チームで療育することの大切さ

ゲームが思い通り進まずにかんしゃくを起こしたお子さんへの対応です。療育は、指導者や親が一人でする場合が多いですが、チームで考えることでお子さんの成長のためにできることが増えます
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

今日の療育でまさにこうしたことを意識する機会がありました。「インカの黄金」というトルコ石や黒曜石やら金を集めるゲームがあるんですが、欲しかった金がもらえなくて「金欲しい」「金欲しい」ってずっと言っていたんです。しまいに爆発した。 twitter.com/dicegeist/stat…

2016-05-06 19:24:52
dicegeist @dicegeist

元々の凸凹や、環境・経験が積み重なって、不器用な甘え方・アピールの仕方以外の道を塞がれてきている子どもへの対応って、理念としてはとてもシンプルかもしれません。 不適切な行動は認めない、本人自身への肯定的な関わりを行う。 それだけ。

2016-05-06 14:34:08
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「金欲しい」って言ってるんだけど、私は「まだ金は取れていないよ」とだけ伝えてそれ以上取り合わないんです。それでもその子は「金欲しい」って言い続けて、しまいにバーンとカードを机に叩きつけて「もうやだ!」と席を立った。そして教室中に響く大音声で泣く。

2016-05-06 19:27:39
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

それでも私はその子に声をかけたりしない。その代わり別のスタッフさんに「彼の近くにいてあげてください。あと5分くらいでゲームが終わって得点計算に入るのでその時に再度参加を促してください」と伝えた。実はこのとき、泣き叫んでいる子は7人中3位で割と好成績だったんです。

2016-05-06 19:29:59
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

5分後(その間その子はずっと泣き叫んでた)に、初めて私が「得点計算を始めるので座ってください」と声をかけた。スタッフさんの促しもあって来るには来たんだけど、机から1mくらい離れて後ろ向きに座って、その上でさらに大きな声で泣く。私としては、それで充分と思う。

2016-05-06 19:33:48
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「1位は◯◯ちゃん、2位は◯◯くん、そして3位は◯◯くん(泣いてる子)でした!拍手~」と言って締める。後ろ向いて泣いたままだけど、3位だったということがその子に聴こえていれば良い。

2016-05-06 19:36:31
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この子はこの日初めて施設に来た子で、面談の終わったお母さんに泣きついてました。お母さんもまたか、という感じの顔でしたので以前にも同じようなことを繰り返しているのでしょう。お母さんに私が伝えたのは次のようなことです。

2016-05-06 19:39:15
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「自分の思い通りのプレイが出来なかったことに対しての悔しさもあるでしょうが、他方で『大声で泣けば周りが自分に合わせてくれる』という意識が身についてしまっているように感じました。この意識は集団参加、ひいては社会参加をする上でのハードルになります。」

2016-05-06 19:44:07
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「私が彼の思い通りにしてあげたとしたら、彼は『泣けば思い通りになる』という彼の意識をさらに強化してしまうことになるので、そうはしませんでした。他方で、別のスタッフさんに近くにいてもらい、彼の気持ちを受け止めてもらいました」

2016-05-06 19:45:25
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「こちらとしては彼に二つのメッセージを同時に伝えたことになります。『ルールを守りあって遊ぶゲームという場では、君の勝手な行動は認められないよ』ということと『それはそれとして君の悔しい気持ちは別の場所で受け入れるよ』ということです。」

2016-05-06 19:47:14
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「この施設ではルールを守り合う場も、それができないときその気持を受け止めてあげる場も用意できます。今日のような出来事はまた起こるでしょうが、こうした場であれば、誤った形で自分の存在をアピールしなくても充分に活躍できる、ということを学んでもらえると思います。」

2016-05-06 19:52:57
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

こうした説明によって親御さんには、今日のトラブルが失敗ではなくむしろスタートなのだということを理解してもらえましたし、お子さんはお子さんで(ずっと泣いてましたが)次回もゲームに参加してくれるのは間違いないと思っています。最後に「3位になった」という成功体験をしているからです。

2016-05-06 20:01:51
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「新たに通い初めた放デイの初日で、ゲーム中思い通り行かずに他の子たちの間で大かんしゃくを起こした」という出来事だけみれば失敗に見えるわけですが、なぜそうした行動が起きたのかそれにどう向き合ったのか、そのロジックがしっかりわかっていれば慌てる必要も落ち込む必要もないのです。

2016-05-06 20:05:53
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

その子は、初見のゲームで7人中3位を取れるだけの力はあるわけです。なのに、自信がないからゲームに取り組む以外の形で自分の要求を通そうとする。自分を過小評価している。だからこそゲームを通じて自己認識を変えることでゲーム以外の行動もポジティブな方向に大きく変化する可能性が高い。

2016-05-06 20:11:14
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この一連の対応について、指導者としては、お子さんに「ルールは守ってもらいます」「守れない君の気持ちを受け止めます」という相反するメッセージを同時に伝える、という発想ができるかどうかが重要なポイントです。

2016-05-06 20:37:53
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「療育は自分一人でやっているのではない、他のスタッフさんや他の利用児も含めたその場を構成する人間関係全体を使って療育をするんだ」という認識がないとこうした発想は出きません。今回のケースで言えば、私が他のスタッフさんに「私とは違う対応」を求めたことがそれに当たります。

2016-05-06 20:40:49
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

これも、毎回私が彼の言うことにとりあわず、毎回別のスタッフさんが話を聞いてあげるというのはあまりよろしくない。「松本先生は何も聞いてくれない。こっちの◯◯先生は聞いてくれる」と属人的な考え方になってしまうので。

2016-05-06 20:44:43
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

だから次回同じ状況があるとするなら、今度はスタッフさんが司会をして、私がじっくり話を聞いてあげる形にできると理想です。なぜ前回取り合ってくれなかった松本が今回はじっくり話を聞いてくれるのか。それはゲームという「社会」から離れた個人的な関係だからです。

2016-05-06 20:46:27
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

こうした経験を通じてお子さんには、「人があなたに見せる態度は人自体によって変わるんじゃない、その場ごとの相手との関係性、あるいは求められている役割というものによって変わってくるんだ」ということを知ってもらいたいのです。

2016-05-06 20:49:14
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「自分だけでない、その場にいる人間全体を使ってお子さんを療育していく」という考え方は、今私が講演会等で一番お伝えしたいと思っている部分です。下の「他のお子さんを動かす」というテクニックもその一つです。togetter.com/li/961078

2016-05-06 20:55:26
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この考え方は、発達障害に関する勉強をしているだけでは中々身につけにくい。どうしても「この子のこの問題にどう対応するか」という発想で書かれている知識がほとんどなので。そこから発展して、「”誰が”この子のこの問題に対応するか」という発想ができるようになると療育の幅が大きく拡がります。

2016-05-06 20:58:29
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「この子の問題行動にどう対処するか」と一人で考えていると発想が限定されます。今回のケースでいえば「泣いている子の言うとおりにしたら、泣く行動をさらに強化してしまうから無視しよう」と一応考えたとしても、「そんなら大声で泣き叫んでるこの子を放っておいていいのか」という所でつまづく。

2016-05-06 21:08:51
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

そこを突破するには他の人を動かす。たとえば家庭で母親が対応するなら、お子さんが泣こうが喚こうがガツンとルールを提示しておき、あとでお父さんが帰ってきてから慰めてもらう。休日で外出する際などは、その役割を逆転させて、お父さんがガツンと言ってお母さんが慰める。そういう根回しが重要。

2016-05-06 21:11:35
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

とはいえ、家庭には限界があるし、また学校も先生一人で多数の子どもを見るということがあるから限界がある。そこで複数人の大人と複数人の子どもがゴチャッといる放デイのような場が、人間関係を学べる大きな成長のきっかけになると思うのです。

2016-05-06 21:27:33