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荒木健太郎 @arakencloud
今日(7日)17時の関東平野,局地前線できとる.内陸の冷気層は1kmないくらいぽい.ちょっと動くと気温が大きく変わるので予報担当者泣かせなヤツです.東京千葉茨城あたりで急に暖かい風が強まったらこのひとのことを思い出してあげてください pic.twitter.com/wIB8vfFiLM
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荒木健太郎 @arakencloud
関東平野の局地前線はどうして予測が難しいかについて,思うことを備忘録的に書いておく.ひと口に局地前線と言っても種類が多様なので,今日みたいに温帯低気圧が関係するヤツに限定して書く.ここでの局地前線の定義は,大きな水平温度勾配と水平方向の風を伴う不連続線ということにしておく.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
最初に地理的なことを.関東平野は西~北が山地に囲まれていて埼玉とかはそっちからの下層風が入りにくい.逆に南~東は開けているのでそっちからの風は入りやすい.で,今日みたいに南西の下層風が卓越する場では,下層南西暖気が入りやすい所とそうでないところで局地前線はできやすい.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
少し前の投稿(twitter.com/arakencloud/st…)で言及したけど,低気圧やそれに伴う降水が関係する局地前線では,その北側の冷気層は一般に高度約1km以下とごく薄いことが先行研究からわかってる.まず今日のように日本海Lで関東下層に南系の暖気が突っ込むやつを考える.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
ここで局地前線の予測上の問題になるのは暖気がどこまで入るかで,これによって日最高気温が地点によって大きく変わったりする.今日の日本海Lの場合,昨日のMSMとかだと南東下層暖気が今日後半強くて,実況より内陸まで局地前線が動いていく予想だった(たしか).ただ実況では南西卓越.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
このような下層で卓越する暖気の風系が違うのは,主に総観スケールでの低気圧予測が上手くいっていないことによる.低気圧の位置,中心示度などなど.これによって気圧傾度が変わって暖気の風系予測が上手くいかずに局地前線の予測も上手くいかなかったりする.ではなぜ低気圧予測が難しいか?つづく
荒木健太郎 @arakencloud
予測誤差の要因は色々あるけど,水平解像度固定としてMSMで考えると,まずひとつは初期値・境界値の問題.低気圧の発達に重要な環境(下層水蒸気とかの熱力学場や上層トラフとかの力学場)が表現されていなければ当然ながら予測誤差が生まれる.イニシャル変わりが大きいときとかは要注意.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
もうひとつはモデルの物理過程の問題.低気圧の発達には雲・降水粒子の相変化に伴う中層の非断熱加熱が重要なことが多く,それが上手くモデルで表現できていないと低気圧の時間発展(示度・位置ともに)が予測できないことがある.ただし,非断熱加熱量の観測は困難で,なかなか検証できない.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
雲・降水粒子の振る舞いは雲物理過程で決まるけど,私の著書で散々書いているように不確実性が極めて大きい.今後も雲物理過程の精緻化が必要なんだけど,モデルに合ったパラメタリゼーションを開発する必要がある.現状は色々足りていないので,雲物理→非断熱加熱→低気圧と誤差が生まれる.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
そんなこんなで日本海L時の局地前線は,今日みたいに総観場の下層暖気の風系の違いから予測が難しいということがある.これに加えて,先行降雨に伴う雨粒の蒸発による下層低温化が関東内陸で起こってたりすると,局地前線北側の寒気が強くなり,これも局地前線予測に影響を及ぼす.まだつづく
荒木健太郎 @arakencloud
今日は違うけど,日本海Lの暖域内に関東平野があって下層南東の暖気が卓越する場合,降水雲も一緒に南東から入ってくる.このとき局地前線面や山地斜面を滑昇した暖気が下層雲を作り,降水効率上がったり対流立って内陸大雨になったりする.当然この降水は下層冷気を強めて局地前線を強化する.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
これらのことは,低気圧の時間発展もそうだけど,降水予測も局地前線予測に重要であることを意味している.当然ながら降水予測には雲物理過程が重要なわけで,結局雲物理過程をやらないといけない.日本海Lの時はだいたいこんなかな?ただし,南岸Lの場合はさらに話が厄介になってくる.さらにつづく
荒木健太郎 @arakencloud
南岸Lの場合,Cold-Air Dammingという現象が関東下層の北寄り寒気移流を強め,関東南部や南海上で局地前線(沿岸前線)を形成したりする.詳細はこちら.CAD→metsoc.jp/tenki/pdf/2015… 沿岸前線→metsoc.jp/tenki/pdf/2015… つづく
荒木健太郎 @arakencloud
CADの記事に書いたけど,CADはドライな総観場の力学×地形効果と,降水粒子の非断熱冷却の両方が重要な現象です.モデルの初期値や雲物理は当然だけど,CADの予測の不確実性には地表面過程や境界層過程も含まれる.これらを解決していかないと局地前線(沿岸前線)予測が難しくなる.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
色々書いたけど,気象キャスター等の解説者の立場にいる皆様は,なぜ地上気温予測がはずれるのか理由を聞かれたら,これまで書いたような不確実性が沢山あって,観測網の拡充(初期値改善),室内実験や観測に基づくモデルの物理過程の高度化等が必要な旨を簡単にお伝えいただけると嬉しいです.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
予報担当者が経験からモデルの苦手な部分を補正するということは良くされていて,それが人間が予報を作らないといけない最大の理由なわけですが,経験で上手くいく現象とそうでない現象はある.単にモデルの解像度が足りていなくて,環境場の診断で予測できる現象(局地風とか)は上手くいく.つづく
荒木健太郎 @arakencloud
ただし,関東平野の局地前線とか,低気圧・降水を伴う各種物理過程が重要な現象の場合には,どっちに転ぶかはぶっちゃけ経験だけで判断できないと思う.そこで必要になってくるのが実況でモデルの予測結果を評価して,最善の予報シナリオを採用する診断技術なわけだ,と思うところです.次が最後かな
荒木健太郎 @arakencloud
天気予報は完璧じゃないし,予測の難しい現象はまだまだ多いので,研究者・モデル開発者・予報担当者・解説者など,みんな頑張ってます.あたたかく見守りつつ応援してやっていただけると嬉しいです.ついでに実況見つつ局地前線通過を見計らって,暖気を楽しんでみたりすると天気と仲良くなれます.終
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