫だって」不知火は提督の手足を座席に固定する。不知火の心配も尤もだが、あのマグロの思念は提督の方を向いていなかった。16

2016-03-22 21:42:05
劉度 @arther456

神マグロの怨念は、人間そのものに向かっている。重金属に汚染されたマグロ。放射能に焼かれたマグロ。銃弾や爆風で殺されたマグロ。そういうマグロたちの怨念が、神マグロという形に押し込められて、メチャクチャに暴れている。その破壊には指向性も目的も無い。災害のようなものだ。17

2016-03-22 21:45:04
劉度 @arther456

「止めなきゃ」「当然です、提督」神マグロは人間を徹底的に滅ぼし尽くすだろう。その先には何もない。過去の怨念しかない神マグロは、未来のことを考えることができないのだ。知性マグロに肩入れするわけではないが、無人の荒野に立ち尽くす神マグロの姿を思い浮かべると、心が痛んだ。18

2016-03-22 21:48:04
劉度 @arther456

「横須賀艦隊は?」「まだ復旧には時間がかかるようです!」戦況を見渡す。日米独の三カ国で神マグロに立ち向かっているが、まるで火力が足りていない。時間を稼ぐのも限界がある。「どうする……?」「提督!付近の放射能濃度が上昇しています!」提督が考えている最中に、状況が動いた。19

2016-03-22 21:51:04
劉度 @arther456

「上昇?また原爆マグロが……」提督の口が止まった。右舷を映すモニターに、ありえないものが映り込んでいた。「……漁船?」提督の視線を追った不知火が呟く。青い光を纏った小さな漁船が『蔵王』のすぐ側にいる。「ッ!?レーダー係、何をしているの!?」「えっ、何がですか?」20

2016-03-22 21:54:04
劉度 @arther456

「不知火。あれはレーダーに映ってないよ」提督の口調は冷静だった。あるいは、声を潜めるようだった。「なぜ」「揺れてない」『蔵王』が発する波を間近で受けているのに、小さな漁船は横揺れ一つ起こさず、滑るように海の上を進んでいる。「幽霊船でしょうか」提督は黙って頷いた。21

2016-03-22 21:57:02
劉度 @arther456

「ッ!?ソナーに反応!何かが沖から高速で接近中!」「魔力反応増大!これは……ダメです、計測限界を突破しています!」にわかに指令部が騒ぎ出す。だが、どんなデータや報告よりも早く、提督は沖合からくるモノの重圧を感じ取っていた。既に提督の眼中に、神マグロはいなかった。22

2016-03-22 22:00:14