シンガポールと「大東亜戦争」と「昭南島」について 《山崎雅弘》
- mas__yamazaki
- 40043
- 2041
- 35
- 179
(続き)開催で、約1200人で満席となった大聴衆が熱弁に聞き入った」「井上氏は(中略)『真実を伝え続けることで、終戦後の占領下で刷り込まれた『悪しき侵略戦争』というイメージを絶対に払拭しなければならない』と訴えた」井上和彦氏は、産経新聞出版から講演名と同タイトルの本を出している。
2016-01-13 13:42:47「講演会では『陸自の歌姫』こと陸上自衛隊中部方面音楽隊の鶫(つぐみ)真衣陸士長のミニコンサートも行われ、歌声が会場を彩った」今の陸上自衛隊は「大東亜戦争は侵略ではなかった」という認識なのか。最近の役所は「平和」や「護憲」に拒絶反応を示すが、大東亜戦争を肯定的に語る催しは良いのか。
2016-01-13 13:43:53一年前の『歴史街道』誌2015年1月号には、井上和彦氏の「世界で感謝された日本人(9)シンガポール 敵の武勇を称えた日本軍人の武士道」という、日本軍のシンガポール侵攻と敗戦までの日本統治を全面的に礼賛・肯定する記事が掲載されている。 pic.twitter.com/gZQJJZ2asu
2016-01-13 13:45:28井上氏は、先日私も行ったシンガポールの戦跡や博物館を取材しているが、日本に都合の悪い事実や展示は完全に無視して記事を書いている。「日本軍は敵兵の戦死者のために慰霊碑を建てた」とあるが、敗戦直前に日本軍自身が破壊した事実には触れない。 pic.twitter.com/lr7PiIRHac
2016-01-13 13:46:59井上氏は、旧フォード工場博物館を「筆者一押しの戦跡」と書くが、住民虐殺や犯罪者の斬首と晒し首などの蛮行に関する展示にも、大勢の華人住民を「安居証」で助けた篠崎護氏に関する展示にも一切触れない。後者は、現地住民に感謝されている日本人。 pic.twitter.com/g53Stk5ke7
2016-01-13 13:48:29井上氏は「現地でも語り継がれる武士道」などと書いているが、実際に現地で語り継がれるのは「日本統治時代がいかに過酷だったか」「日本軍がどれほど多くの市民を殺し、拷問したか」等の事実であり、日本軍や日本統治を称賛する記念碑など何もない。 pic.twitter.com/WuEmJGNAnT
2016-01-13 13:51:40井上氏は「シンガポールは昭南島となった」とだけ書いているが、地元住民に何の相談もなく一方的に地名を変えた事実には踏み込まない。セントーサ島の博物館には触れているが、辻政信の指示で行われた住民虐殺や分断統治などの展示には一切触れない。 pic.twitter.com/51ARgroi8R
2016-01-13 13:53:16井上氏は、シンガポールのど真ん中にある、華僑大虐殺や住民迫害で死んだ犠牲者の慰霊碑には一切触れず、逆にそれらの罪状で死んだ日本軍人の鎮魂碑だけ取り上げて「無実の罪を被せられて無念だったろう」などと書いている。日本軍の罪は一切見ない。 pic.twitter.com/JwtiSkjo4u
2016-01-13 13:54:43井上氏が写真で紹介する「ブック型の記念碑」だが、この碑に記された「日本の宣伝部隊の本部がここに置かれたが、住民はそのラジオ放送を聴くことを嫌った」という「不都合な事実」には全く触れない。碑の内容を読んだ上で、不都合な事実は無視する。 pic.twitter.com/VEjaeMchWb
2016-01-13 13:56:22井上氏は、『歴史街道』誌の読者のほとんどは、シンガポールの戦跡に行ったことも行くこともないだろうから、事実を歪めて記事を書いてもバレないと考えたのかもしれない。しかし彼がやっていることは、旧ソ連のプロパガンダ戦史本と何も変わらない。戦前戦中を肯定する政治宣伝活動に歴史を利用する。
2016-01-13 13:57:47井上和彦氏は記事の最後を「アジアに希望と自由、そして独立の喜びを与えた日本軍。よくぞ戦ったり、日本軍!」とまとめている。同じ戦跡と博物館を見た人間として、事実の恣意的選択と歪曲に驚かされるが、陸上自衛隊はこの歴史認識に同意するのか。 pic.twitter.com/UjgCO1AzaH
2016-01-13 13:59:13「正論」欄執筆メンバーでジャーナリスト、井上和彦氏の講演会「日本が戦ってくれて感謝しています」(主催・産経新聞雑誌「正論」協賛・大阪冶金興業)詳報(産経)bit.ly/1nhOxvB これは要約だが、彼がどんなテクニックを用いて印象操作を施しているのかがわかる。
2016-01-14 13:29:33まずタイは日本軍が侵攻していないので、侵略された他地域と国民感情が異なるのは当然だが、井上氏はその違いを明確にしない。シンガポールの山下像があるのは、セントーサ島ではなくブキテマの旧フォード工場博物館だが、パーシバル将軍像と一緒。 pic.twitter.com/Cl1f2rDXHt
2016-01-14 13:31:22つまり、山下とパーシバルの歴史的な交渉が行われた旧フォード工場内の部屋の横に、双方の交渉当事者として二人の像があるだけで、山下将軍を顕彰する意図で置かれているわけではない。しかし井上氏は、あたかも顕彰されているかのように書いている。 pic.twitter.com/GStUJhojpH
2016-01-14 13:32:57旧フォード工場博物館の展示では「新たな帝国主義の隆盛:大東亜共栄圏」とあり、「天皇を敬う日本精神」を住民に浸透させるため「日本語教育を熱心に押し付けた」。「日本が戦ってくれて(シンガポール人が)感謝しています」という記述は全然ない。 pic.twitter.com/W3ue8Qqh64
2016-01-14 13:34:33外務省の職員だった篠崎護氏は、開戦前からシンガポールで勤務し、開戦と共にチャンギ刑務所に収監されて過酷な待遇を受けたが、日本軍が占領した後に解放されても「復讐」しようとは思わず、逆に日本の占領統治下で生命の危機に瀕した華人を助けた。 pic.twitter.com/cf4QO5kOUt
2016-01-14 13:35:51そのため、篠崎護氏は今も現地住民に感謝されているが、産経新聞や井上和彦氏は彼の存在や功績には一切触れない。「現地住民に感謝されている日本人」の例が欲しいなら、彼を紹介すればいいはずだが、それをやると日本軍がシンガポールで大勢の華人を殺害し迫害した事実にも触れなくてはならなくなる。
2016-01-14 13:37:01井上和彦氏は、日本軍がシンガポールでオーストラリア軍戦死者の記念碑を建てた件が「シンガポールの中学生向けの教科書で取り上げられている」ことを根拠に、日本軍の武士道精神が「シンガポール人の心を打った」と書いている。しかし事実はどうか。 pic.twitter.com/mQbGTO27QH
2016-01-14 13:38:36井上氏が引用している教科書『現代シンガポール社会経済史(1985年版)』のより広範囲の翻訳が、越田稜編著『アジアの教科書に書かれた日本の戦争(増補版・東南アジア編)』(梨の木舎)に掲載されている。添付画像のような内容が書かれている。 pic.twitter.com/4xDr3IHTnc
2016-01-14 13:40:11井上和彦氏は、シンガポールの中学生向け教科書の中で、日本軍の行動を肯定できる材料だけ引用し、量的にはそれをはるかに上まわる否定的な記述には一切触れずに、あたかも「シンガポールの人々が日本軍の行為を称賛している」かのように、事実を歪めて日本人に説明している。恥という感覚が無いのか。
2016-01-14 13:41:48『現代シンガポール社会経済史(1985年版)』には、日本軍がオーストラリア兵の戦死者を悼む記念を建てたとの記述があるが、前後の文脈は「オーストラリア兵がシンガポールのために勇敢に戦ってくれた」というオーストラリア人への感謝の流れであり、碑を建てた日本軍は立派だという文脈ではない。
2016-01-14 13:43:20「日本が戦ってくれて感謝しています」という井上和彦氏の説明と、「シンガポールの人びとは日本の支配下で彼らの生涯のうち、もっとも暗い日々を過ごした」というシンガポールの中学校教科書の記述は、グロテスクなほど乖離している。そういう虚偽を、予備知識のない日本人に広める行為は犯罪に近い。
2016-01-14 13:44:38産経は「歴史戦」という旗を掲げて、特定の価値観を共有する人間の弄ぶ「主観的な歴史解釈」をどんどんエスカレートさせているが、一体何と戦っているつもりなのか。戦前戦中の日本を正当化する嘘に歯止めが無くなり、嬉々として歴史歪曲の快感に浸っていれば、いずれ外交問題に発展するだろうと思う。
2016-01-14 13:45:582016年1月10日に大阪中之島の中央公会堂で開かれた井上和彦氏の講演会「日本が戦ってくれて感謝しています」で軍歌『海ゆかば』を熱唱する「自衛隊の歌姫」と参加者。塚本幼稚園の園児ではないので「屍」「死」の意味は理解しているはずだが。 pic.twitter.com/0gMPqr4B3s
2016-01-14 13:47:11「私が日本兵の要求をすぐに理解できずにいると、怒鳴られ何度も平手打ちを食らった」「私は心の底から恐怖にさいなまれ」「日本軍政は恐怖心を広めることでシンガポールの人々を統制した」『リー・クアンユー回顧録』(日本経済新聞社)リー・クアンユーはシンガポールが戦後に独立した後の初代首相。
2016-01-25 13:48:35