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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
【スルー・ザ・ゴールデン・レーン】#2
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マッポー級大気汚染下、重金属酸性雨降り止まぬ灰色の電脳メガロシティ、ネオサイタマ。「秩序向上」「犯罪率の低下」「市民の誇り」などの規範的ネオンサインが、ヨロシサン製薬やオナタカミなどの支配的暗黒メガコーポ巨大カンバンの間で無機質に輝く。上空には無数の監視ドローンとツェッペリン群。
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暗黒の乱れ雲の中、冷たい月と黄金立方体が朧に浮かび、01の風が吹く。人々は互いの目を恐れ、声を潜め、サイバーサングラスIRC端末を覗いて没入し、不安感をフィルタする。無思考と無関心こそがこの時代の特効薬であり、ヨロシサンの合法ドリンク剤「タノシイ」の売れ行きは過去最高を記録した。
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剣吞なる暗黒屋台街や猥雑なるネオンスラムは、そこにあったトリイや武田信玄像やハカバもろとも破壊されていった。代れに新たな幹線道路や、カスミガセキ・ジグラットの小型版を思わせるピラミッド状建造物が築かれてゆく。政・官・民が高度に癒着を遂げた複合建築物のネットワークを整備するために。
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アマクダリ・セクトは、ネオサイタマを作り替えた。そこに暮らす人々を作り変えるために。いまや都市は冷たく凍りつこうとしていた。犯罪率は低下したが、大気汚染も重金属酸性雨も暗黒メガコーポの横暴も、何もかもが悪化し続けていた。人々は世界が狂っていると考える前に、自分の疑問を押し殺した。
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かくの如き漂白のサップーケイを、ひとつの恐るべき異物が駆け抜ける。秩序漢字サーチライトを巧みにかわして跳躍するそれは、赤黒いニンジャ装束に身を包み、深い憎悪と憤怒のオーラを纏っていた。アルゴスの無数の目がひしめくビル街を飛び渡るそれこそは、復讐の戦士、ニンジャスレイヤーであった。
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ニンジャスレイヤーは戦い続けていた。そして目標へと近づいていた。彼の鋭敏なるニンジャ聴力は、カネモチ・ディストリクトのブティック街から聞こえるハイデッカーの怒号、銃声、警報音を聞き逃しはしなかった。アマクダリ・アクシスの乗る高速輸送ヘリの忌々しいローター音も聞き逃しはしなかった。
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「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは赤黒い風と化し、凄まじい勢いでビル街を飛び渡る。淀んだ重金属のアトモスフィアを鋭角に切り裂きながら、彼のニンジャ視力は前方にある高級デパートの窓へと鮮烈にフォーカスする。足から血を流しながらスタッフルームへと逃げ込んできたスーツの男を、彼は見た。
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アルゴス打倒の鍵を握る男、エシオ・カタリが、アマクダリに追われているのだ。急がねば、ニンジャが彼を殺すだろう。ニンジャスレイヤーは疾走速度を増し、その一室に狙いを定めた。彼はビル壁面から突き出した抽象的なコケシガーゴイルへと鍵付きフックロープを投じ、跳躍した。「Wasshoi!」
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エシオはニンジャスレイヤーの接近に気づいていなかった。室内のUNIXに向かい、強化ガラス窓を左に、後方のドアに背を向けながら、高速タイプを行っていた。ニンジャスレイヤーは確かに見ていた。ドアが破られ、カタナを構えたアマクダリ・ニンジャが入室した。その瞬間、エシオは、消えたのだ。
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「消えた」ドアを破って侵入したブラッドチェイサーは、アルゴスにIRCを送っていた。ハイデッカー部隊が袋の鼠のエシオを取り逃がしたのは、これが初めてのことではなかった。「もしや、奴は…」ブラッドチェイサーは突飛な推論を述べようとした。だがアルゴスから下されたのは、撤退命令であった。
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次の瞬間、強化ガラス窓が、外側からの遠心力ロープアクションで突き破られた。ネオサイタマの死神が、室内へと回転着地を行ったのである。「イヤーッ!」着地と同時に、彼の右手は情け容赦ないカラテチョップを振り下ろしていた。だがその一撃はブラッドチェイサーの首を刎ねることなく、空を切った。
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ガラス窓が破られたその刹那、ブラッドチェイサーは廊下側に撤退すべく、目にも留まらぬ四連続側転を打っていたのである。「イヤーッ!」そしてハイデッカー部隊を盾とする。生体LAN端子を持つブラッドチェイサーは、アルゴスからの撤退命令IRCをニューロンの速度で理解し、回避行動を取るのだ。
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突入装備のハイデッカー部隊がシロウツリの死体を踏み越え迫る。銃弾とスリケンが乱れ飛ぶ。火花!火花!血飛沫!「イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」ニンジャスレイヤーの投擲したスリケンが、過たずハイデッカーらの急所に突き刺さった。敵は糸の切れた操り人形めいて倒れ、床を緑色の血で染めた。
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ニンジャスレイヤーはザンシンを行った。ハイデッカーを皆殺し、周囲のカメラも全てスリケンで潰してある。アマクダリニンジャは既に視界外へと消えた。増援ハイデッカーの接近音が聞こえる。ニンジャスレイヤーは一瞬の状況判断の後、踵を返し、エシオと思しき男が忽然と姿を消した室内を見渡した。
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果たしてエシオは如何にしてUNIXの前から消えたのか。あれは本当に物理肉体だったのか。あるいはホロ映像の類であったのか。UNIX画面は銃弾で大破し、そこに刻まれていたであろうIRCシステムメッセージは、もはや読み取れぬ。だが…キーボードの横に、ニンジャスレイヤーは何かを見出した。
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白い長方形のオブジェクト。それは見覚えのある一枚の名刺であった。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せ、それを読み、懐に収めた。やはり、エシオはここにいたのだ。死神は煙を吹くUNIXモニタと、床に垂れた赤い血の跡を、交互に睨んだ。そして割れ窓から跳躍し、再び夜の闇に消えた。「イヤーッ!」
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同刻。既にアクシス専用の高速輸送ヘリで上空へと逃れていたブラッドチェイサーは、適切な薬物注入を行って脳内物質バランスを整えていた。それでも己の額に滲んでくる、アクシス精鋭にはおよそ不似合いな脂汗を、彼は忌々しげに拭いながらIRCを打った。「アルゴス=サン、あのエシオという男は…」
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彼専用に充てがわれた高速輸送ヘリは、アルゴスによる自動ナビのもと、次なる作戦行動地点へとブラッドチェイサーを運んでゆく。「……本当に、ニンジャではないのか?」彼はアルゴスから送信された先ほどの室内監視カメラ映像を脳内UNIXで再生し、笑った。「ならば、ついに決定的瞬間を捉えたな」
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同刻。ネオサイタマ某所。地下数十メートルに埋められたソクシンブツ・オフィスのひとつに、エシオは出現した。直後、彼の背後にあるUNIXがアルゴスの攻撃を受け、爆発した。エシオは背中を押されるように、コード類の敷き詰められた床へと倒れた。スリケンにやられた足からは、出血が続いていた。
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ソクシンブツ・オフィスとは、ネオサイタマの暗黒メガコーポがしばしば自社の有能人材を外界から完全隔離して作業効率を向上させるために用いる、小型シェルター・コンテナ型の匿名孤立オフィスだ。数ヶ月あるいは数年分の食料等とともに地下深くに埋められ、業務目標を達成するまで掘り出されない。
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然してここは、ピグマリオン社が持つ、そのような秘匿領域のひとつであった。広さは8畳ほど。2台のUNIXデッキ、オイランドロイド、白いタンス。ここにあるのはそれだけだ。エシオは指輪をかざし、オイランドイロイドを目覚めさせた。彼女は快活な電子音声とともに起動し、裂傷の治療を開始した。
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エシオは胸元から社員手帳を取り出し、複雑な暗号樹形図めいた見開きページに、バツ印をいくつも書き足した。ページには「黄金の小径」と書かれていた。傷の手当てが終わると、エシオは手をかざして何事かチャントを呟き、旧型オイランドロイドを眠らせた。そして自分は無傷のUNIXの前に座った。
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エシオは、次なる近隣ポイントへと即座に飛ばねばならなかった。この場所のIPをアルゴスに抜かれたからだ。IPを抜かれ物理座標を抑えられれば、地球上のどこも安全とは言えない。彼はチャントを呟きながらタイプし、IRCにアクセスした。次の瞬間、彼の物理肉体は消え、コトダマ空間へと飛んだ。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2016年5月17日
スルー・ザ・ゴールデン・レーン #1 http://togetter.com/li/969132 スルー・ザ・ゴールデン・レーン #3 http://togetter.com/li/976432
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