スイート★ノベル『BET!! ~カラダを賭けたポーカーゲーム~』お試し読みまとめ

スイートノベル公式さんがお試し読みツイートしたやつ。 BLスイートノベル『BET!! ~カラダを賭けたポーカーゲーム~』(著者:春河ミライ イラスト:渋矢しかご) http://bookwalker.jp/deaa18d847-85a4-4da9-b2e0-4d6b3b6f7acd/ 続きを読む
0
スイートノベル @SweetNovel

こんにちは。「スイートノベル」お試し読みのお時間です。 本日から配信中新作BL作品『BET!! ~カラダを賭けたポーカーゲーム~』(著者/春河ミライ イラスト/渋矢しかご)お試し読みツイートを始めさせていただきます。 pic.twitter.com/gZIX3PpeeA

2016-03-29 12:00:11
拡大
スイートノベル @SweetNovel

「気に入ったよ。俺と、勝負をしないか。美人さん」 「勝負って言っても、もう俺素寒貧だぞ。自分の財布じゃ、ここのチップに換えられるほど持ってないし」 #SweetNovel

2016-03-29 12:15:09
スイートノベル @SweetNovel

レートを考えるととても勝負になるだけチップを借りられるほど、美人の財布に金は入っていない。真面目に勝負をするなら、チップの量も一つの武器なのだ。 #SweetNovel

2016-03-29 12:20:05
スイートノベル @SweetNovel

「いいよ。さっき返してもらったやつもう一回貸し付ける。そもそも上げたつもりだったんだし」 断る前にチップを差し出され、美人も受け取るしかない。東堂の種銭がどれだけあるかはわからないが、少なくともこの様子では金で潰すような勝負は望んでいないということだろう。 #SweetNovel

2016-03-29 12:25:07
スイートノベル @SweetNovel

「後悔するなよ? で、なんで勝負する?」 美人の問いかけに、東堂は「ポーカー」と唇の端を吊り上げた。途端に東堂と美人の会話に聞き耳を立てていたらしい周囲の人々がどよめきの声を上げた。 #SweetNovel

2016-03-29 12:30:08
スイートノベル @SweetNovel

一種異様な反響があって、美人は驚いて周りを見回す。 「俺との勝負なんだけど、よそに気を反らしてる余裕なんかあるのかい?」 おそらく騒ぎの原因となっているのだろう東堂は、すっかり慣れた様子で卓につくよう美人に促した。 #SweetNovel

2016-03-29 12:35:07
スイートノベル @SweetNovel

「安心してよ。特に何か仕込んでるってことはない。純粋に勝負も楽しもう」 黒服のディーラーが取り出したカードのパッケージに痂疵はないことを確認させた後、仰々しく封を開ける。 #SweetNovel

2016-03-29 12:40:05
スイートノベル @SweetNovel

このカードはカウンティングなどの不正を防ぐために一回使い捨てなのだと聞いて、美人はもったいないな、と思ったが、今はそれよりも東堂と勝負をする高揚感の方に気を取られた。 卓についた時から、東堂の世界に飲み込まれたような、ある種異様な感覚に見舞われた。 #SweetNovel

2016-03-29 12:45:08
スイートノベル @SweetNovel

特に何をしたわけでもなく、威嚇されているというわけでもない。 ただ東堂はそこにいるだけなのに、ポーカーのために用意されたテーブルの上は東堂のための世界だった。 #SweetNovel

2016-03-29 12:50:05
スイートノベル @SweetNovel

(あぁ、ここがあんたの居場所なのか) そりゃ、どこにいても場違いな感じが拭えないわけだ、と美人はひとり納得する。 #SweetNovel

2016-03-29 12:55:06
スイートノベル @SweetNovel

東堂はすでに自分のための世界を持っているのだから、それ以外の場所がしっくりこないのは至極当然のことのように思えた。 その世界に招き入れられたのだ。 美人は東堂と同じ景色が見たいと、東堂のすべてを探るべく思考を走らせる。 #SweetNovel

2016-03-29 13:00:13
スイートノベル @SweetNovel

結果は美人の惨敗だった。 ポーカーというフィールドは東堂のモノだった。 東堂はカードという兵隊たちを自在に操り君臨する王だった。 その長くしなやかな指に広げられるカードは鋭い剣で、美人の拙い兵法を嘲笑うかのように切っ先を喉元へと突きつけた。 #SweetNovel

2016-03-30 00:15:24
スイートノベル @SweetNovel

イカサマを疑うほどの鮮やかさで、東堂は華麗に美人の心理を操って、貸し付けたチップのすべてを根こそぎ奪い取り、さらには美人の頭に血を上らせた。 #SweetNovel

2016-03-30 00:20:26
スイートノベル @SweetNovel

「もう一回、もう一回だ……!」 あと少しで、何か見えてくるものがある。東堂が見る世界の一辺が見える。何としてもそいつを拝んでみたい。 じりじりとした渇望で胸が熱を持ったように痛んだ。 #SweetNovel

2016-03-30 00:25:16
スイートノベル @SweetNovel

「そっちにチップはないみたいだけど」 「なんだって賭けてやる、もう少し貸しとけよ」 平常を装っているくせに、ふーふーと肩で息をする。だが荒げているかのような呼吸は、その実、神経を整えようと意図的に深く行われている。 #SweetNovel

2016-03-30 00:30:53
スイートノベル @SweetNovel

ダッキングをしつつ、次の一発を狙っているボクサーの目だ。 東堂も唇が乾いたのか、べろりと舌で湿した。 #SweetNovel

2016-03-30 00:35:16
スイートノベル @SweetNovel

「貸してもいいが担保は?」 「……そんなもんないけど」 売って多少なりとも金になるような価値のある動産も不動産も、そもそも美人は持っていない。それで金を貸せと言うのも大概無茶な話だったが、東堂はむしろそれでこそというように、笑みを深くする。 #SweetNovel

2016-03-30 00:40:26
スイートノベル @SweetNovel

「俺に差し出せるものなら、何だってノセてやる」 宣言した美人の目はギラついていただろう。 東堂はそんな美人の様子を、ひどく好ましいものでも見るように目を細めた。 #SweetNovel

2016-03-30 00:45:34
スイートノベル @SweetNovel

「じゃ、担保はあんた自身だ」 「望むところだ」 むしろ、そんなものでいいのか、と言いたくなるくらいに美人は勝負を求めていた。 #SweetNovel

2016-03-30 12:15:16
スイートノベル @SweetNovel

改めて確認の儀式が執り行われ、それぞれに五枚のカードが配られる。 観衆たちも息を飲んでふたりを見守っている。 美人には最初からワンペアが来ていた。 カードはスペードとハートのJ。 (……さて、どうするか) 顔を上げると、東堂と目が合った。 #SweetNovel

2016-03-30 12:20:17
スイートノベル @SweetNovel

ぞくりとする。 手札を覗き見られたような気がした。いや手札どころか、今の一瞬で美人の思考もすべて。 東堂の長くしなやかな指が、愛撫するようにカードの上辺を撫でる。 #SweetNovel

2016-03-30 12:25:11
スイートノベル @SweetNovel

カードが東堂に屈し、東堂が望むような姿へと変化したのではないかと思えるほどに、その姿は妖艶で神秘的だった。 (くっそ、飲み込まれんな。自分自身を賭けちまってるんだぞ) 東堂が何を要求してくるかはわからない。 #SweetNovel

2016-03-30 12:30:30
スイートノベル @SweetNovel

だが、フルスモークの車を手足のように使う男で、早朝から連絡を取って自分の要求のために他人に融通を利かせさせることに慣れた男だ。 どんな伝手があり、人間をどのように利益に変えられるのか、わかったものではない。 #SweetNovel

2016-03-30 12:35:08
スイートノベル @SweetNovel

美人は怯みそうになる自分を叱咤して、勝負に意識を集中させた。 しかしながら、初心者である美人が、物馴れた相手にそう勝てるものでもない。 負けたというのなら、自分自身を俎上に乗せた時点で完膚なきまでに負けていたのだろう。 #SweetNovel

2016-03-30 12:40:18
スイートノベル @SweetNovel

何だって賭ける、と言いだした時にはもう完全に東堂の術中にハマっていたのかもしれなかった。 この短時間で思考ルーチンが読み切られ、その上で仕掛けたブラフもすべて読み切られていた。 #SweetNovel

2016-03-31 00:15:28