【神は空名なれど…④】日本人が宗教的に寛容だというのは誤り/~日本教が徹底的に排除したカトリックの教義「神の言葉が肉となる」インカーネーション(化肉・受肉)とは~

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/神は空名なれど…/インカーネーション/65頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【インカーネーション】ここまでお読みくだされば、日本語に「インカーネーション」という言葉がない事は、むしろ当然と思われるでしょう。 日本は西欧と接触して一世紀になり、西欧の多くの言葉は、あるいは翻訳され、あるいは原語のままで、既に日本に定着しております。<『日本教について』

2016-04-23 12:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

②少し前まで、日本の医師は、ドイツ語の単語に日本語の動詞をつけた非常に面白い言葉を使っておりました。 そして現代の著名な評論家の文章を読みますと、西欧の言葉の原語あるいはその訳語を使って、この医師たちと同じように語っている人びとが実に多いのに気づきます。

2016-04-23 12:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

③これを見ますと、一見、圧倒的に西欧の影響をうけているように見えますが、さらによく見ますと、日本人が絶対に排除している言葉があるのに気づきます。 同じ事は、日本が中国の影響をうけた時にもいえる事で、中国の言葉(思想)のうち、日本人は何かを絶対にうけつけなかったはずです。

2016-04-23 13:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

④この方の事は既に多くの人々が研究しております。 何かを排除するという事は、それと絶対に相いれぬ宗教もしくは宗教的思想があるわけで、従って、排除されたものを探究していけば、逆に、日本教が浮き彫りにされてくる筈です。 「インカーネーション」は、この点で非常に興味ある言葉です。

2016-04-23 13:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤日本の英和辞典はこの語を「化肉、受肉、顕現、権化」と訳していますが、後の二つの言葉(顕現、権化)は誤訳といえないまでも、適訳ではありません。 すると「化肉」「受肉」の二つになるわけですが、驚いたことに日本語の辞典(漢和辞典)には「化肉」も「受肉」もありません。

2016-04-23 14:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥ためしに日本人に 「化肉とか受肉とかいう日本語を御存知ですか」 と聞いてごらんなさい。 おそらくだれも知らないでしょう。 もちろんキリスト教徒は知っているはずですが、知っているといってもそれはただそういう言葉がキリスト教の教義にあることを知っているだけでしょう。

2016-04-23 14:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦もちろん、一般社会では、この言葉は全く根づいておらず、通用もしておらず、こういう言葉(=思想)があることすら知られておりません。 これは当然であって、「言葉が化して肉となる」とか「言葉が肉を受ける」とかいった考え方は、日本教とは全く相いれないからです。

2016-04-23 15:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧人間は「支点」であって、言葉の範囲外にあるのですから、言葉を受けるのはどちら側かの天秤皿であって、人間ではありません。 従ってキリスト教徒とは分銅に十字の刻印がある人、ということになるでしょう(そしてこれが限度でしょう)。 goo.gl/zW3Buq

2016-04-23 15:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨だがこのことが、今度は逆に西欧の宣教師に理解できません。 そのため、小さなトラブルがよく起るわけで、その際の議論はまるで「禅問答」のように奇妙です。 私がある神父さんから聞いた一例をお話しして、この手紙は終りましょう。

2016-04-23 16:09:11
山本七平bot @yamamoto7hei

①…彼が日本にいた頃、ある席で若い日本人カトリック教徒が非常に謙虚な態度で 「私は6日間ただ忙しく働いており、7日日に教会に来て初めて信徒であると自覚するような信仰の浅い者ですから、こういう席で何かを発言する資格があるとは思いませんが…」 と言ったので、彼は思わず大声で(続

2016-04-23 16:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

②続>「今の言葉は主に対する裏切りの言葉」と言ってしまったそうです。 ところが言われた本人も周囲の日本人も、この神父の発言にむしろ怒りを感じたらしく「…謙虚に告白しているのがなぜ裏切りですか」と抗議されたので、また思わず「これ以上、傲慢な言葉はない」と言ってしまったそうです。

2016-04-23 17:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

③やがて彼は故国に戻った…のですが、恐らく日本の信徒達に日本で伝道をする資格なしと認定された事も一因だったのでしょう。 彼がつい大声を出したのは、勿論、一見、外交辞令にすぎないこの日本人カトリック教徒の言葉が、実は、非常に明白な「言葉への拒否」である事を知ったからです。

2016-04-23 17:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

④申すまでもなく、カトリックは「神の言葉を受けた肉」を信徒と考えるわけで(逆にいえば、その言葉が肉をまとっているのが信徒)その言葉は普遍の真理であるから、まとう肉体が白であれ黒であれ黄であれ、すべて普遍的な信徒である、という立場をとるわけですから、(続

2016-04-23 18:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤続>前述の日本人カトリック教徒の言葉は、この教義への恐るべき挑戦と受けとられ、カトリック教徒といいながらこういう挑戦をする事は裏切りであり、同時にこれにまさる倣慢はない、と言った訳です。 だが、誰一人この神父の言葉を理解しなかった訳です。 無理もありません。

2016-04-23 18:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥…日本人カトリック教徒が言った言葉は 【私の『空体語=分銅』は…平生は私(人間=支点)がぐっと実体語の方に寄っているので『空体語=カトリックの教義=分銅』は非常に小さく、あるかなしかの状態でバランスをとっております。】 pic.twitter.com/qriocVa7n4

2016-04-23 20:22:40
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【しかし日曜日には私(人間=支点)がぐっとカトリックの教義(空体語=分銅)の方へ寄るので、その際だけ分銅の方を大きくしてバランスをとっている人間です。こういう状態では『純粋』でありませんから発言の資格はないと思いますが…】 pic.twitter.com/d93dXjq8xv

2016-04-23 20:23:45
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑧という意味であって、彼はあくまでも言葉を分銅として天秤皿にうけ、支点を移動させるのが当然の事と考えていたのです。 一方神父は、カトリック教徒という以上、その言葉をまとった肉なのだから、職場にいようと教会にいようとカトリック教徒であって、それ以外のものでありうる筈がなく、(続

2016-04-23 20:24:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨続>以上のような言葉が出てくること自体、裏切りとしか言いようがなかったわけです。 しかし、前述のような言葉を口にする日本人は、非常に立派な日本教徒であることはどの日本人も異論がないことなので、周囲の日本人は怒りを感じたわけです。

2016-04-23 20:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩以上で「空体語」とは何かが、おわかりいただけたと思います。 「神は空名であるが、名があるからその『理(リーズン)』がある、従ってその『応(レスポンス)』もないといってはならない」 は、そのまま「空体語」の定義になります。 同時にこれは、日本教の教義の第二条にもなります。

2016-04-23 21:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪日本人が宗教的に寛容だというのは誤りです。 確かに分銅の刻印はあまり問題にしません。 しかし、この第二条を認めないもの(それは天秤を認めないものですが)は、徹底的に排除してしまいます。 pic.twitter.com/jG19zgCB3P

2016-04-23 21:41:38
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑫しかもその時は、「非日本教徒」として排除されるのでなく、「非人間的」として、すなわち人間でないものとして排除されるのです。

2016-04-23 22:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬そしてその排除は実に徹底しておりますが、一方、日本教の教義に従い「天秤の論理」で純粋と認められた者は、最も卑劣な殺人者さえ、裁判所すら、無罪に等しい判決を下さざるを得なくなるのです。 次回はその裁判についてお話しいたしましょう。 pic.twitter.com/8kIhroVwHW

2016-04-23 22:42:42
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