(๑╹◡╹๑)氏によるオーストラリアの潜水艦競札のDCNS社受注に関する感想

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Y Makino @Usekm

今回のオーストラリアの潜水艦競札、元はといえば日本一本で、しかも12隻の製造は日本で行う前提で話をしていた(国営造船所で製造された現役のコリンズ級の出来がひどい為)ところを首相交代で方針が変わったためひっくり返された、という見方が豪国内でもあるようだ。

2016-04-26 21:39:47
Y Makino @Usekm

今回の入札に関して印象的だったのは、最終的な発表が行われた場所。ターンブル豪首相はキャンベラからかなり離れたアデレードにある国営造船所にわざわざ出向いて今回の発表を行っていて、今回の決定は7月の豪州総選挙に備えた国内向けの布石であることが明確だった。

2016-04-26 21:45:48
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

潜水艦は大雑把に言って、(1)船体、(2)兵装システム、(3)ソナー・戦闘管制システム、(4)推進機関がそれぞれ重要な構成要素なのだけど、通常の艦船と違ってこれらの生産を分割して建造するというのは、実はあまり考慮されていない。

2016-04-26 21:50:06
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

DCNS社は、元々フランス共和国営企業で、現在も株式のほとんどを間接的に保有してる会社なんだけど、やはり間接的に株式を保有しているタレス社との関係が深い。また、共和国海軍は通常動力潜水艦を装備してないのだけど、スペインの旧イサル社(現ナバンティア)と共同でスコルペヌ級を開発してる

2016-04-26 21:55:08
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

スコルペヌ級は、輸出用通常動力潜水艦の常として、沿岸警備に主眼を置いた艦ではあるが、動力が通常動力のほかにAIPが選択できるという利点がある。ただ、艦の規模としてはオーストラリアのような外洋型潜水艦とは程遠く、オーストラリア向けには実績のない新規設計で挑む必要がある

2016-04-26 21:57:27
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

しかし、DCNSとナバンティアは、潜水艦の輸出実績はわりかしあって、パキスタンなどでのライセンス生産の経験がある。ペーパープランにしても、ある程度の分割した建造も可能なレベルでのインテグレーション能力があると判断されたのかもしれない

2016-04-26 21:58:51
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

一方で、歯牙にもかけられなかったといえば、独HDW。この会社についてはやや複雑なのだが、一般的にはドイツ造船として知られている会社。独立系企業ではなく、親会社は製鉄大手ティッセンクルップ社で、HDWのほかにティッセンクルップ・エレベーターのような機械製造会社などがある

2016-04-26 22:09:37
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ティッセンクルップ・エレベーターは、欧州市場では最大手のコネ(フィンランド)や、シンドラーに次いで大規模なメーカーで、KOBALCOが傘下にKOBELCO建機を持ってるようなイメージである。HDWは、ドイツの有力防衛関連企業で、かつてスウェーデンのコックムスを傘下におさめていた

2016-04-26 22:12:56
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

このコックムスという会社なのだけど、実は日本とも非常に強いつながりがある。コックムスの生産するゴドランド級潜水艦にはAIP機関(スターリングエンジン)が採用され、この機関は日本に技術供与されてそうりゅう型のAIP機関のベースになった。

2016-04-26 22:15:35
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

また、オーストラリアの現用主力潜水艦コリンズ級は、コックムスがスウェーデン海軍向けに建造したディーゼル潜水艦ヴェステルイェトランド級をベースに開発された輸出潜水艦。なので本来的には有利なはずな話なのだが、問屋はそうはおろさない

2016-04-26 22:18:26
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

コリンズ級のインテグレーションに不満を持ったオーストラリアは、本格的な外洋型AIP潜水艦を欲していたわけだけど、コックムスはHDWの傘下に入ってから本国スウェーデンの建造数減少で実質的に倒産。その影響でHDWの傘下を離れて、王国国営の防衛企業SAABの参加に入っている

2016-04-26 22:20:18
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

一方で、HDW社は輸出用の通常動力潜水艦ではDCNSをしのぎ(ロシアを除いては)最大級の企業でもある。ドイツ向けでは、AIP機関の中でも212型でPEM燃料電池型潜水艦を開発して、輸出用の214型を韓国をはじめとする各国に輸出・ライセンスしている。

2016-04-26 22:25:25
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

で、問題はオーストラリア次期外洋AIP潜水艦の機関なのだが、DCNSはMESMA(閉サイクルタービン機関)、HDWはPEM燃料電池機関、日本はスターリング機関とまったく異なる機関をベースにしているところにある。

2016-04-26 22:28:03
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

一方で、船体の方は日本は大型の外洋潜水艦に適した設計で、すでに実績があるのに対して、DCNSとHDWは実績もなければ設計自体これからというペーパープランでしかない。兵装システムでいうと、各国がそれぞれ自前の技術をもっているが・・・。

2016-04-26 22:30:34
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

オーストラリアとしては米国製システムの運用を希望していたのではないかと思う。兵装システムと密接に関係するのが、戦闘管理システム。ここが潜水艦のキモともいえる部分なのだけど、ここが多用なシステムに適合できるような設計になっているか、というのがコストに大きな影響を与える

2016-04-26 22:32:11
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

で、まぁオーストラリアの経済状況を考えると、オーストラリア経済というのは典型的なオランダ病的な構造を持っている。資源国であるので、通貨高という特性があるんで製造業の競争環境は悪い。重要が強い自動車なんかも国内生産の撤退が相次いでるしね

2016-04-26 22:51:18
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

資源輸出も、中国の需要減少を背景にあまり芳しくない状況にあるんだけど、だからといって通貨安になってるかというとそういうわけではなく、相対的な金利格差を背景に、投機資金の流入でそれほど下がっていない。通貨規模の小ささがあると、世界経済の低迷の影響をもろに受けやすいわけで

2016-04-26 22:53:22
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

財政的な支出面では、日本から買ってきた方が安上がりなところは確かなのだけど、雇用情勢を考えると雇用吸収力の大きい造船とか自動車に公的資金を投入する理由として、国内生産を優先する方が票を取りやすい。

2016-04-26 22:54:46
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

直接的には関係はないかもしれないけど、国内でいうとクィーンズランドニッケルの破綻は結構大きい政治問題になっている。もともと乱脈経営というのもあったけど、破綻で結構な雇用が失われていて、国費を投入するのに雇用改善には結びつかないなんて! って話にもなるわね

2016-04-26 22:56:13
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

シュフラン級攻撃原潜の原子力ギアードタービン機関を、閉サイクル機関に換装した上に、米国製の兵装や戦闘管制システム搭載するインテグレーション能力があれば本当にすごいと思うよ。予算内に収まれば、の話だけど

2016-04-30 20:15:49
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

潜水艦の建造には、建造を継続することで技術力を維持する必要があるけど、基本的に英仏は攻撃原潜と戦略原潜を交互に建造することで(それでも建造中断期間がある)、ドイツは輸出に力を入れることで維持してるけど、複数社に交互で建造させるなんてことをやってるのは日米くらいしかない

2016-04-30 20:21:13
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

米国はゼネラルダイナミックス社エレクトリックボート部門とハンチントン・インガルス・インダストリー社ニューポート・ニューズ部門で、日本は三菱重工神戸造船所と川崎重工神戸工場で建造

2016-04-30 20:25:20
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

現代の潜水艦はブロック工法が広範に用いられているので、バージニア級攻撃原潜だとニューポートニューズが機関ブロックと司令塔以外を生産して、両社の船台で交互に生産してるような感じ。川重と三菱も建造は同じ神戸で、湾を隔ててほぼ近くに建造拠点がある。

2016-04-30 20:40:54
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

各部分を日本で建造した上で、最終組み立てはオーストラリアで実施するという選択肢も、考えようによってはあったのではないかと思うのだけど、そこまでもっていくためのオーストラリア国内でのパートナー選びとか、作業比率の調整。搭載兵器のインテグレーションを行う余裕はなかったのでは、と

2016-04-30 20:43:18