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浦風編 前編
「うんうん。よろしくね」 「轟一佐……? へぇ、提督さんは佐官さんなんね。えっ違う? 一佐は本名? 階級は少将?」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:20:08「ここがあの蔵王通り。立派になったもんじゃね。うちの“浦風”の記憶にある風景と比べても、呉はええ街じゃ」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:20:54「提督さんの言いつけじゃけぇ仕方なく行くけど、うちのことをどこに向かわせる気なん。えぇと店の名前、は……? お好み焼き屋……浜風……?」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:22:03今日も今日とて、お好み焼き屋は賑わっていました。 「あ、いらっしゃいま――」 勢いよく引き戸が開かれたその瞬間、艦娘としての直感でわかりました。 「ここが、あのがんぼ(ワルガキ)の店じゃね」 海色を思わせる髪の両側についた金剛の髪型に似たフレンチクルーラー。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:22:53彼女こそ、私にお好み焼きのイロハを教えた師であり、姉であり、命の恩人。 この人なくては、お好み焼き屋としての私はありませんでした。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:23:18「お好み焼き屋浜風……か。こがぁな大層な暖簾せたらいよって」 彼女も私と同じ……かの大戦によって水底に沈んでいた陽炎型駆逐艦11番艦・浦風の生まれ変わりとして、再びこの世に生を享けていたのです。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:23:47「……」 向こうも私の顔を見てひと目で気付いたのか、ヅカヅカと乱暴な足取りで厨房までやってくると、有無を言わさずビシッと人差し指を向け、 「浜風ぇ! いまからわれに決闘を申し込むわ!」 彼女、浦風姉さんが、私に決闘を挑んできたのでした。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:24:25「そ、その前に、なんか食べさして……一週間なんも食べてのぉて、倒れそうなんよ……」 宣戦布告のそばから膝をつき、浦風姉さんは息を荒げていました。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:24:58「浜風の焼いたお好み焼きなんか、絶対くわんけぇのお」 やれやれ困りました。私の作ったお好み焼きをまったく食べる気がなさそうです。 このままだと餓死するまで意地を張りそうな勢いだったので、私は現在鎮守府にて待機中(と思う)谷風に連絡を取ることにします。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:25:20ところかわって演習場
――瀬戸内近海・演習場にて。 ピピピ……(通信の着信音) 「おう、ねーちんか。どした?」 「谷風。いま浦風姉さんがお店の玄関で行き倒れてぐったりしているので、代わりに食事を用意してほしいのですが、時間は大丈夫ですか?」 「お? そーかそーか。がってんだ」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:26:01「ちょっと谷風さん! いまは大事な演習中ですわよ。外部との通信はすべてお切りになってくださいませ!」 「カタいこと言うんじゃないよ。ん? ああ、こっちの話だよ」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:26:36「ありがとう。持つべきものは頼れる妹です」 「じゃあ、あとでおっぱいもみもみ一時間な」 「な!? 貴女をそんな風に育てた覚えは――」 つーつーつー。(通信切れる) #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:26:56「そういうことだから鈴谷に熊野、谷風さんはもう行くな」 「あいあいさー!」 「お、お待ちなさい谷風さん。まだ演習の途中ですわよ!?」 「だいじょーぶ。これくらいの弾幕なんてあたしの手にかかればお茶の子さいさいさあ」 「そういう問題ではなくて!」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:27:42再び店内にて
「おう、ねーちん。海域離脱にちょっとだけ手間取ったが、無事に谷風さんのお帰りだよ」 通信からほどなくして。 谷風が艤装をつけて水に濡れた状態のまま、鎮守府方面から川沿いを伝ってお店にやってきました。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:29:10「むぐむぐ。がつがつ」 浦風姉さん。そんな勢いでガツガツ食べたら胸焼けしますよ。 「浜やん。アンタがそれを言うんかい……」 板は黙っていてください。妹が姉を気遣って何が悪いんですか。 「や、そういう意味やなくてやな……」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:29:40「ぷはー。えかったわ~このお好み焼き」 どうやら空腹を満たしていただけた様子。 死にそうと言いながら私が作ったものは食べたくないと駄々をこねるので、谷風を呼びつけ作らせたお好み焼きです。 演習の真っ最中だったそうで、僚艦の皆さんに悪いことをしてしまいました。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:31:15――谷風が護衛を務めていた熊野さん&鈴谷さん率いる艦隊はというと。 赤城さん&加賀さんによる慢心のない絨毯爆撃のあと、 利根さん&筑摩さんによる弾着観測射撃、 近接戦を得意とした天龍さん&龍田さんによる吶喊によって、完膚なきまでの敗退を余儀なくされたとか。 #お好み焼き屋浜風
2016-03-21 22:32:32「お久しぶりです。浦風姉さん」 「うちのことを馴れ馴れしゅう姉と呼ぶなや」 「では師匠」 「われみたいながんぼ(ワルガキ)、とっくに破門じゃ破門」 「じゃあ浦風」 「妹のくせに呼び捨てにすなや」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-23 20:58:51さっきからこんな調子です。こうもツンケンされては取りつく島もありません。 「なるほど。そういうことですか」 思い当たる節が見つかった私は、押入れを開けてあるものを取り出します。 「姉さん。ここに頭痛とイライラに効くお薬がありますが」 「……ぶち落とすよ?」 #お好み焼き屋浜風
2016-03-23 21:01:11