量子力学における「実在性」について

標準的なコペンハーゲン解釈に基づいた量子力学における実在性に関したTWをまとめました。
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Masahiro Hotta @hottaqu

しかしそれは、多世界解釈と同じ病根を持ちます。下記ブログでもコメントしたように、反証可能な健全な科学ではなくなるのが、大きな問題なんですね。 ⇒「デコヒーレンスは多世界解釈の観測問題を解決しているわけではない。 」 mhotta.hatenablog.com/entry/2015/02/…

2016-03-23 03:49:37
Masahiro Hotta @hottaqu

ですが、認識論であるコペンハーゲン解釈では、それに答える必要はなく、公理の1つになってます。そして「観測者と対象系の分離ができたら」こういうことが言えるという形なので、反証可能性も担保される「使える科学理論」になっているわけです。 togetter.com/li/758266

2016-03-23 03:52:50
Masahiro Hotta @hottaqu

参考:【認識論的な量子力学についてのコメント】 - Togetterまとめ togetter.com/li/758266 @togetter_jpさんから

2016-03-23 03:53:25
Masahiro Hotta @hottaqu

通常のコペンハーゲン解釈は、波動関数を情報の束とみなし、またその法則は時空において因果律も満たす局所的な理論になっています。有名なベル不等式の破れの実験から、波動関数を実在とみなす局所的実在論は否定されています。ただもちろん非局所的な実在論は、ベル実験の後でも生き残っています。

2016-03-23 03:56:18
Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学の確率的な振る舞いは、隠れた古典変数λの統計力学的ランダム性から説明しようとすると、ベル実験と整合させるには、λは観測者を含む宇宙全体を非局所的に制御している設定にしないといけません。観測者が何かの物理量を測定しようと思い立つことも、このλのダイナミクスで決まっています。

2016-03-23 03:59:26
Masahiro Hotta @hottaqu

非局所的実在を仮定する理論で、あなたがベル実験をして量子力学の予言と同じ正しい結果を得るには、自然が人類に古典論を量子論のように見せかける「陰謀論」が必要ということです。これは、観測者の自由意思問題とか呼ばれています。

2016-03-23 04:02:23
Masahiro Hotta @hottaqu

例えばベル不等式の1つであるCHSH不等式を検証するには、4つの種類の実験が必要です。2つの2準位スピンA、Bを考えると、「Aのスピンi方向成分+Bのスピンj方向成分」(i,j=x,y)を測る4つです。

2016-03-23 04:07:16
Masahiro Hotta @hottaqu

ここでσをパウリ演算子として、スピンA,Bに対してΔ=σx(A)σx(B)+σx(A)σz(B)+σz(A)σx(B)ーσz(A)σz(B)という相関量を考える場合では、局所的な古典パラメータλだと、Δの絶対値は2以下となるというのが、ベル不等式の一種であるCHSH不等式です。

2016-03-23 04:10:55
Masahiro Hotta @hottaqu

しかし非局所的な実在論を考える場合、例えばλは実験準備をする観測者にも作用します。4つの実験のために4つのスピン集団を持ってくる必要がありますが、このスピン粒子選択において「無意識に」偏りが必ず生じ、その結果|Δ|を2以上にして量子力学の予言と常に一致させるというものです。

2016-03-23 04:16:14
Masahiro Hotta @hottaqu

古典力学的法則に則った自然が、人間にその法則を量子力学であると誤解させるように観測者の意識をコントロールしているので「陰謀論」と表現されることもあるわけです。しかしなぜ古典的実在である自然が人間にベル不等式が破れるようにわざわざ振る舞う必要があるのでしょう。これが大きな問題です。

2016-03-23 04:19:25
Masahiro Hotta @hottaqu

「陰謀論」と揶揄されるそのような理由からも、私も非局所的実在論には興味を持っていません。反証可能なステートメントしか言わない健全な科学になっている、局所的認識論である普通のコペンハーゲン解釈の量子力学は、とても良くできた、そして大変成功している理論だと思っています。

2016-03-23 04:22:58
Masahiro Hotta @hottaqu

このようにうまくいっているコペンハーゲン解釈の量子力学は、波動関数を情報の束とみなす認識論的な理論であり、情報理論の一種と言えます。このような視点からも、私は「世界は量子情報でできている。」というバズワードを繰り返しつぶやくのです。twitter.com/hottaqu/status…

2016-03-23 04:27:57
Masahiro Hotta @hottaqu

何もないはずの真空の中を加速度運動する測定機や観測者が、加速度に比例する熱浴を観測してしまうウンルー効果は、モノの実在性を考える上でも重要な現象です。 ⇒「物理学における存在とは?」 - Quantum Universe mhotta.hatenablog.com/entry/2014/05/…

2016-03-23 08:25:36
Masahiro Hotta @hottaqu

ウンルー効果はブラックホールのホーキング輻射とも関係が深く、量子論と一般相対論を繋ぐための大切な鍵と多くの研究者は考えている現象です。私は学部学生だった頃大学院生だった大西さん@koujiohnishiからこれを教わったのが最初であり、その後高木伸さんから詳しくお話を聞きました。

2016-03-23 08:29:41
Masahiro Hotta @hottaqu

教えて頂いたウンルー効果は量子重力への足掛かりとなるだけでなく、モノの実在性を深いレベルから問う魅力に満ちた現象でした。いつかは表層的な研究ではなく、そういう深遠で本質をついた物理をやりたいと、ずっと思うきっかけにもなりました。

2016-03-23 08:32:44
Masahiro Hotta @hottaqu

ウンルー効果は、相対論的量子情報の分野でも大切な研究テーマとして多くの研究者により今でも解析が続いています。学生の頃ウンルー効果を勉強した時にはウンルーさんと共同研究をする自分を想像できませんでしたが、最近彼とブラックホールの量子情報の論文を出せたことは、とても嬉しく思ってます。

2016-03-23 08:38:22
Masahiro Hotta @hottaqu

昨年の記事です。⇒「ペリメータ理論物理学研究所でのウンルーさんの古稀祝い」 - Quantum Universe mhotta.hatenablog.com/entry/2015/08/…

2016-03-23 08:39:03
Masahiro Hotta @hottaqu

ウンルーさんが自分の仕事で特に評価してくれているのは、量子エネルギーテレポーテーションという量子プロトコルです。測定で得られる情報を用いて、真空の量子揺らぎから零点エネルギーを取り出すことが可能になる現象で、エネルギーと量子情報の間の密接な関係を浮かび上がらせるものでした。

2016-03-23 08:50:45
Masahiro Hotta @hottaqu

量子エネルギーテレポーテーションは、現在の技術だけで量子ホール系を用いて実験できることなのですが、その実験装置を買うのに約2千万円かかるそうです。実験家の共同研究者はいろいろな研究資金に応募してくれているのですが、まとまったお金がなかなか手に入らず、難しい状況です。

2016-03-23 08:53:40
Masahiro Hotta @hottaqu

量子エネルギーテレポーテーション実装実験用のナノ秒のスペクトロメーターを買うために、クラウドファンディングに挑戦するかもしれません。そのときには、ご協力頂けると助かります。

2016-03-23 08:56:12