本居宣長と中学英語の因縁

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It happens sometimes @ElementaryGard

1)英文法をかじった後に日本語文法がわかるようになった、と前につぶやたことがあります。ところがあの後国文法を学びなおして、自信が薄れてしまいました。

2016-05-13 10:00:36
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2)She walks smoothly. は和訳すると「彼女はさっさっと歩く」。smoothly は英文法では副詞と分類されます。ということは「さっさっと」も副詞なんだな国文法で、と割り切って考えていたのですが

2016-05-13 10:03:09
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3)He works hard. は「彼は勤勉に働く」で、hard は動詞を修飾するから副詞で、ということは「勤勉に」も副詞である…と考えたら学校の試験では✖にされる。これは形容動詞の連用形であると答案に書かないといけない。

2016-05-13 10:10:15
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4)「形容動詞ってなんやのー?」「それはね、形容詞のお仲間よ。日本語は形容詞が二種類あって『美しい』は形容詞で『きれいな』は形容動詞」

2016-05-13 10:12:05
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5)「~い」だったら形容詞で、「~な」だったら形容動詞ですほとんどの場合。そして「勤勉に」は「勤勉な」という形容動詞が変形(活用といいます)したものと解釈しています国文法では。

2016-05-13 10:14:24
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6)先ほどの「さっさと」は何かの活用形ではないので副詞と分類されます。

2016-05-13 10:15:48
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7)江戸時代に本居宣長の流派が、漢文ではなく日本の古典から「やまとごころ」を抽出したいという理想のもと、国文法を体系化していきました。私たちが中学国語でドリルを解かされた体言とか用言とかは、この流派が編み出した文法です。

2016-05-13 10:18:31
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8)連体形とか連用形とか、ああいうのを体系化したのも宣長の弟子筋にあたる学者の仕事です。江戸後期の人物で、宣長ジュニアに教わっていました。hiratafudousan.com/history/search…

2016-05-13 10:23:13
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9)さあこのひとがやってきました。日本は(というか幕府は)とうとうオランダ、清、朝鮮以外の国と国交を開かざるをえなくなった。条約文書の作成にあたって、世界の公用語はもはやフランス語ではなく英語であると思い知らされていきます。 pic.twitter.com/SVjzAqCbgL

2016-05-13 10:27:59
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10)余談ですが幕府は西洋の外交公用語がフランス語であることをすでに知っていて、ペリーが押し掛けてきたときもフランス語で書かれた書面を突き付けて「これ読みやがれ、とっとと帰れって書いてある」と主張したとか。

2016-05-13 10:29:37
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11)交渉の過程で英語が今や公用語だと幕府は気が付いた。その後いろいろあって明治に時代が変わり、英文法が日本にも入ってきた。そして研究された。

2016-05-13 10:30:50
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12)英文法と、学校で習う国文法の用語がいくつも共通しているの、不思議だと中学生のとき思いませんでしたか。副詞とか形容詞とか助動詞とか。これらはもともと英文法の用語で、それが明治になって国文法に転用されたからです。

2016-05-13 10:32:37
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13)英文法では説明しきれないことがら、例えば「は」とか「が」とか「の」とか「を」とかについては「助詞」という呼び方が新たに発明されました。

2016-05-13 10:33:45
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14)宣長の時代には「体言」「用言」「辞」(今でいう助詞のこと)と分類していたのが、弟子筋によってだんだん連用形とかなんとか複雑化して、そして英文法の混入によってもっと複雑化していった。

2016-05-13 10:35:05
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15)文明国はどこも国語辞典を編纂して、自国のことばがいかに論理的で文明的であるかを誇示していると知った日本の学者たちは、本格的な国語辞典の編纂に挑んだ。日本語は単語の切れ目がよくわからない「膠着語」なので、切れ目の判断ルールが辞書編纂と並走して模索された。

2016-05-13 10:37:15
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16)辞書という概念がそもそも、英語やロシア語やフランス語や中国語のように単語の切れ目がはっきりしている「孤立語」や「屈折語」ならではのものだった、と思います。膠着語である日本語で辞書をまとめるのは、相手のルールで嫌々戦わされるのと同じでした。

2016-05-13 10:39:52
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17)英語の辞書を参考にしたこともあって、日本語を英文法のテクノロジーで分析する作業となったわけです。いや英文法の目線で整理しなおすことで「日本語」に進化させられた、というべきか。

2016-05-13 10:42:42
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18)学校で習わされた国文法がどうしてああも複雑怪奇で、そのうえ使いでがなかったのか、その理由がなんとなくみえてきませんか。

2016-05-13 10:44:30
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19)母語の文法が理解できないまま、英語という外国語を習わされれば、挫折者が出まくるにきまっている。

2016-05-13 10:45:14
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20)現代文と古文、それに漢文の分断が教科書の中で起きている理由もこれです。

2016-05-13 10:54:44
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21)明治になって英語をはじめとするヨーロッパ言語が日本に入ってきたこと、それから「国民」を生み出すためにも「日本語」の開発が急がれたこと等から、日本のことばがリフォームされたため、漱石より前の時代のことばがもはや解読できなくなってしまった。

2016-05-13 10:56:45
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22)「正しいことばづかい」なんて結局はその時代その時代のイデオロギーで決められるものです。

2016-05-13 10:58:42
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23)宣長が生涯かけてなしとげた『古事記』の解釈そして「やまとごころ」の抽出作業だって、実際にはあの時代の倫理観をどう『古事記』に託して正統化するかという行為だったように。

2016-05-13 11:00:11
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24)音楽でもそういうのあります。芸大の音楽科で習う、いわゆる「芸大和声」という音楽文法があります。あれはバッハからベートーベンまでの時代の音楽を分析して、こういう和声進行はいいけどこういうのはいけないと規則化したものです。

2016-05-13 11:01:56
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25)ザ・ビートルズが出てきたとき、音楽学者が卒倒しそうになったという話、読んだことありませんか。芸大和声では禁則とされる音を堂々と使い倒して世界を席巻してしまったチンピラ四人組。

2016-05-13 11:03:29