集団的自衛権の基礎の基礎―平和を考えるすべての人へ―

集団的自衛権の基礎中の基礎を解説します。右も左も保守もリベラルもない、すべての人に共有可能な議論です。これを理解しないうちに、集団的自衛権は語れないと思います。どうして国際社会で集団的自衛権は必要と考えられてるのか。日本の常識と世界の常識のずれとは?日本の未来のために、読んでほしいです。
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連続ツイートのイメージ

平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

連続ツイートのイメージをまとめてみた。(やっと納得いくものができたぞ…) pic.twitter.com/dRlekzJdAj

2016-05-04 15:13:50
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内容

平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

こんばんは。平和たんによる連続ツイートの第4弾です。 今回のタイトルはこれです。 集団的自衛権とは?―功利主義の制度設計と運用―

2016-05-02 21:40:02
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

内容に入る前に、本連続ツイートが踏み込む範囲を説明します。この連続ツイートは「平和安全法制」に言及していますが、その評価に踏み込むものではありません。平和安全法制の一部に関する評価の前提となる集団的自衛権とは何か、その基礎と問題点を明らかにすることが目的です。

2016-05-02 21:40:58
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

また、私のツイートは集団的自衛権そのものに限定されるもので、基地の負担や日米同盟などの重要な論点に踏み込むものではありません。これらの具体的事象への応用にあたって、ここで考察する基礎理論は修正されるべきものとは重々承知しています。

2016-05-02 21:41:53
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

ー目次ー 1. 集団的自衛権の法律学的基礎 2. 集団的自衛権の哲学的基礎 3. 国連憲章における集団的自衛権・濫用防止の制度 4. 集団的自衛権の性格と幸福・不幸 5. 集団的自衛権と世界平和 6. 集団的自衛権と日本の平和 7. まとめ

2016-05-02 21:44:53

(1)集団的自衛権の法律学的基礎

集団的自衛権は法律的にどう説明できるのだろうか。どうして、そんな権利がそもそもあるんだろう?

平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

1. 集団的自衛権の法律学的基礎 さて、最初にお聞きします。あなたは無抵抗な人がナイフを持っただれかに目の前で襲われていたら、助けますか?実行するかどうかは別にして、多くの人は「助けたい」と思うし、「助けてはならない」というのはおかしい、ほぼ全員が思うよね。

2016-05-02 21:45:35
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

もし助けるなら、法律的にいうと正当防衛権を使うことになるよ。正当防衛権とは自己又は他人に対する急迫不正の侵害を除去するための権利だ。英語でいうとright of self-defence。そもそもなんでこんな権利が認められるんだろう。これは国内社会の成立ちから説明する必要がある。

2016-05-02 21:46:51
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

そもそも国家がない状態では、社会の構成員である個人が法の担い手になる。不正な権利侵害を起こす人間は社会に必ず存在するので、法は不正な権利侵害を起こさせない、あるいは権利侵害を回復する権利=自力救済の権利を個人に与えた。ここでの権利侵害は自分のものでも他人のものでもいいとされる。

2016-05-02 21:47:52
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

権利侵害というのは、盗難や傷害などが想定されてる。これを踏まえると、自力救済の権利の機能は、不正な権利侵害を回復すること、不正を防止する抑止力になること、の2点だ。抑止力になるのは、不正な権利侵害を行ったら、自力救済をされるかも…それならやめておこう、と人々に思わせられるからだ。

2016-05-02 21:48:32
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

でも、何が「不正な権利侵害」なのかは個人の主観にゆだねざるをえない。そうすると、力あるいは影響力の強い者が「これは不当だ」「不当でない」といえばそれで物事が動く、つまり権利濫用がまかり通るかもしれない。これを防止するには客観的な判断者となる上位機関としての国家を作る必要があった。

2016-05-02 21:49:27
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

これを社会契約論という。今の法律学・政治学の正統理論ともいわれるこの考え方は、国家は国民との契約上各人の安全を守り、不正を許さない義務を負うと考える。国家が安全と不正防止・除去の保証をすることで初めて、各人は自分の安全を守り、社会から不正を除去する権利・義務から解放されるよ。

2016-05-02 21:50:16
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

ただし、国家の機能にも限界がある。一刻を争う事態に警察を呼んでいては間に合わない場合なんてざらにあるよ。自力救済の権利を個人からすべて奪い去るのではなく、一部を残したんだ。正当防衛権という形でね。図にするとこんな感じ。 pic.twitter.com/LjMyooJi5b

2016-05-02 21:51:17
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平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

これは、自力救済の濫用可能性を最小限度に抑えるための制度設計といえるね。基本的には権利の救済は国家が行って自力救済そのものを制限する一方で、警察などの国家の機能が及ばない範囲では、個人が自力救済を行う。仮に正当防衛権の行使であっても濫用が起きた場合は、国家がそれを処罰する。

2016-05-02 21:51:56
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

他方で、正当防衛権は犯罪の抑止力の側面もある。警察+個人の正当防衛権+刑罰が抑止力にあたる。もちろん、警察や刑罰のほうが国内社会では意味は大きいけど、正当防衛権も一応抑止力をもってることに変わりはないよ。法律上相手が反撃できないと分かってたら、犯罪をしやすくなるからね。

2016-05-02 21:52:31
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

このように、「不正を行う人間の存在を前提として」いかにその不正を抑止し、もし不正が行われても救済を図れる制度を構築するかが、社会の平和・安全維持の制度設計にとって最大の課題となるんだ。国内社会での制度は、上位機関としての国家であり、警察であり、刑罰であり、正当防衛権なんだ。

2016-05-02 21:53:13

これまでは国内社会の成り立ちと自力救済の権利について説明したよ。国際社会ではどうなってるんだろうね?

平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

国際社会はどうだろう。国際社会は国を構成員とする社会だけど、構成員の安全と不正除去を保証する上位機関はない。だから、自力救済の権利を国家は保有し続け、各国が自らを守り、不正を除去できる。国内社会で正当防衛が認められるなら、国際社会では余計に認められてしかるべき、ということになる。

2016-05-02 21:54:02
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

国家の正当防衛権を、日本では自衛権というよ。英語では両方self-defenceという。自国又は他国に対する急迫不正の侵害を取り除くための権利だ。守る対象が自国の場合は個別的自衛権、他国の場合は集団的自衛権という。以上のように、自衛権は法理論上、当然に国家に認められる権利なんだ。

2016-05-02 21:54:54
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

それと、国内と同じように国際社会でも国際法違反に対する抑止力となる制度が必要になるね。国内社会では警察+正当防衛権+刑罰だ。国際社会では…安保理が警察と同じくらい機能してるとはいいがたいし、国家への刑罰は存在しない。すると、正当防衛権たる自衛権の抑止力としての重要性が高まる。

2016-05-02 21:55:54
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

つまり、上位機関の不在は、社会秩序を維持する抑止力の制度の多くを自衛権が担っていることを意味する。自衛権による抑止力が現在の平和を支える一つの要素だ、という人もいるね。図にするとこんな感じ。 pic.twitter.com/liIWrW4CtG

2016-05-02 21:57:11
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平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

このように考えると、自衛権の機能の半分は抑止力の制度としてのもので、半分は実際にことが起きたときに不正を除去するという運用段階における行動の正当化、にあると考えられる。制度設計の段階と、制度の運用=具体的な行動の場面は、峻別して考えなければならない。

2016-05-02 21:58:48
平和たん【手動休止中】 @heiwa_tan

ただし、社会秩序維持の観点からすると、自衛権が抑止力として機能していて使う状況が来なければその方がいいんだ。自衛権が「使わないための権利」といわれるのはこのためだ。自衛権の抑止力の制度としての側面は過小評価されるべきものではないし、国際社会の成り立ちからいって不可欠の要素となる。

2016-05-02 21:59:57
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