漫画家・松田未来氏の創作講座『起承転結・転と結の作り方』

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松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

起承転結の「承」までつらつらと語ったシリーズ、きょうは「転」について説明させていただきます。「転」ってなにかイメージ的に「どんでん返し」のように語られていますが、それはごく一部の例でしかありません。「実は〇〇だったんだー!「なんだってー」的な展開って読み切りではやり辛いのです。

2011-02-03 19:55:46
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

じゃあ「転」って何なんだよと言われたら、文字通り「”転”げる」なんです。そこまで「起」「承」を経て積み上げた高い所から結末に向かって滑走を始めるようなイメージでしょうか。

2011-02-03 19:59:16
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

前回の「承」の最後で、物語の”阻止限界点”を突破すると書きましたが、まさにそれは「転」がその勢いを必要とするからです。ラストを締めるために必要な最後の助走です。ここであらためて説明とか一呼吸とかやってしまうと、せっかくの積み重ねがパーになります。

2011-02-03 20:01:43
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

さっきどんでん返しが難しいと書いたのはそのためです。長い連載と違い、初見の初めて目にするキャラとストーリを追っかけてきた読者に、物語の根底をひっくり返すような仕掛けは正直ついていけないという作者の自己満足になることが多いのです。ただ、例外もあります。

2011-02-03 20:04:23
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

推理もの・ミステリーがその代表ですね。これはひっくり返すことを目的にキャラも物語も設計されるので、読む方もそれなりに受け入れる体勢が出来ます。もちろんそのために舞台配置や段取りはしっかりしていかないといけませんが。密室シチュが多いのも、読者に事件だけに集中してもらうためです。

2011-02-03 20:07:34
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

その変形として、物語をひっくり返すことのみを主眼においた語り口もあります。いわゆるショート・ショートのような短編に多い手法です。この場合平凡なキャラ・ありふれた世界観を用いて、読者の理解をスムーズにすることが多いですね。代表的な例は、藤子・F・不二雄先生のSF短編シリーズ。

2011-02-03 20:10:38
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

ちょっと脇道にそれましたが、先に述べたとおり「転」は勢い重視ですのでアクションが多くなることが多いです。この場合のアクションは主人公やキャラクターの「行動」を指すと思ってください。殴る蹴るやカーチェイスだけがアクションではありません。

2011-02-03 20:13:26
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

「告白するために彼のもとへ向かう」だって立派なアクションです。そこに長い踏切や発車してしまう電車、みたいなサスペンスを入れれば読者はもうハラハラです。ただし、そこに到るまでに読者が主人公(あるいは主人公の置かれた立場)に共感ないし理解していれば、の話です。

2011-02-03 20:16:01
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

どんなとっかかりでもいい、主人公に対する「そこだ!いけッ」と言ってしまうようなエピソードやシーンが用意されていれば、「転」の加速感は増します。というよりそれがないと読むのをやめてしまう可能性もあるのです。それだけ読者は初見の作品に対し厳しいと思ってください。

2011-02-03 20:19:08
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

「転」にはもうひとつ、「承」で巻いておいた種を刈り取る役目もあります。別の言い方をするなら「伏線」ですね。台詞よりはアイテム、アイテムよりはシーン、で語っておくのが読者の記憶に残っているという意味では効果的です。この伏線の回収を「ドンデン返し」と理解しているヒトが多い気がします。

2011-02-03 20:22:41
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

「転」は内容よりも絵的にページ数を消費します。ですので必然的に「結」が圧迫されますがあまり気にしなくても大丈夫。ここまでの道筋が出来ていれば「結」は意外とページを喰わないで済みます。自分が読み切りを描いていた頃は32pの場合最後の3~4pが「結」の割り当てでした。

2011-02-03 20:27:02
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

「転」に必要なのは「どんでん返し」ではなく達成感です。方向性によっては絶望感にもなります。それは語ろうとする物語次第です。短いページの中で「ああ、ここまで来ちゃったよ…」と読者に思ってもらえばしめたものです。そのためには明確に「何が出来て何が出来なかったのか」を提示しましょう。

2011-02-03 20:30:46
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

その達成感を描けたなら、正直「結」は曖昧にしたって結構大丈夫なんです。主人公の生死をぼかすとかそういうパターンですね。心情に寄り添った語り口なら、実際の結果(勝ち負けとか)を描かなくたっていいぐらいです。それは全て「何を一番描きたかったのか」という根本を問われます。

2011-02-03 20:38:16
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

このまま「結」まで行っちゃいますか。「結」で大事なのは印象にのこることです。「転」の最後でついた物語の決着の余韻を残しつつ、読者に主人公の印象をダメ押しする必要があります。

2011-02-03 20:47:08
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

世界の広がりを感じさせるか(旅立ち)何もかも終わったと見せつけるか(完全燃焼)やり方は色々ありますが、大切なのは主人公に読者に対する退場のあいさつをすることです。

2011-02-03 20:51:18
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

その振る舞い一つで、次またそのキャラ、あるいはその世界に会いたいと思わせるか、「すごいもん見ちゃった…」と呆然とさせるかは物語の語り口次第。ここはぜひ「絵」で語る方向で読者の心に刻み付けるつもりでやるべきです。

2011-02-03 20:53:52
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

今まで語ってきたノウハウは、私が考えたものではありません。今まで従事してきた作家さんや先輩諸氏、友人知人から学んできたものです。アシスタントを経験することのメリットに複数の作家の経験値を盗むというのがありまして、これは古臭いようで今でも有効な方法です。

2011-02-03 20:56:49
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

もし新人さんで悩んでいる方がいるなら、他の作家さんの下で学ぶという筋道も検討してみてはいかがでしょうか。編集者とやりあうだけでは得られないものが学べるかもしれません。作画ノウハウ」や仕事の段取りを学ぶというメリットも見逃せません。

2011-02-03 20:59:17
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

特に仕事の流れや段取りの部分は学んでおいたほうが後々自分の為になると思います。スケジュール管理も含めてこういった部分がよくわかっていないと商業ベースの仕事を始めたときに地獄を見ます。なかなかこういったノウハウを教えられる編集者さんの少なくなりましたのでなおさらです。

2011-02-03 21:04:39
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

以上、「起承転結編」終了です。フォロワーの皆様、TLを埋め尽くしてしまい失礼いたしました。

2011-02-03 21:06:24