◆ブーブス・バンドは地獄(ヘル)に落ちた。崖に穴が開いたからだ。だがヘルの様子がおかしい。デーモンともあろうものが、ダサい「ママありがとう」Tシャツを着たり、ロックが禁止だったり、どうも好かんよね。ブーブスのかわいい四人はもちろん猛抗議。でも逮捕されちゃったってワケ。ロックしろ◆
2016-05-19 12:00:12疲れ果てた四人は石牢に入れられ、身体を寄せ合って眠った。鉄格子のはまった窓からは日食の太陽が見える。あれが日の光の届かない世界を照らすヘル太陽なのだ。だが、そのヘル太陽もロック禁止のせいで元気が無いように見える。ブロンディが寝返りを打って歯ぎしりし、セクシーなお腹を掻いた。
2016-05-19 12:05:56「ファック!」ジェーン9が殴るが檻は壊れない。「ヘルはどうなったんだ?」館内に流れるリラックス音楽を聴きながらフォクシーは眉根を寄せる。ヘルなのに硫黄の匂いもなく、なんか線香みたいなのが何本もささった健康フレグランスが廊下に置かれている。「死にそう」ドールハウスが危険な状態だ!
2016-05-19 12:10:20「畜生、こんなフレグランスじゃダメだ。ハッパじゃなけりゃ……」ジェーン9がドールハウスを揺さぶる。「あなたたち!夜の訓話の時間よ」デーモンマムが檻の向こうに現れ、にこやかにベルを鳴らした。「今日より明日2倍成長する為の自分感想文を……ウギャーッ!」斜め45度からビール瓶殴打!誰?
2016-05-19 12:14:41「ファック!お前は……!」檻を殴っていたジェーン9は驚いた!それは彼女たちを連行してきたデーモンたちの中にいたデーモンボーイだった!「助けに来てくれたの?イェー!」ブロンディは大喜び!「シーッ!静かに!」デーモンボーイはデーモンマムの腰から鍵束を取り、ブーブスを檻から解き放つ!
2016-05-19 12:19:51「こっちに来て。今なら看守はリアリティTVをみんなで見ているから」「リアリティTVだと?ファック!」ジェーン9は顔をしかめた。「奴らが持ち込んだ文化だ。さあ早く」「見直したわ、ヘルにも素敵な男の子がいるんだね」ドールハウスが耳打ちすると、デーモンボーイの赤い顔が2倍赤さを増した。
2016-05-19 12:23:53「全員逃げたらすぐにバレるな」流石フォクシー、サエてるぞ!「デーモンマムを代わりに入れとこうぜ」ジェーン9が気絶したデーモンを放り込んだ。サエてるぞ!「1人だとちょっと足りないかも」「俺に任せろ!」「あっブシェーミ!」「アンタも収監されてたのか!?」「俺をその牢獄に移してくれ!」
2016-05-19 12:29:13「なんだって!?」「俺の事は心配するな!」ブシェーミはサムズアップしてデーモンマムと同じ牢屋に入った。そしてブーブス達と同じようにデーモンマムの看守服を脱がせて下着姿にした。サエてるぞ!逃げていくブーブスを見ながら、彼は自嘲気味に独りごちた。「ブーブス、ロックンロールを頼んだぜ」
2016-05-19 12:34:02『シンディとヤッたでしょう!ひどい!』『知らないぜ!』『車の改造しようぜ』リアリティTVの音声は鎮魂歌めいていた。皆はブシェーミをその場に残し、なんとか逃げ出した。壁にもたれかけられたデーモンマムの豊満なおっぱいが影絵のように牢獄に浮かんでいるので、きっとなかなかバレないだろう。
2016-05-19 12:39:15「このまま地上まで逃げよう!ツアーを続けなくちゃ!」「エッそれは無理!飛行場で捕まるよ!」ヘル監獄ライトをかわして先頭を走るボーイが言った。「なんだって?」「じゃあどこへ逃げるの?」「考えてなかった!とりあえず・・・あそこに逃げよう!」そしてとうちゃくした場所はなんと・・・!
2016-05-19 12:44:29「ワオ!何これ!」ブロンディが歓声をあげたのも無理はない。ヘル蝙蝠の革で出来た恐ろしいテントの中に入ると、目に飛び込んできたのはAC/DC「地獄のハイウェイ」のレコードジャケだった。プリンスとかブラックサバスもあるし等身大ジミ・ヘンドリックス蝋人形もある。「凄い!」「ぼくんちさ」
2016-05-19 12:49:03「このコウモリの死体に書かれたサイン、もしかして…!」「オジーがヘルツアーに来た時のだよ」「クール!」「本当はロックンロールが大好きだったのね」「ぼくだけじゃないよ、本当はヘルデーモンたちはみんなロックンロールが大好きだったんだ。メタリカが来た時はモスクワ以上にもりあがったんだ」
2016-05-19 12:51:54「それじゃ、どうして…ン、これは」フォクシーが棚の上に置かれた分厚い本を手に取った。表紙に「ダス・ウバー・ホーリーバイブル・ホイテ・ゲガンゲン」と書かれていた。「私バカだから何て書いてあるかわからないよ」ブロンディが悲しそうにした。「いいさ」フォクシーが慰めた。「敵が見えてきた」
2016-05-19 12:56:40フォクシーはパラパラとページをめくる。やはりだ!そこにはナチスマークが書かれ、ナチス天地創造物語が……!ひどすぎる、なんてこった!「こんなものを配られて読まされたのか?」「最初はあいつら、にこやかだったんだ。いつのまにかヘルの権力を握られちゃって」ボーイが目を伏せた。
2016-05-19 12:58:36「バカ!」ドールハウスがボーイの頬を張った。「あなた、ロックに何を教わったの?そんなら、戦うんだよ!」「おねえさん……」「バカ!」ブロンディがボーイの左の頬を張った。「バカ!」右!左!「それぐらいにしときな!」ジェーン9が止めた。さあ、今こそ反逆のときだ!
2016-05-19 13:00:29「ヘルライブしかない!モスクワの100まんにんライブを超えるブーブスストライキングセクシーロックンロールで、デーモンをぜんいん虜にするんだ!」デーモンボーイが思いついた!「よし!じゃあ没収されたアタシたちの楽器まで案内してくれよ!アンプもたくさん必要!ヘルを揺り動かすくらいね!」
2016-05-19 13:07:06「エッ、楽器とかアンプの場所!?」デーモンボーイの真っ赤な顔がちょっとだけ青ざめた!「それは地獄の最下層、ロックンロール墓場だよ!大変だ!めちゃくちゃ警備がきびしくてナチスもいる!お姉さん達デーモンじゃないからすぐバレちゃう!」「肌の色?それなら大丈夫!」ブロンディが何かサエた!
2016-05-19 13:11:23「なんだって?」「これ!」ブロンディは赤いヘル日焼け止めクリームを懐から取り出した。デーモンマムから盗んだやつだ。「ハハーン、わかってきた」フォクシーがニヤリと笑った。そしてデーモンボーイを外につまみ出した。「子供は見ちゃダメな時間だよ」カーテンを閉じる。そして……ワオ!これは!
2016-05-19 13:14:24服を脱ぎお互いに撫で合う四人のシルエット。一体なにが……「ああ……が、我慢できないよ!」ボーイが隙間から覗き込むと、赤いクリームを全身にくまなく塗り合う四人!しかも、笑いあい、くすぐったり、凄い。これは刺激が強すぎる。コーラの缶が飛んできてボーイの頭に当たり気絶せしめた。
2016-05-19 13:17:55「ウーン」「お待たせ!」「ウワッ!」気絶から目覚めたデーモンボーイの前にいたのは・・・真っ赤な肌に黒い下着と黒いブーツ! ハロウィン用のツノと黒い翼で変装したブーブス!否!「どこからどう見ても完全なデーモンガールズだ!」「「「「「ヘル・イェー!」」」」」5人はテントを飛び出した!
2016-05-19 13:22:50「行くよ地獄の最下層へ!」「ハーレーとか無い?」「全部禁止されたんだ!これでいこう!」デーモンボーイは5台のマウンテンバイクを指差した!「マジかよ!ファック!」その時監獄からブシェーミの叫び声!「ギャーッ!」バレたのだ!「急げ!」走るブーブス!サドルの上で真っ赤なヒップが揺れる!
2016-05-19 13:28:57今やデーモンボーイに導かれて一列になり地獄の断崖を走り降りるブーブスはセクシーな赤い稲妻だ。「ハルト!」「ナハトイェーガー!」「コップフツェルブレッヒェン!」ゆくてに数人のナチスが銃を構える。やはり敵はナチスだったのだ!「怖い!」「そのまま轢きな!」「わかった!」「ウギャーッ!」
2016-05-19 13:34:07