小学一年生の国語の教科書を読んでみよう

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くみかおるの冒険 @ElementaryGard

1)中学英語の教科書の分析が終わったので、今度は小学校の国語の教科書を分析してみます。 pic.twitter.com/nJUSAocV8q

2016-04-02 12:05:17
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2)表紙を開けると、こんな詩が。「せんせいにあわせて あかるいこえで」と指示が。音楽の合唱みたいでほほえましい。 pic.twitter.com/Flz2IOKJjn

2016-04-02 12:08:49
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3)中川李枝子の作。名作『いやいやえん』で知られるひとです。『となりのトトロ』のOP曲もこの方の作詞です。

2016-04-02 12:10:23
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

4)ごく初歩に思えるでしょ。それは私たちが、それに小学校に入ってくる子どもたちが日本語ネイティヴだから。足が悪いひとにとって東京の街はとんでもなく不便な魔境であるように、外国人にはこんなのでも難しい。

2016-04-02 12:11:54
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5)どう難しいかというと、そうですねまず助詞をみてみましょう。「いちにちがはじまる」「ぼくもわたしもせんせいも」 pic.twitter.com/TlstUnUE2H

2016-04-02 12:14:07
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6)「いちにちがはじまる」はよくて、どうして「いちにちははじまる」ではいけないのか、きちんと説明できるかな。

2016-04-02 12:17:07
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7)「ぼくもわたしもせんせいも」 この「も」の用法だってよく考えたら難しい。「は」の親戚だとして「ぼくはわたしはせんせいは」とはいわないのだし「ぼくがわはしがせんせいが」もなんだかおかしい。じゃあ「も」ってなんだろう。

2016-04-02 12:18:34
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8)「は」はほかの助詞にくっついたり入れ替わったりすることで元の助詞の機能を少し変える効果があります。例えば「東京に行く」を「東京は行く」とか「東京には行く」といじると、「でも大阪は行く気がない」等の裏ニュアンスを演出できる。

2016-04-02 12:20:33
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9)「は」と入れ替わり可能な相手としては「が」「の」「に」「を」があります。例えば「象の鼻は長い」は「象は鼻が長い」に書き換えできる。この書き換えによって「象でない動物はたいてい鼻は長くない」という裏ニュアンスが出せるようになる。

2016-04-02 12:24:51
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10)先日あるアメリカ人の日本語での失敗談を紹介しました。振袖姿の自分の教え子に向かって「キモノはきれいですね」と言ったらへそを曲げられたというお話。そういうときは「きれいなキモノですね」と言えば「キモノを着ている本人はきれいではない」という裏ニュアンスを消せたのに。

2016-04-02 12:27:07
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11)この手の裏ニュアンス演出の用法はどんな言語にもあります。ただどういうときにそのニュアンスが出るかは各言語で異なってくるので、そこをしっかり教えないといけません。

2016-04-02 12:28:12
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

12)小1国語教科書の最初のページに出てくる「いちにちがはじまる」を「いちにちははじまる」にすると、なんだか「いちにちでないものははじまらない」と裏ニュアンスが出てしまう。いちにちでないもの?わけわかんないですよね。だから「は」は使えなくて「が」になる。

2016-04-02 12:29:48
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13)こんなかんたんに思える詩のなかに、もうこんなに入り組んだ文法が機能しているのです。 pic.twitter.com/jI1E6DEuVr

2016-04-02 12:31:48
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14)助詞の奥の深さ(いいかえればちょっと間違って使うと全然違って相手に理解されてしまうこわさ)は、この教科書でも意識されているのか、こんなドリルが用意されていました。 pic.twitter.com/Xw20lGclRr

2016-04-02 12:33:32
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15)ちょっと気になったのは、日本語は世界でもあまり数が多くない、動詞が木の幹になって主語や目的語やほかいろいろなものが枝分かれしていく言語であることがあまり自覚されていない点です。

2016-04-02 12:36:06
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

16)このページでは「わにはあらう」「かおをあらう」「わにはかえる」「いえへかえる」とありますが、つまり「あらう」「かえる」という動詞がまず木の幹にあって、それから助詞によって枝分かれして「わには」(主語)や「かおを」(目的語)が続くわけです。

2016-04-02 12:38:02
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

17)なんだあたりまえじゃないかと思ったらいけない。日本語ネイティヴにとっては常識以前のことでも、外国語として日本語を学ぶときにはとても大きなハードルとなるのがここです。

2016-04-02 12:39:37
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

18)「わにが すんで いた」「かんがえた」簡単に思えるでしょ。とんでもない、前者は「すむ」と「いる」の二つの動詞が活用して連結する、いわゆる複合動詞。これが外国人には難しい。

2016-04-02 12:42:32
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

19)「すんで いた」は「すむ」が「てフォーム」に活用して「すんで」に、そして「いる」が「たフォーム」に活用して「いた」になったものが、機関車が二連で進むように連結している。

2016-04-02 12:44:16
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

20)「てフォーム」や「たフォーム」についてはこの表をご覧ください。感覚的にわかると思います。私たちが国語の授業で習ったのとは違う日本語文法です。 pic.twitter.com/PV04a4KWyx

2016-04-02 12:47:12
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21)「てフォーム」+「いる」つまり「~ている」には五つの用法があります。もう何度も繰り返した話ですが自分自身への確認のために改めて論じてみます。

2016-04-02 12:48:42
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

22) ①窓が開いている ②外を走っている ③山がそびえている ④前に会っている ⑤毎朝走っている

2016-04-02 12:50:26
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

23)「すんでいる」はどれに当たるでしょう。③なのですね実は。「川に住む」は文法的には正しいけれど現実には「川に住んでいる」と言うほうがずっと多い。なぜなら「住む」より「住んでいる」のほうが形容詞的で、つまり定住感が出るから。

2016-04-02 12:53:57
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

24)ところで「すむ」の「てフォーム」活用が「すんで」になるとして、どうして「すて」にならないのか?これは発音のしやすさの問題です。「て」ではなく「んで」になる動詞のパターンがあって、それは覚えてもらうしかない。

2016-04-02 12:55:39
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

25)「いる」が「たフォーム」に活用して「いた」になる。この「たフォーム」は実は英語で言う過去形とは同じではありません。明治期に「~た」体が夏目漱石によって開拓洗練され、英語でいう過去形も現在完了形も、そのどれでもないニュアンスでも使えるものに進化したのです。

2016-04-02 12:58:05