欧州型の鉄道の上下分離とオープンアクセスは日本で可能か?

実際、要員やノウハウをうまく引き継ぐのは相当難しいんじゃないかと思ったり。
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きっかけはこの記事から

リンク Newsweek日本版 北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか? 北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか? 27 users 205
うえぽん @kaorurmpom

newsweekjapan.jp/kaya/2016/04/p… 「Ouigoと呼ばれる格安料金プラン」 ・発着駅は都心にない(大井や鳥飼のようなもの) ・払戻不可、変更手数料バカ高 ・30分前チェックイン締切 ・本数極小、曜日で時刻がバラバラ ・手荷物有料、席番指定有料 要はLCCそのもの

2016-04-12 23:05:36

ここから本論

うえぽん @kaorurmpom

経済誌あたりでコンサルなんかが新幹線を批判しつつドイツやフランスやイギリスあたりの極端な割引を称賛してる件、何故新幹線でそうした割引が無いのかまで踏み込んで書いてるのは、まず見かけない。鉄道趣味界隈ではかいじきっぷや2枚きっぷやSきっぷあたりを引き合いに政策論が出たりするが。

2016-04-14 19:06:09
うえぽん @kaorurmpom

鉄道でLCC的な極端な割引を実現するには、上下分離とオープンアクセスが必須なのだろうと考えている。線路や駅等のインフラ部にかかる費用を鉄道事業者から切り離し、列車運転や車両整備やきっぷ発売に直接かかる費用のみに軽減させる。つまり、航空やバスのあり方にする。

2016-04-14 19:06:36
うえぽん @kaorurmpom

この上下分離によって、既存の鉄道事業者がより自由に動けるようになると同時に業界外からの新規参入も容易になる(であろう)というオープンアクセスが可能になって、それでLCC的な大割引を設定する余地が初めて生まれる。

2016-04-14 19:06:45
うえぽん @kaorurmpom

現状の鉄道システムのあり方では、鉄道としての競争が少なく(対航空やバスは大いにあるが)、LCC的な割引を設定するメリットがほとんど無い。

2016-04-14 19:06:54
うえぽん @kaorurmpom

これが欧州各国の鉄道改革の大雑把な枠組みであるが、日本でこれからこのような変革が起こせるかと言えば、非常に難しいと感じていて。ひとつは、上下分離したときに「下」を所有し維持管理するのは誰かということ。

2016-04-14 19:07:06
うえぽん @kaorurmpom

上下分離したところで「下」の維持管理コストは基本的に変わらないのだから、コストを「上」に全額負担させたら「上」の経費は今まで通りであって、上下分離する意味が無い。とすれば、コンサルあたりが批判する北海道新幹線の使用料のように、負担できる額までダンピングするしかない。

2016-04-14 19:07:14
うえぽん @kaorurmpom

「下」への使用料をダンピングさせれば、何らかの形で穴埋めするしかないが、「下」が別の事業で儲けない限り、穴埋めは税金でやるしかない。空港や高速道路と同じ考え方。この点、欧州の割引きっぷを称賛し新幹線を批判するコンサルは、多分すっかり無視している。

2016-04-14 19:07:23
うえぽん @kaorurmpom

もう一つはオープンアクセスが制度上可能になっても、既存鉄道事業者以外の誰がどうやって参入するのかということ。資金は調達できるだろう。車両の購入も可能だろう。でも、運営するヒトをどうやって確保するのだ?と。

2016-04-14 19:07:32
うえぽん @kaorurmpom

現状、鉄道の現場を任せられるヒトは鉄道事業者にしか居ない。養成には金がかかるがそれ以上に時間がかかる点が重要。運転士など現在は鉄道事業者に所属していないと免許すら取れないが、その規制を撤廃したところで養成ノウハウは既存の鉄道事業者しか持っていない。他の職種も概ね同様。

2016-04-14 19:07:56
うえぽん @kaorurmpom

となれば、新規事業者が参入するには、既存鉄道事業者からヒトをレンタルするしかないが、競争相手なんだからタダや割安でレンタルできる訳がない。レンタル料も税金で面倒見る手もあるが、オープンアクセスの意義からすれば本末転倒。どこかの既存鉄道事業者が撤退してヒトが大量にあぶれれば別だが。

2016-04-14 19:08:05
うえぽん @kaorurmpom

この辺、欧州がどうやってるのか詳しく知りたいところなのだが、交通関連の論文を漁ってもなかなか見つからないんだよね。経済誌のちょっとした記事でここまで追えと言う気は無いが、他国の全く異なる制度を引き合いに出して新幹線を批判した気になってるコンサルあたりはどうなのかな、と思うのです。

2016-04-14 19:08:16

反響などなど

秩父路号🇬🇧 @chichibugou

先日うえぽん様(@kaorurmpom)が経済紙に取り上げられない鉄道機関の上下分離とオープンアクセスについて一連のツイートをされていましたが、その中で「日本がオープンアクセス制度にしたら直面する問題」に触れていました。

2016-04-23 19:46:04
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

その一つとして鉄道事業者が新規参入する場合鉄道現場のノウハウを持った人材が既存の鉄道会社にいて不足すると述べていました。今回はそれに関するイギリス鉄道業界でのエピソードを一つ紹介したいと思います。

2016-04-23 19:46:18
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

1947年に創立された英国鉄は当時の保守党政府によって分割民営化が可決され、1994年4月にそれが決行された。列車運行事業は(当時)25社、貨物運行は6社に分担、車両保有会社が3社が新設、線路や駅などのインフラはレールトラック(Railtrack)が保有・整備を担当することに。

2016-04-23 19:48:07
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

しかし民営化による事業再編に際してイギリス国鉄で保線のノウハウを持った人材が線路保守を外注していた民営会社に流出し、レールトラック側には適切な人材が残らなかった。結果として保守管理はざるになり、十分な記録が残されず保有資産もまともに把握できていない状況が続く。

2016-04-23 19:49:00
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

このような状態で列車は安全な運行ができるわけがなく、ツケは2000年10月17日のハットフィールド脱線事故で回ってきた。同日ロンドンからリーズへ向かうIC225の特急電車がハットフィールド駅付近の下り本線を185km/hで通過中にレールが破断し脱線、結果は死者4人負傷者70人。

2016-04-23 19:49:29
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

原因は転動疲労による線路の破損だったが保守管理がまともであればとっくに交換されている予定の箇所だった。この事故の影響は尋常ではなく、同類のレール破損が全国中のレールで発見される。たちまち多くの路線に非常速度制限がかけられ、一年間かけて緊急保線工事を行った結果レールトラックは散財。

2016-04-23 19:50:00
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

これが原因で同社は数年後解体され資産はネットワーク・レイル(Network Rail)が引き継ぎ実的な鉄道資産の再国有化となった。 上下分離を日本ですべきかの議論は別問題なのでここでは触れないが、イギリスでは適切なノウハウを持った人材不足が事故を引き起こしたという話です。

2016-04-23 19:51:55
秩父路号🇬🇧 @chichibugou

英新聞紙テレグラフから引用しますが事故当時のハットフィールドの様子。IC225は画像手前方向に走っていましたが、中間客車の通過時にレールが破損して大きく脱線しました。 pic.twitter.com/lvfffFQr04

2016-04-23 19:54:38
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Chippy Trains @chippy_trains

補足させていただきますが、この件は クリスチャン・ウルマー,坂本憲一訳,(2002)『折れたレール イギリス国鉄民営化の失敗』ウェッジ に詳しく述べられていますので、関心のある方は参考になさってください。

2016-04-23 20:08:53