【SS】魔術師とロリババァの竜

あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

竜「魔術師殿よ、わしに愛らしい幼子の肉体を用意してはくれぬか」 魔術師「齢四桁の年長者が何血迷ってんだ」 竜「良いではないか。老いぼれの戯れと思って付き合え」 魔術師「歳考えろ婆さん。ジェネレーションギャップに心をへし折られるぞ」 竜「流行り事など十分心得ておるわ。嘗めるでない」

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竜「どうじゃ魔術師殿。似合っておるか」 魔術師「素っ裸でモデル気取りのポーズとんな。服を着ろ服を」 竜「この粗末な布切れを着れば良いのか？」 魔術師「ここらじゃ一番の腕利きに頼んだ衣装なんだがな」 竜「城の人間の着ているものと大分違うが」 魔術師「王侯貴族の服なんて用意できるか」

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竜「腹が減ったのう」 魔術師「おう、馬を凝視すんのやめろ」 竜「人間の食糧はいかなるものじゃ？」 魔術師「芋、麦、果実。あとは数日おきに肉だ」 竜「草を食べるのか。信じられん」 魔術師「今からお前も食うんだよ」 竜「嫌じゃ！わしは絶対に肉を食うぞ！」 魔術師「いいから芋食え芋」

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竜「味はともかく、飢えは凌げたのう」 魔術師「結局全部食ってんじゃねぇか」 竜「ふあ……ん。眠くなってきた」 魔術師「その場で丸まるな」 竜「わしはもう疲れた。動きとうない」 魔術師「せめて寝室まで我慢しろ。あんまり駄々こねてると番所に突き出すぞ」 竜「むぅ……。仕方ないのう」

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竜「すぅ……すぅ……」 魔術師「もう寝ちまいやがって」 魔術師「ったく、身体を捨ててまで町に出たがるとは思いもしなかった。何考えてんだこの婆さん」 竜「すぴー……」 魔術師「しかしまあ、可愛い寝顔だな。身体作ったのは俺だけど」 魔術師「――仕方ねぇ、床で寝るか」

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竜「今日はどこへ出かけるのじゃ？」 魔術師「市場だ。工房放ったままだったから足りないモンだらけでな」 竜「ふむ。ではわしも手伝ってやろう」 魔術師「じゃあ、この手押し車で運んでくれ」 竜「そんなに買うのか？」 魔術師「ほとんど何もねぇんだよ。お前の洞窟に持ち込んだからな」

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竜「そうであったか。苦労しておるのじゃな」 魔術師「婆さんを看取るまで世話しろってお達しがあったからな。王様の命令じゃ逆らいようがない」 竜「ちと待て。それなら、わしを治療せずとも良かったのではないか？」 魔術師「命令自体はな。だが竜を死ぬまで放っておいたら魔術師としては大損だ」

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魔術師「爪、牙、血液、肉、皮。それに骨」 魔術師「死体から取るより、生かして必要な分貰い受ける方が楽だ」 竜「言いたいことは少なからずあるが、屍を漁られるよりは遥かにマシじゃな」 魔術師「それに、お前に少なからず興味があった」 竜「ふむ？」 魔術師「王家とよろしくやってる竜がな」

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竜「わしと彼奴らとは契約を交わしておるでな」 魔術師「契約？」 竜「うむ。人間がこの地に住まうことを許し、対価としてわしに危害を与えぬよう命じたのじゃ」 魔術師「だから看取り役を付けたのか」 竜「生憎と子は成しておらぬゆえ、この契約はわしで終いじゃ。そのための確認であろう」

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魔術師「なあ婆さん。人間の身体を欲しがったのは」 竜「皆まで言うな。千年生きようと未練のひとつやふたつはあるからの」 魔術師「身体を取り替えても魂はいずれ限界がくる。竜種だろうとそれは同じだ」 竜「わかっておるとも。最後の好機と思っての我儘じゃ」 魔術師「ったく、図太い婆さんだ」

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竜「ところで元のわしの身体はどうしたのじゃ？」 魔術師「まだ洞窟の中だ。良ければ解体して貴重な材料に使わせてもらうが」 竜「やらんぞ」 魔術師「だろうな。戻ったら元通りにしてやる」 竜「それも嫌じゃな」 魔術師「どっちだよ」 竜「わしの言うとおりにするならくれてやっても良い」

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魔術師「さて、立ち話もほどほどに行くとするか」 竜「待て、わしの話を聞かんか」 魔術師「お前の道理に振り回されるのはごめんだ」 竜「嘗めた口を利きおって」 魔術師「よし決めた、その身体のまま見習いとしてこき使ってやる」 竜「なんじゃと!?このわしを顎で使うつもりか、たわけ者め」

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魔術師「悔しかったら解呪の法でも会得してみせるんだな」 竜「ぐぬぬぬ……」

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十年後、そこには一人前の魔術師となった半人の竜と、竜の血肉を使った大魔術で竜人種に身体を作り変えた王宮魔術師の姿があったとかなかったとか。 そして、二人は半人半竜の仔を数多く授かり、彼女の山に竜人の集落を復活させたとか。 何はともあれ、めでたしめでたし。