紫式部先輩の超筆力と行間を埋める日本文学の妄想力について。たらればさんのツイートまとめ

たらればさんのツイートをまとめました。
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たられば @tarareba722

また紫式部先輩の超筆力ツイートがRTされだしたので、ちょっとここ最近「古文解釈」について思っていることなどをつらつらと呟いてみます。

2016-05-11 13:33:03
たられば @tarareba722

①以前、「『源氏物語』では、光源氏が“空蝉にフラれて寂しいので、ま、こっちでいいか”って感じでその弟と関係を持っちゃったくらいだから、腐女子の皆さんは推し作品に多少不自然な関係描写があっても心を強く持ってほしい」と呟いたら、「源氏物語にそんな描写はない。ちゃんと読んだのか」と

2016-05-11 13:33:46
たられば @tarareba722

②言われることが何度かあって、うーん、いやまあ言いたいことは分かるんですが、ではそう言ってくる人は源氏物語の原文をしっかり読んだことがあるのかなぁ……と思っています。いや読んだならいいんですけども。ちなみに私の元ツイートはこちら。 twitter.com/tarareba722/st…

2016-05-11 13:34:29
たられば @tarareba722

腐女子の妄想について「この展開で男同士がヤッちゃうなんて無理がありすぎる」と思う人は、空蝉をモノに出来なくて悔しがった光源氏が「ま、こっちでいいか」っつってその弟とヤッちゃうことになる紫式部先輩の超筆力を思い出してほしい。

2015-05-31 15:58:12
たられば @tarareba722

③まず最初に、古典好きの間では常識のことを言っておくと、そもそも『源氏物語』に直接的な性描写はほとんどありません。現代的な基準でいう「エロ描写」と呼べるようなものは皆無といっていいでしょう。じゃあどうやって読者は光源氏が次々に姫君たちと関係を持ったのかを判断しているのかといえば、

2016-05-11 13:35:25
たられば @tarareba722

④前後の会話や着衣・格子の描写、従者の挙動、やり取りした和歌の内容、忍び込んでガンガン口説いてる光源氏のセリフがあったあとに、いきなり夜が明けたりするわけです。前置きが長くて「ヤっちゃうんだろうな、ああ、ヤルなこれ……」と引っ張りまくって、え、いまので終わり? みたいな感じ。

2016-05-11 13:36:05
たられば @tarareba722

⑤だからこそ与謝野晶子だとか谷崎潤一郎だとか、日本近代文学が誇るエロ文豪たちが「ようし我が輩の妄想力でその空隙を見事に埋めてごらんにいれよう」と張り切って源氏物語の訳出に挑戦してきたわけで、その「空隙」と妄想の余地こそが、『源氏物語』を千年語り継がれる物語にしているわけです。

2016-05-11 13:36:52
たられば @tarareba722

⑥例えば二十三帖「初音」には【正月に宮中の女房らが鏡餅を前にふざけて遊んでるのを光源氏が見かけ、夕方に紫の上へ「今朝みんなが鏡餠の祝詞を言い合っているのを見てうらやましかった。なのできみには私が祝いを言ってあげよう」と、少し戯れも混ぜて紫の上の幸福を祝った】という一節があります。

2016-05-11 13:38:32
たられば @tarareba722

⑦この描写を、真っ当な国文学研究者でも、「かつて正月にエロいことすると縁起がいい(姫始め)風習があった」「鏡餅って、陰部の隠語だよね(そうなの?)」「戯れも混ぜて祝ったって……そらもう……」と、妄想アクセル全開で解釈をするわけです。病気か。どういうことだよ日本文学。

2016-05-11 13:39:36
たられば @tarareba722

⑧話を本筋に戻します。確かに「小君(空蝉の弟)と光源氏が関係を持ったという直接的な描写」は『源氏物語』にはありません。しかしそれを言ったら紫の上とも花散里とも明石の上とも、直接的な病者……もとい描写はないのです。妄想が支える物語こそが、日本文学の真骨頂なのですから。

2016-05-11 13:40:15
たられば @tarareba722

⑨(私個人の考えでは、「帚木」の終盤から「空蝉」の中盤にかけての光源氏と小君との描写は、充分「あ、これヤってんな」と解釈するのに充分だと思いますけども。だってこれ光源氏が17歳の頃の話ですよ)

2016-05-11 13:40:36
たられば @tarareba722

⑩さておき、「解釈」に正解はありません。もしかしたら光源氏は非常にストイックな人物で(光源氏自身は作中何度か「自分は女遊びなんて出来ない真面目な人間だ」と言っています。ちょwおまw)、子供を作った姫以外とは毎晩添い寝してただけだと信じる読者だっているかもしれない。

2016-05-11 13:41:09
たられば @tarareba722

それが「その人にとっての『源氏物語』」なのですよね。読者それぞれが妄想の翼を思い切り広げ、他人の批評や解釈を「うん、そういう考えもあるよね」と認めることこそが、作品世界を豊かにし、長く愛されるものに育てるのだと、ほかならぬ『源氏物語』が教えてくれていると、私は思います。(了

2016-05-11 13:41:51