「温度」について by 茂木氏

先に言われてしまったか・・・ 公益も良いけど、誰も喜ばない公益を振りかざしてもあんまり金にはならないよね。 大相撲野球賭博:「生活苦から協力」…米子容疑者 http://124.83.183.242/select/today/archive/news/2011/01/28/20110128k0000e040067000c.html
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茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(1)人には、伝わってくる「温度」のようなものがある。体力が衰え、引退が取り沙汰されていた横綱、曙を国技館で見たとき、そこには独特の「温度」があった。

2011-02-03 09:46:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(2)曙は、負ければすぐにも引退、というような崖っぷちだった。土俵の横で独り腕組みして座り、取り組みを待つ曙の身体から伝わってくる「温度」。その「温度」に触れるために、ぼくは相撲を見に行ったのだと思った。

2011-02-03 09:47:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(3)エジプトの情勢を、騒乱の現場から必死になって伝えるBBCのレポーターにも、温度がある。アル・ジャジーラの的確な編集と迅速な対応にも、一つの温度がある。ぼくは、その温度を求めてメディアの中をさ迷う。

2011-02-03 09:48:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(4)プロレスでは、ある程度筋書きがあるともいう。しかし、身体を鍛えていなければ、「温度」はごまかせない。うまく受けなければ死んでしまう。身体を張っている者の生命の温度。それ以外に、信ずるものはぼくにはない。

2011-02-03 09:49:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(5)ぼくが小林秀雄を愛するのは、その批評における「温度」だと思う。哀しいまでに身体をはり、声を張り上げて世界に向き合っている。その「温度」に惹かれて、その文章を読んだ。講演を聞いた。

2011-02-03 09:50:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(6)ある駅のターミナルでぼくがトイレに入っていた時、鍵穴から必死になってのぞいている一つの目があった。5歳くらいの男の子。「待っててね、すぐ出るよ」と言ってドアを開けたら、ぱっと駆け込んだ。あの時の瞳には、温度があった。

2011-02-03 09:51:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(7)ハレー彗星を見にバリ島に行ったとき、土産物を必死になって売ろうとする人たちには、温度があった。「せんえん、せんえん、やすいよ。」彼女たちの声には、はっとするような温度があった。

2011-02-03 09:52:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(8)身体を張っている人たちのことを、自分を安全圏に置いて冷徹に批評する人たちの温度は低い。水に落ちた犬につばをかけるような卑劣な群衆たちの魂の温度は、凍り付くくらいに低い。「自己責任でしょ」と通り過ぎる人の心は、すでに止まっている。

2011-02-03 09:53:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

温度(9)ぼくが今、日本のメディアに感じている違和感は、つまりは「温度」の問題だろう。そこには、私がはっと目を開くような、温度の所在が欠如する。背を向けて霧が晴れたとき、ようやく世界の豊饒が浮かび上がってくるのだ。

2011-02-03 09:54:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「温度」についての連続ツイートでした。

2011-02-03 09:54:54