10周年のSPコンテンツ!
2
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
【アンヴェイル・ザ・トレイル】#2
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(これまでのあらすじ:ゴイ、ボルタ、ユウラギの三人は、働くアテがないので大学学生寮の一角を占拠して日々を無為に過ごす大学生&OBだ。今日も今日とて備え付けの楽器を鳴らし、蓄音機を再生する。そこに混じっている学外の男がいた。彼の名はウミノ。いつのまにか居着いた正体不明の存在だ)
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(害もないので放置していた三人だが、ある日ウミノは音響設備とともに放置されていた機材に黒い鉱石をセットし、怪しげな行いを始めた。ウミノはその機材が「鉱石ラジオ」であると説明したが、電子戦争以前の更に昔にとうにすたれたロー・テクを知る者はいない)
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ザリザリ……ザリザリザリ……偏執狂的な……迫ってくる群れ……「カブラだな、これはカブラの歌詞」「シーッ」ウミノが指を立てて黙らせた。ザリザリ……ザリザリザリ……ここだ……繋がってる……そこのアンタ……ザリザリ……「これはカブラじゃないぞ。サンプリングでもない……」「シーッ!」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ザリザリ……ザザザザ……「微弱だ」ウミノは呟いた。懐からやはり同じような黒い石を取り出し、差し替えるが、状況は変わらない。「その、石なんかでラジオなワケ?」ゴイが尋ねた。「シーッ!双方向になっていないのかね?」「わからないよ!」「ジャックは同じじゃないか?マイクが繋がるぜ」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
提案したのはユウラギだった。ボルタは顔をしかめた。「余計な事を」「面白いじゃん、何か。いわば真空管と同じカテゴリだろ。アナログ・レリック崇拝学派の俺らとしては……」ゴイがマイクを接続した。「すげえ。同じ規格だ」「それはそうだよ」とウミノ。マイクを掴み、「アーアー、モシモシ!」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ザリザリ……「モシモシ!モシモシ!」ウミノの呼びかけ虚しく、音は遠ざかり、それきりだった。「よくわからないが、これではダメなんじゃないか?」ウミノは三人を見渡した。「エッ」「いや、そりゃあ」彼らは顔を見合わせた。「キミらの!友人の友人だとか!センセイとか!」ウミノが威圧した。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アイエッ!」「技術的な人間を連れて来いって事?」「わからねえよ」三人は目を見交わす。「違法基板屋のノザワマ=サンは?」「アナログじゃなけりゃ……おい、前に、電話機を分解してギターを作ったって嘯いてた奴が寮にいたろ」「ああ、ミューラ=サンね。有名だぜ」「それだ」ウミノが指差した。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「こちらから発信することがゴールだ」ウミノは厳かに言った。「だがまずは、この微弱な信号を増幅できるようにしたい。私は歴史学、考古学が専門だ。全く素人なんだよ。いいかね?ミューラ=サンを始めとしたスタッフを集めてくるんだ。ASAPだ!」ウミノは机を叩いた。三人は部屋を飛び出した。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「どうするよ」「ミューラ=サンを連れてくる」「その後は」「知らね」彼らは廊下の左右に積まれた古雑誌やベニヤ板を蹴散らし進む。すれ違う学生は三人を胡乱げに見た。「へヒッ、何してンの」水タバコの煙を吐き出しながら、ダンディ・Dが呼び止めた。「ミューラ=サンの部屋どこ?」ゴイが尋ねる。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「全能なるミューラ……」ダンディ・Dが瞑想的に呟いた。ボルタが水タバコのチューブを奪い取った。「その全能なるミューラの居場所なんだよ知りたいのは」「突き当りだ」指差した先、積み上げられた段ボールが廊下を塞いでいる。「奥だ。奴はいつもハンダのヤニを吸引してキマってる。チューブ返せ」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ありがとよ」ボルタはチューブを返し、段ボールの隙間に身体をこじ入れて奥に入って行く。「就職どうすんの、ダンディは」「君たちと違うよ……」ダンディ・Dは煙を吐き出しながら頷いた。「来週からPVC加工会社でインターン。この髪ともおさらば、サラリマン・ヘアにする」「ファック・オフ」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
全能なるミューラは実際、大掛かりな工作テーブルに向かい、椅子の上に正座して、ハンダゴテで何かを溶接している最中だった。コテ先が発する煙を芳しげに吸い込むボンズヘアーの男は三人の入室を振り返りもしない。「ミューラ=サン」「このコクのあるフラックス・フレーバー……ああ、ゴイ=サンか」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「知ってる?電子戦争以前のハンダって有害で、それ、絶対死ぬよ。脳とか、内臓とか」ユウラギが控えめに指摘した。ミューラは振り返り、立ち上がった。「これは1950。こっちのリールは1944。エグみがヴィンテイジの風格。わかんない奴つれてきたね、ゴイ=サン」「本題いいかな」「どうぞ」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「鉱石ラジオって知ってる?」「それで?」「おかしなオッサンが俺らの部屋に居着いてんだけどさ」ゴイは説明に窮した。「その……変な黒い石を嵌め込んで、何か受信しようとしてて……信号を増幅したいッて。あわよくば双方向でやりたいって」「増幅……双方向……アナログか」ミューラは目を閉じた。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「出来るか?」ゴイはおずおずと訊いた。ミューラは目を閉じたまま答える。「あの部屋には豊富なレリックがある。あの部屋は由緒ある電波中継局。センパイのセンパイのセンパイ……宝の持ち腐れ存在……それがお前らだ」「使いたかったのか」ボルタが口を挟んだ。ミューラは目を開け、目をそらした。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
彼はハンダのリールを注意深く選別しては、大きな紙袋に放り込んだ。ハンダ小手、銅線、何らかのテスター類、PVCテープ……「言ってくれればいつでも入れてやったのに」ボルタは言った。「そうはいかない。部屋はクランであり、我が部屋とお前らの部屋の冷戦の歴史は長い。そっちは三人もいるし」
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「要はウチのとこの機材をバラしたりなんだりすりゃ、どうにかなるって?」ユウラギが尋ねた。ミューラは首を振った。「約束はできないが」「まあとにかく頼むよ」ゴイが頭を下げた。ミューラはオジギを返した。そして叫んだ。「手を触れないで!」棚に手を伸ばしかけたボルタが身をすくませた。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「わかったよ」「絶対だ」「うん」ユウラギとゴイとミューラにつづいて、ボルタも部屋を出ようとした。去り際に一度窓を振り返った。窓の外、庭先に、妙な集団の存在を認めた。さっきまではいなかった連中。赤いバンダナとサングラスで揃え、ノボリ旗を手に手に持った集団だ。ボルタは嫌な予感がした。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
【アンヴェイル・ザ・トレイル】#2 続き
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
……「カブラ・ノヴァなんか聴いて……キリステジャンゴとか無いのか」ミューラは蓄音機から流れる音楽に不満気だったが、ボルタ達は譲らなかった。「ここの機材は好きにバラしていいんだぞ。お前のほうが今回のメリットが大きい。だから音楽はカブラをかける」「どちらでもよくないかね?」とウミノ。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「オッサン!元はといえば……」食って掛かるボルタをゴイは制した。「始めてくれよ、ミューラ=サン」「じゃあ今回は特別……アッ!換気扇を回すな!フラックス・フレーバーが」「それもダメ!俺らをビョーキに付き合わすな」ボルタは声を荒げた。「まあいい」ミューラはそちらを見ずに頷いた。
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「早速凄いぞ、これは」ミューラは鉄板と木材を繋ぎあわせたようなひと抱えのボックスを引きずりだした。ボルタたちにはおよそ判らぬツマミ類が沢山ついている。「なに、それ」「見てわからないか。据え置き型のトランシーバーだ」ミューラは鉄板を固定するネジをドライバーで一つ一つ外してゆく。
残りを読む(34)

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2016年4月26日
アンヴェイル・ザ・トレイル #1 http://togetter.com/li/951198 アンヴェイル・ザ・トレイル #3 http://togetter.com/li/967658
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする