東方歴史合同東洋編感想まとめ
東洋編から参りましょうか。 まず、ねこかりさんの遠望。校正したときは、ほぼ指摘なしという一本でした。楊貴妃と青娥の双方打算尽くの契約。傾国の美女とされ、後世には乱を呼び起こしてしまった女と語られることが多い彼女が、その本音を言える相手が青娥だったらという話なんだと思っています。
2016-05-09 00:31:43ここにあるのは、東方という括りの中でよく見られる、女の本音と決めた時の行動力。そして、けじめのつけ方。私は「源氏物語」藤壺の宮を思い出しました。正直なところ、楊貴妃の物語はこうあって欲しいなという個人的な考えを満たしてくれて、とても満足。
2016-05-09 00:34:45ぎゃわさんの「碧眼の姫様」に行きます。 東方という枠内で、碧眼で姫とくると、もうパルスィがすっと出てくるのが東方ファン。だけども、登場人物たちはわかるはずもない。一種の倒置ミステリーがそこに完成していました。注釈つけながら楽しかった作品です。 ラストシーンでのことを言いたい文字数
2016-05-09 00:41:17こうずさんの「九郎天狗、翔ぶ」。読んだとき、「キタ!」と叫びました。源九郎判官義経と文が、彼を攻めた兄頼朝へ復讐しようとする。下敷きは「曽我物語」。後年よく語られることとなったイフ義経の王道を往ってます。
2016-05-09 00:45:44ハサマさんの「心ふたつ身ふたつ」。鮮やかなラスト。歴史のトリックへ繋がる構成に、なるほどと唸った一本です。何気に、先祖の話だったりするので、「うふふ」という気持ち悪い笑いが読み込みしつつ出ていました。 そしてこの直後に、秀吉の話。町田一軒家さんの「時空天翔」が置かれているわけで
2016-05-09 00:59:32秀吉と永琳、そして輝夜との騙し合いが描かれているこの作品。しっかりと永夜抄との齟齬が無いように作りこまれている。けれど、小田原城のサルのゲージと同じ皮肉がそこにある。
2016-05-09 01:07:25歴史合同東洋編「羨望」(ねこかり様) 東洋編唯一の本邦外(中国)史。三国志しか詳しくない自分にも分かり易く、逆にどっか中国史囓ってれば地勢は理解できると言っても良い。これはすごいことだと思う。 楊貴妃と青娥の話。傾国の美女とも言われる楊貴妃の傍に青娥あり。これだけで捲る手が文字数
2016-05-10 08:09:54夢月みぞれさんの「逆しまの札」。天下の大泥棒石川五右衛門と永遠のレジスタンス正邪を、関わりのあった人物が昔語りする構成。釜茹での刑に処せられた五右衛門の意気を、正邪が受け継ぐ形になっている。これがいい。弾幕アマノジャックらしくて、本当にいい。十五代目も満足じゃなかろか。
2016-05-10 13:03:59銅折葉主催の「愚者の黄金」。自分の家と何かと因縁深い大久保長安がマミゾウさんとヤマメさんの親戚たちを手玉に取る話。狐狸の類を騙すならば相応の報いがある、典型的な日本の妖怪物に仕上がっていて、きっちり地獄の八卦炉までおさえている。この八卦路の使い方は本来的な物ではなく、人の罪業の塊
2016-05-10 17:24:31として作中に現れているのは、大久保長安の怪しさを取り入れたものなのだろうと考える。一方、小田原代官としての、また別な大久保氏にも触れて欲しかったという我侭な思いもある。ハサマさんの作品から連続して眺めると、後北条氏興亡とその後の後北条氏領を見渡す形になるからだ。
2016-05-10 17:34:06長安がなければ、八王子は本陣宿場にはならず、現在の発展もなかった。しかし、長安によって旧北条勢、そしてその影の影へ更に身を隠していた平家落人は、市中心部から完全に引き上げることとなった。現在の八王子四谷交差点がその境界。この光陰がはっきりと描かれていたように思う。
2016-05-10 17:38:05ゆーなさんの干拓の話。サークル内ということもあって、提出前に原稿のチェックをすることとなった、曰く付きの一本。氏の地元の話ということで、詳細な情報が並ぶ上で、にとひなの形に収められている。で、この雛さま、家康と第二戦国走り抜けた雛さまなの?
2016-05-10 18:06:03藍田真琴さんの「蟋蟀たち、地獄めぐり」。東歴史合同で一番の問題作だと思うけれど、東で個人的に一番好きな作品です。必殺シリーズじみたこの壊れぶりが、青娥と芳香にはぴったりで……。っと、山田浅右衛門は、「必殺仕事人激突」にいたっけ。とにかくは、かつての時代劇を好む者にはぴたりと来る作
2016-05-10 18:26:26たかさかさんの「戦艦大和の最後」。間違いなく東方です。諏訪子がとにかくかっこいい。有賀大佐は開戦時からわかっていた流れに身を任せただけという印象。読み終わると頭の中で某飛行長が酒瓶持って走っていく姿が出て来てしまったのは、きっと比叡の時報のせいだ。
2016-05-10 18:50:48卯月秋千さんの「クルセイダーの雨」。いよいよ戦後。安保闘争が題材で、その授業受けてた菫子が夢で追体験する作品。実を言うと、この作品は校正時、当時私大での全学連総本部となってブロックアウトをやったあの大学で、その渦中にいた親父殿、お袋様に、雰囲気についてチェックしてもらいました。
2016-05-10 19:11:28はっきりと言われたものです。今の乱痴気騒ぎとは違う、戦後世代に渦巻いた、三島の言う憂国のやり場のない情念が描かれていると言い、全体はこれで大丈夫だろうという解答でした。ただ二、三は異なる部分がということで、そこは注釈を付けたのですが、作品体裁として適合するかがあり、マストとはしま
2016-05-10 19:16:08せんでした。その時代の生き証人が存在するところは、やはり取り扱いが難しいものです。しかし、その世代が認める、「作中に漂うきな臭さというか、狂気というか」(二人の証言のママ)が宇佐見の血筋、メリーという謎めいた存在を通して再現されていることには違いなく、凄まじい力を感じます。
2016-05-10 19:19:37嘉島交通公社総裁の一本。東編のラストですね。どこにでもある、土地の食材と料理、日々の糧。民俗学上、絶対に無視してはならない地域史、生活の記録。生きることは歴史を織ること。それが生々しく刻んだ足跡を、聞き取りという形で著した名品だと思います。校正時に、「誰が話しているか不明瞭」と言
2016-05-10 19:24:54いましたが、それは聞き取りそのものの記録故にということだとは了解しています。だからこそ、一工夫が欲しかった。同様に音声記録を文字化するTRPGリプレイを参考にして欲しい旨、指摘に加えれば良かったかと後悔しています。それだけ、音声に拘った作品なのです。そして、この文章は、歴史を積み
2016-05-10 19:30:08上げるのは無名の生者たちによる無意識、意識されることのない時間の束なのだと訴えています。これがずるい。こいしちゃん、まじずるい。せめて、ババ様の隣で遊んでてよ。びっくりしたよ。
2016-05-10 19:31:58