二回目のTogetter 小説まとめ

浅葱肴子 @00A3AF_Sakanako

#浅葱小説 2016/05/11 書くかは未定

浅葱肴子 @00A3AF_Sakanako

1 夢を見た。深い水の底から、水上の子どもたちを眺める夢だ。 僕は夢を見ている間、とても嫌な気分だった。怒りとも、憎しみとも、悲しみとも違う。きっとあれは憧れだったのだろう。水の上で、たくさんの陽の光を浴びて遊ぶ子どもたちに、僕は憧れていたんだ。

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2 子どもたちは玉を投げたり、水を掛け合ったり、時には僕のすぐ近くまで潜ってきたりもした。苦痛だった。僕にできないことを、彼らはなぜ、全てできてしまうのだろう。 楽しそうな彼らを見る僕の心は、僕がいるよりももっと深く、陽の一切照らさない場所にいるようだった。

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3 やがて陽が沈む頃になり、子どもたちは帰っていった。僕は、子どもたちがいなくなり、すっかり揺れなくなった水面を眺める。 満月が綺麗だった。

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4 しばらく満月を眺めていると、まるで月が語りかけるように小さく揺れた。ぼくは目を凝らしてもう一度月を見る。 揺れた。月が揺れた。 そうか、誰か来たんだ。誰かが僕に会いに来たんだ。僕はつい嬉しくなって手足をバタバタとさせてみるが、思うように動けない。それはそうだ、僕は人じゃない。

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そうこうしているうちに、誰かはそこまでやってきて、月を隠すように僕に覆いかぶさった。目をこすったり、細めてみたり、僕がうまく見えないみたいだ。 「ねえ」 誰かが話しかけてくる。すごい揺れだ。僕の囁きとは比べ物にならないほどの、大きな振動。 「ねえってば」

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6 誰かは、驚く僕にはお構いなしに、話をしてきた。自分勝手なやつだ。 「君は一体誰？」 誰かの問に、僕はちょっとびっくりした。君が誰かなのに、君も僕を誰かだと思ってたの？　やっぱり、変なやつ。 「別に、誰でもないよ」 「そこ、楽しい？」 うんとか、ないんだ。 「別に、普通」

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7 「へー。僕も行っていい？」 「別に、好きにすれば？」 「別にって口ぐせ？」 「べ、違うよ！」 「今言いかけた！」 「言い掛けてないよ！　うるさいな！」 誰かは、続けざまに僕に話しかけてきた。僕は、どうにか返事をするのがいっぱいいっぱいだった。 「お前は、誰なんだよ」

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8 一生懸命しぼりだした質問も、そんなものだった。 誰かはニコリと笑って、 「そのうちわかるよ」 とだけ言った。 「はあ？」 僕はそう言って顔をしかめた。誰かはあしらうように鼻で笑った。

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9 「僕が誰かなんて、どうでもいい事だよ。僕は有象無象の誰かであって、誰でもない。いずれわかるし、分かる必要もない」 誰かはそう言って、僕に背を向ける。 「帰るの？」 「そろそろ起きないと」 「そ、そっか。そうかもね」 「別に無理に起きろとは言わないけどね、また、君と遊びたいな」

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10 それだけ言い残し、誰かは消えた。 「僕はまた、一人ぼっちで海の底か」 そうつぶやき、彼の後ろ姿の消えた先に目を向ける。まだ、うっすらと彼の歩んだ水流の道は残っている。 僕は目を閉じて考える。目を覚ました後のことを、彼の道を辿った先のことを。

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11 医師との一通りの話を済ませ、僕はようやく退院の許可を得る。もっとも、夢の話に医師は笑って「興味深いですね」と言っただけだったが。 病院を出た僕は、大きく伸びをして、空を見上げる。 空は青く澄み渡り、美しく、心地良い。 「はは、これじゃあ夢の中とあんまり変わんないかもな」

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12 手を伸ばし、風の道を辿る。その先に、きっとあいつがいるはずだ。 「あっちかな」 進む道は、 「なんだ、そこか。うん、今から行くよ」 「おい、もう行くぞ」 「あ、うん！久しぶりの学校だもんね」 行くべき道のようだ。

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@00A3AF_Sakanako おわり。まっとまりねーーーなーーーー