中嶋 隆氏( @nakajimasaikaku )による、廓の練習問題(基礎編1〜4)

中嶋 隆氏(早稲田大学教育学部国文科教授・日本近世文学)による、廓の練習問題集。専門書のほかに小説も執筆。「廓の与右衞門控え帳」(小学館文庫)「はぐれ雀」(小学館)ほか、直近では、4月15日発売の「小説すばる」5月号に、「意地張り心中」。
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中嶋 隆 @nakajimasaikaku

[「廓」小説の練習問題(基礎編・1)「ころは天和。島原の初音太夫の花魁道中が始まった。三枚歯の木履も軽々と、外八文字の蹴出しが見事だ」この文章に誤りが三点ある。それを指摘せよ。解答は、今夜。

2016-03-24 09:57:46
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

老いの繰り言で恐縮。学生諸君や若い女性が「廓」に興味をもたれることはうれしい。ただ、「廓」はプロスティテュートの場であり、そこに人間のおろかさや悲しみが溢れる。だから、小説や演劇の舞台になるのです。そこを忘れないでください。

2016-03-24 10:02:50
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

さらに言うと、漫画や映画の影響もあるでしょうが、誤解した知識で、「業界用語」が多くて小説がつまらない、などと感想を持つ人もいます。多少は反感をもたれるのは覚悟してのことですが、「廓」作家(作品はそれだけではないです!)の端くれとして、主に若い人を対象にして「練習問題」を作ります。

2016-03-24 10:11:39
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編1)の解答 ○「花魁道中」これはペケ。花魁は吉原で用いられた言葉で、「天和年間」には未成立です。○「三枚歯の木履」これもペケ。このころは素足に草履で道中しています。○「外八文字」ペケ「内八文字」です。

2016-03-24 22:08:41
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編2)元禄期遊女の階級。京都島原・大坂新町「太夫・天神・鹿恋(かこい)・端女郎」 江戸・吉原「太夫・格子・散茶・端女郎」江戸吉原は、湯女の伝統が踏襲された「散茶」に特徴があります。では、最高級遊女の太夫は遊女のなかで何割かな?今日は卒業式なので、解答は明日。

2016-03-25 09:35:28
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編2 解答 『諸国色里案内』によれば、貞享4年当時、島原では太夫13人(遊女総数316人)新町では太夫17人(遊女総数983人)です。また吉原は『吉原大画図』によると、元禄2年当時、太夫3人(遊女総数2868人)割合は、各4%、1.7%、o.1%になります。

2016-03-26 13:14:02
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編3)元禄期、二人の吉原散茶の会話「今日は浅草観音祭りだね」「役日だっていうのに、お茶を挽きそうだよ」「ほんに、身揚がりは勘弁してほしい」「また、借金がかさむよ」以上のやりとりを、わかりやすく説明せよ。

2016-03-26 13:21:25
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編3)解答 遊女は、必ず客をとらなければならない日があり、それを役日(吉原)、物日・紋日といいます。客が来ない(「お茶を挽く」という)と、その揚代が借金となります。これを「身揚がり」といいました。遊女は、この慣習で借金に縛られて苦界奉公を続ける羽目になります。

2016-03-27 09:35:29
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編4)遊女に支払う代金を「揚代(あげだい)」といいます。太夫・天神クラスと遊ぶためには、揚代だけではなく「花」とよばれるチップが必要。客が一日だけ吉原(元禄期)の太夫と遊ぶと、いくらぐらい費用がかかったでしょうか?イ5万円 ロ20万円 ハ80万円 ニ120万円

2016-03-27 11:27:51
中嶋 隆 @nakajimasaikaku

廓の練習問題(基礎編4)の解答 西鶴『諸艶大鑑』巻2-4によれば「揚屋の亭主・女房・奉公人・若い衆・遣手・大門口の茶屋・泥町の編笠茶屋」に計銀9 枚と金1両1分、銀に換算して462匁のチップ、太夫の揚代74匁、合計536匁。一匁1500円として80万4千円になる。解答はハの80万

2016-03-27 23:55:18