- tasobussharima1
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「……一時間待つでおじゃる。この少年を、麿の前へ連れて来るでおじゃる」 集落の長の前で、『マロ』はそう告げた。 「あの、『マロ』さんは話を聞きたい、と……」 ヤオがそう付け加えるも、長は平伏することしか出来ないでいる。 長は知っているのだ。彼が今の生活の生命線を握ることを。
2016-04-23 21:04:04一時間もせぬ内に、少年は『マロ』の前へと引き出された。引き出された、というのは両脇を屈強な男たちに固められているのだ。恐らく、無理矢理連れだされたのであろう。その様子を、『マロ』は笑顔で眺めている。 「……てっきり、逃げると思ったでおじゃるが」 『マロ』は少年へ微笑みかける。
2016-04-23 21:08:03「長は知っているのだ。彼が今の生活の生命線を握ることを」 これもまだ認識が甘いんだよなぁ。マロ氏だけが生命線を握ってるわけじゃない。向こう岸のもっとやっかいな奴らとマロ氏が取引をしてるんだ。取引を妨害したのをマロ氏が許しても、相手は許さないかもしれない #徳パンク
2016-04-23 21:08:08引き出される罪人を上から笑顔で見下ろす平安貴族の図。マロ氏も決して楽しくて笑っているわけではないんだろうけど強烈な図だ #徳パンク
2016-04-23 21:11:24「少し、話をきかせて欲しいだけでおじゃる」 その笑顔を見たヤオの背筋に、得体の知れない不安が走る。押さえられた少年は、唇を噛んだまま『マロ』を睨みつけている。 「悪いことをした、とは思っていないようでおじゃるなぁ……」 ぐるん、と首を回し、『マロ』の笑顔がヤオの方へと向けられた。
2016-04-23 21:12:07ここに引き出されてなおその反応か……ただ誰かにそそのかされてやったというよりはもっと根が深そうだけど #徳パンク
2016-04-23 21:15:23「ひっ」 ヤオの口から、思わず小さな悲鳴が漏れる。 「少し、席を外していて欲しいでおじゃる。長殿も」 「う、はい……」 何時もと様子の違う『マロ』に気圧され、ヤオはすごすごと従った。 「宜しいのですか、この者が危害を……」 「構わんでおじゃる」 危惧する長を押し留める『マロ』。
2016-04-23 21:16:04「それでは、私達は外に居りますので……何かあれば、呼んでくだされ」 ヤオと長、少年を取り押さえていた男達残されたのは、『マロ』と少年の二人だけ。 「さて……麿も、別に取って食おうと思ってはおじゃらん」 表情を緩め、座布団を寄せて少年との距離を詰める『マロ』。
2016-04-23 21:20:02「ただ、どうしてこんなことをしたのか、知りたいだけでおじゃる」 少年は変わらず彼を睨み続けているが、『マロ』の見立てでは、微かに戸惑いが見え隠れしている。恐らくは皆の前で詰られ、裁かれることを予想していたのだろう。 「正直に言うならば、何もしないよう長殿にも言い含めるでおじゃる」
2016-04-23 21:24:02相手の予想と異なる待遇を用意し、揺さぶりをかける。これは古典的な尋問の手法だ。その手の手管ならば、『マロ』は幾らでも心得ている。 だが、少年は答えようとはしない。『マロ』はただ、待ち続ける。 「……どうして、あんたは」 数分後、震える声で少年の口から漏れるのは、そんな疑問だった。
2016-04-23 21:28:02「はて……麿が何かしたでおじゃるか?」 得体の知れない平安貴族と二人きり、という非日常の重圧(ストレス)は、それだけで少年の心に確かな負荷を与える筈だ。後は、得体の知れない者を演じながら、少年の意志が挫けるのをただ見守ればいい。だが。 「……あんたは、海の向こうの奴等と取引した」
2016-04-23 21:33:41