【五・一五事件と純粋人間④】「人間の純度」に基づく徹底した差別(流動的アパルトヘイト)の国・日本/~日本社会に「法の前に平等」は存在しない~

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/五・一五事件と純粋人間/人類史上もっとも卑劣な事件/三十五万通の減刑嘆願書/82頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①以上のように書いてまいりますと「やめてくれ、もう全く何が何やらわからない」といわれるかも知れませんが、そういわれる前に、まず日本教の「食物規定」を思い起して頂きたいと思います。それからまた日本の新聞…の一貫した主張「まず日本教徒であれ」を思い起し、同時に天秤を思い起して下さい。

2016-04-25 21:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

②さらに、第一便で申し上げましたように、日本は「教理」に基づく「条理」の国で、論理としての言葉も、論理の帰結の延長としての行動もない国ですから、今まで私がのべて来たことは全て「教義(を否定しこれ)に従わないための理屈」として一蹴されると思ってください。

2016-04-25 22:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

③私がのべて来ましたような考え方を受け入れたならば、戦前戦後を問わず、日本のすべての秩序は崩壊してしまいますから、そういう考え方は「非人間的」としてすべて排除されるのです。

2016-04-25 22:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

④五・一五事件の検察官の論告は、後で紹介しますが、まるで弁護士の弁論のようでしたが、それでも一応は法の論理にのっとっていたため、「非人間的」といった意味の非難をあびているのです。 何と不思議なことでしょう。

2016-04-25 23:09:22
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤この不思議は、結局は、日本人はその「食物規定」同様に、実に強固な思考の型にはめ込まれて、それ以外の考え方はできないからです。 …それが全くできないが故に「自由」に考えていると信じ込んでいる訳で、自分達には「食物規定」はなく、何でも自由に食べていると信じ込んでいると同じです。

2016-04-25 23:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥日本人は、自らの教義が存在するという自覚さえ持ち得ないまでに、その教義が徹底的に浸透している民族なのです。 従って法の前に教義があります。

2016-04-26 08:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦裁判がどんな形式で行なわれようと、裁判官は「裁判官である前に人間(日本教徒)であれ」であり、検事も、弁護人も被告も一般大衆もすべてそうですから、まず、日本教の教義の「人間規定」が優先するのは当然です。

2016-04-26 08:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そこでまず教義の第二条 「人間の価値は支点の位置によってきまる」 が取り上げられ、被告の支点の位置はどこか、すなわちその「純粋度」をどれだけと認定すべきか、24金か、18金か、14金か、が決定的な問題となるのです。 pic.twitter.com/yL3uQl6DKv

2016-04-26 10:58:53
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑨これは一種の人定尋間といえましょう。 この純度が決定した後に、はじめて法が適用されるわけですから、 「人間は法の前に平等で、その行為のみが裁かれる」 などということはありうるはずがなく、(続

2016-04-26 10:59:25
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩続>従って、法的には天皇への反逆だから、その「反逆」という行為のみが裁かるべきだなどという主張は、全く、教義に従わないための屁理屈になってしまうのです。

2016-04-26 10:59:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪それ故、私は、日本は、徹底した差別の国だと思っております。 ただその差別は、必ずしも皮膚の色とか人種・民族によるのでなく、日本教の教義に基づく「人間の純度」という不思議な尺度に基づく差別なのです。 pic.twitter.com/MJ8Y2mErLD

2016-04-26 11:00:57
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑫ただこの差別は、「純度」の認定によって絶えず変化しますから「人間の純度による流動的アパルトヘイト(アパルトヘイトとは南アフリカにおける白人の黒人への隔離の徹底的差別)の国」と規定してよいと思います。 pic.twitter.com/Fz60vBW5Ae

2016-04-26 11:16:17
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑬従って日本の裁判は、ある国のある時代の南部の裁判に似て、純度が高いと認定された者は最も卑劣な殺人を犯しても、天皇に反逆しても、実質的には無罪になると考えてよいと思います。

2016-04-26 11:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭それゆえこの「純粋人」(いわば一種の白人)と認定された被告に対しては、その行為がどれだけ卑劣であろうと、35万通もの減刑嘆願書が寄せられるわけです。 この点はもちろん戦後も変りません。 変ったのはただ「純度表」の表現だけです。

2016-04-26 12:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮以上のように考えれば、この五・一五事件の裁判において検察官が何をいい、弁護側がどのような論陣をはり、どういう判決がなされ、実質的にはどれだけの刑に服したかは、あなたも想像がつくのではないでしょうか。

2016-04-26 12:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯「この事件と、最近の日本の宗教団体で起った事件における弁護的な論述とを対比して、「食物規定」と同様に強固な日本教の教義の一面を解明してみたいと思います。 それが終りましたら、この五・一五事件の前後の新聞論調をも紹介して、日本独特の「天秤体制」へと進んで行きたいと思います。

2016-04-26 13:09:15