『War! What Is It Good For?』読書感想(セルフまとめ)

歴史学者イアン・モリスの『War! What Is It Good For?:The Role of Conflict in Progress of Civilisation from Primates to Robots(戦争!なんの役に立つのか?:霊長類の時代からロボットの時代に至るまで、文明における紛争の意義)』を読んでいるときの感想ツイートのセルフまとめ
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21世紀の道徳 @RiceDavit

War! What Is It Good For?: Conflict and the Progress of Civilization from Pri... amazon.com/dp/0374286000/… 一昨日から読み出して、いま三分の一くらい読んだところ。

2016-05-06 19:40:34
21世紀の道徳 @RiceDavit

イアン・モリスは『人類5万年 文明の興亡』を翻訳で読んだ時にはあまり印象残らなかったが(読書に集中できない時期に読んだというのもある)、『War!』はかなり面白い。『銃、病原菌、鉄』や『暴力の人類史』に近いが、それらより歴史本より。マクニールの『世界史』にも近い。

2016-05-06 19:43:11
21世紀の道徳 @RiceDavit

『War!』では、戦争が太古から人類に利益や善をもたらしてきた、と論じられている。ある政体が支配下の人々を統治することで社会が安定化して人々の寿命が伸びたり経済が発展したいるするのだが、戦争を通じて他の政体を吸収したり領土を拡大することで支配の量も質も増えて更に安定する、みたいな

2016-05-06 19:50:59
21世紀の道徳 @RiceDavit

戦争の功罪について、米国で大論争 business.nikkeibp.co.jp/article/report… この記事だと経済面についての主張が取り上げられているが、3章までの時点では、戦争(の結果としての政体とか社会とかの安定)が人々の間の暴力を減らして人類の寿命を延ばした、という議論の方が主に書かれてる

2016-05-06 19:54:49
21世紀の道徳 @RiceDavit

『War!』の感想に戻ると、1章では「人類は狩猟採集民の時代から暴力的か?」というおなじみのテーマが取り上げられるのだが、マーガレット・ミードやナポレオン・シャグノンの事例を細かく取り上げることで、文化人類学における見解やイデオロギーの変遷が上手にまとめられている。

2016-05-06 20:53:04
21世紀の道徳 @RiceDavit

イアン・モリスは、勝者が敗者を吸収することにより統治が安定・拡大して採集的には平和や経済が促進される「生産的(productive)」な戦争と、相手を壊滅させるだけで吸収を行わないのでマイナスしか生み出さない「非生産的」な戦争と、2種類の戦争があると論じている。

2016-05-06 20:57:03
21世紀の道徳 @RiceDavit

狩猟採集民の時代には「非生産的」な戦争しか行われなかったが、農業が誕生したことにより「生産的」な戦争も行われるようになって、それにより平和や経済が促進される地域が登場した…ということを古代ローマや中国などの事例を取り上げて論じているのが第二章。

2016-05-06 21:00:05
21世紀の道徳 @RiceDavit

やがてユーラシア大陸では遊牧民による戦争が行われるようになって、遊牧民の戦争は概ね「非生産的」だったのでユーラシア大陸では経済や平和の発展がしばらく停滞することになったが、同時期に、遊牧民の襲撃に悩まされない地域では「生産的」な戦争の結果平和や経済が発展しだした…というのが3章、

2016-05-06 21:03:14
21世紀の道徳 @RiceDavit

@RiceDavit 日本とかアメリカ大陸の事例が取り上げられている。

2016-05-06 21:03:34
21世紀の道徳 @RiceDavit

文化人類学の間にはマーガレット・ミードの『サモアの思春期』的な「狩猟採集民は平和を愛する」的な見解が普及していた時期があって、ミード的な見解が普及していた時期に出来た主張の一つとして「狩猟採集民は儀礼以上の戦争をしない」というものがある…という話題も1章で取り上げられていた。

2016-05-06 21:09:45
21世紀の道徳 @RiceDavit

『War!』では、1990年代からマーガレット・ミード的な狩猟採集民観の影響が減退し始めて、文化人類学者たちも狩猟採集民の間での暴力を改めて認識するようになった、と論じられている。

2016-05-06 21:17:28
21世紀の道徳 @RiceDavit

『War!』では「支配下の人々を統治することで暴力を抑制して平和や秩序をもたらし経済を発展させる政体」のことを指す普通名詞として「リヴァイアサン」という単語が使われている。戦争を通じてリヴァイアサンが地球を制覇するまでの歴史とか、ノマドとリヴァイアサンの戦いとか、格好いい言葉遣い

2016-05-06 21:26:00
21世紀の道徳 @RiceDavit

4章は、19世紀までの西洋諸国による植民地支配は(支配を確立するまでの段階では大量の現地人を殺害したとはいえ)支配下の国に秩序をもたらして暴力を低下させたし、大英帝国が世界の警察として機能していたこともあって、世界中の国々がそれまでに比べて豊かで平和になっていった、みたいな話。

2016-05-08 20:20:07
21世紀の道徳 @RiceDavit

5章は第一次世界大戦から冷戦終了までの話。いまは第二次世界大戦の途中まで読んでいるが、人物や戦術や地名などの固有名詞がいきなり増えて、それまで文明史っぽかった内容が戦史っぽくなっているので、いちいち調べる量が増えて読み進めるのに苦労している。

2016-05-08 20:28:28
21世紀の道徳 @RiceDavit

西洋諸国の植民地支配は経済成長や平和をもたらした、という内容も「だから植民地支配は善意で行われていた」とまでは主張していないので苦痛なく読める(国家は「定住型盗賊」なので支配下から利益を得るために支配下の治安を保とうとするので、結果として国家が拡大すると平和になる、という理論)。

2016-05-08 20:34:47
21世紀の道徳 @RiceDavit

5章の後半は第二次世界大戦と冷戦の要約な感じ。「アメリカの代わりにナチスが勝っていたとしても、歴史の流れ的に、現代のアメリカのように世界の警察としての役目を果たしていただろうし、最終的には支配下の国民の死亡率を下げたり生活の質を向上させたりしていただろう」という文章が印象的だった

2016-05-09 20:39:37
21世紀の道徳 @RiceDavit

6章は人間の暴力性の起源とその減少についての話で、リチャード・ランガムなどをボノボやチンパンジーとの人間との共通点・相違点を論じたり、ピンカーを引用しつつ「暴力の低下はリヴァイアサンとしての国家の成長が原因であり、ピンカーが挙げている他の要因は副次的なものに過ぎない」と論じたり。

2016-05-09 20:42:50
21世紀の道徳 @RiceDavit

War! What Is It Good For?: Conflict and the Progress of Civilization from Pri... amazon.com/dp/0374286000/… @amazonさんから 読み終えた。

2016-05-11 11:43:37
21世紀の道徳 @RiceDavit

終章では、アメリカの経済力が相対的に衰退していくにつれて、中国などが成長して脅威となり、「世界の警察」であったイギリスの力が衰退して代わりとなる「世界の警察」も存在しなかった20世紀の世界大戦直前の状況に近づいていくので、今後数十年は油断のならない状況となるだろう、と論じていた。

2016-05-11 11:46:29
21世紀の道徳 @RiceDavit

ただしその数十年を過ぎれば諸々のテクノロジーがすごい事になるし国境を超えた人や通商のつながりもすごい事になるので、ついに世界は「世界の警察」なしでもやっていることになるかもしれない、それまではアメリカが頑張って中国とかを抑えつづけるべし、みたいな。

2016-05-11 11:48:25
21世紀の道徳 @RiceDavit

未来予測ってあんまり興味がないので、終章は適当に流し読みしてしまった。

2016-05-11 11:50:39
21世紀の道徳 @RiceDavit

ヨーロッパはアメリカが世界の警察として頑張ってるおかげで平和主義者ぶってアメリカを批判することができる、しかしアメリカとしてもヨーロッパに好戦的になられるとバランスが崩れて困るのでヨーロッパには平和主義であり続けてほしい、みたいな関係を論じているところは印象的だった。

2016-05-11 11:51:13
21世紀の道徳 @RiceDavit

近代以降の話になると、常にハートランドや三日月地帯などのマッキンダーの地政学理論を意識しながら語られていたのも印象的だった。地政学の話をしているところは説得力があったし。前半は戦争についての文明史、後半は近代から現代に至るまでの戦争と国際関係についての概説、といった感じの本。

2016-05-11 11:56:52