震災記録と災害関連法規の書籍情報

熊本・大分地震に関する最新情報はネット上で検索できますが、これまで幾つか見てきた書籍や論文の情報の紹介を、図書館の所蔵先なども含めてまとめました。何かのご参考になれば幸いです。
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『自然災害と被災者支援』の紹介

佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

先日購入して、読了した本を紹介。 山崎栄一『自然災害と被災者支援』(日本評論社、2013年) amazon.co.jp/%E8%87%AA%E7%8… 今回の熊本・大分地震の復旧、生活再建に向けて、参考になる関連法規を知る上では格好の書。著者は大分県防災教育推進委員会委員長、他を歴任。

2016-05-27 09:23:56
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

この『自然災害と被災者支援』の熊本県内、大分県内での図書館所蔵状況としては、次のようになっている。 (熊本県) calil.jp/book/453551952… (大分県) calil.jp/book/453551952…

2016-05-27 09:26:27
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

目次とともに概要を紹介。 第1編「被災者支援の法制度」→ 「被災者支援に関わる制度を個別的に紹介していく」:災害救助法、被災者生活再建支援法、災害弔慰金等法 等を解説。 第2編「自然災害と個人情報」→「平常時において、どのように災害時要援護者の避難支援体制を構築」すべきか、他

2016-05-27 09:35:10
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

第3編「自然災害と学校・教育」→「避難支援や被災者支援の拠点として期待される学校の役割ならびに災害時における教員の役割」「地域防災をより推進させるには、…災害における法知識をどのように普及させていけばいいのか」という問題を解説 第4編「被災者支援の提言に向けた法知識」→

2016-05-27 09:40:56
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

→「内容がアカデミックになっているが、政策提言に関心のある行政職員、専門家、支援団体の方は是非読んでもらいたい」 「本書は、幅広い読者層を想定している。自らが関わっている部局・団体ならびに個人的関心に応じて、関連の深い編・章から読んでもらえればと考えている」(はじめに、より)

2016-05-27 09:46:19
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

本書から色々と示唆を受けたが細部にわたるので、直近で参考になりそうな箇所を拾っておきたい。 ・「災害救助法の弾力運用」について(10~13、185~189頁):避難所運営やその後の支援においては災害救助法の特別基準の導入が認められているが、その実態と問題点について説明がある。

2016-05-27 09:57:32
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

・「罹災証明書」の解説(67~69、89ページ):東日本大震災以後の改正点等も含めて解説あり。 ・「自治体の独自施策」(40~54ページ):この内容は非常に重要。国による災害支援の至らないところを自治体が独自の施策で補う事例の紹介で、各地の前例が多数示されている。→

2016-05-27 10:05:01
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

国の住宅再建支援では大規模半壊以上にしか支給されないが、自治体によってはこれのカバーしない「宅地被害」や「半壊補修」にも支援を実施している。これらの施策が実施できるかどうかの問題は、ひとえに財源に左右されるのだが、一般財源の他に寄付金によってこれをまかなうケースも出ている。→

2016-05-27 10:13:18
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

今回の熊本・大分地震でも多数の住宅被害が出ており、半壊の判定や地割れ等の宅地被害となってしまったケースも相当数に上ると思われる。国からの支援だけでは到底復興はおぼつかない。ここは自治体の裁量による独自施策も考慮すべきだろう。そのための陳情、請願も住民から上げていくべきだろうし、→

2016-05-27 10:18:24
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

行政の側は寄付金・ふるさと納税をも財源とした施策に向けた枠組みを作っていくべきだろう。まだまだ打てる手はあるわけだから、官民ともに最後まで希望を捨てずに取り組んでいただきたい。(「半壊認定なので全然支援が来ない」という絶望的なツイートを見たので、まだ諦めないでという思いを込めて)

2016-05-27 10:23:49
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

・災害時に個人情報をどう扱うべきか(第2編の内容):支援団体と公的機関の関係として大事な記述があったので引用。「どのような支援団体に[公的機関が]情報を提供するかについては、基準を設けておくべきである。①これまでに行ってきた支援の実績、②支援活動における法令・倫理の遵守状況、」→

2016-05-27 10:52:07
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

「③個人情報保護に関するポリシーの確立状況などが判断基準となる」(147ページ) この記述は支援団体が要援護者の情報を提供される文脈だが、より一般的な支援業務にも同様の基準は必要だろう。災害直後に乗り込んできた団体に、無条件に自治体が避難所を任せるなど、端から想定外である。

2016-05-27 10:58:34
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

例の団体については個人情報保護に関するポリシーなど微塵も感じさせないし、被災者個人の写真をネットにアップするなど「倫理」も何もあったもんじゃない。

2016-05-27 11:02:02

「 明治二十二年熊本大地震の記録」の紹介

佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

去年、偶然だが、熊本市立図書館まで行って、熊本県の災害史関係資料を調査した。そのときにコピーした論文をようやく捜索の上、見つけ出した。 山中進「明治二十二年熊本大地震の記録」(『市史研究 くまもと』第7号、1996年)   p.twipple.jp/cgRVo

2016-05-06 19:20:03
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

念のため北原・松浦・木村編『日本歴史災害事典』(吉川弘文館、2012年)を参照したが、こちらには明治22年の熊本地震についての項目記事は無かった。(巻末年表に記載あり。)この熊本地震の前後には、日本国内で大災害が相次いでいた。21年に磐梯山噴火、22年9月に台風による大水害。

2016-05-06 19:25:52
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

以下、山中論文から若干の内容紹介、説明を。 論文執筆の動機は、95年の阪神・淡路大震災に触発され、明治22年熊本地震の報告事項にばらつきのある理由を再調査する必要があったこと。熊本地震についてこれまで記された刊行物は『熊本市史』(1932年)、『熊本市政七十年史』(1964年)他

2016-05-06 19:36:35
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

著者はこれらの資料の記載に不一致な点が多いことから、あらためて熊本県と熊本市が所有する公文書(『熊本公文類纂』『熊本市政資料』)を再検討して、地震の発生時刻や被害状況の再検討を行った。まず、地震の基本的な情報について確認すると、発生は明治22年(1889)7月28日23時40分頃

2016-05-06 19:47:42
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

余震は相当長く続き、著者が記すだけでも、同年12月31日までの間に「劇震が七月二十八日と八月三日の二回、稍強が七〇回、軽震が二二八回にものぼっている」とのこと。実はこの年、熊本県域はこの地震の直前、7月22~24日に大水害が起き80人近い犠牲者を出していた。まさに災難の年であった

2016-05-06 19:54:16
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

地震の被害は圧死20名、負傷53名、全壊家屋234棟で、地域的には飽田郡に集中していた。(但し、これらの数値も資料によってまちまちと筆者は指摘。)地震の発生時刻の情報からして、資料によって数分間のばらつきがある事を著者は指摘。結論だけ述べると、当時の熊本には測候所が無く、

2016-05-06 20:05:32
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

市からの報告書が中央にもたらされたが、地震直後の混乱した状況で混同した記録が収録されたのであろうと筆者は推測。同時に、測候所のあった大分、宮崎の記録が正確なのでは無いかとも推測されている。死者数、倒壊家屋数の食い違いについては、義援金配分の際に元資料に様々な加筆がなされ、

2016-05-06 20:11:44
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

それがために被害調査時のデータと公表資料の実数に相違が生じたのであろうと著者は推測している。ちなみに、この地震に対して皇室より熊本県に対して下賜された救恤金(義捐金)は1300円。この分配のための基礎調査データが、後に地震そのものの被害調査の一つとして市史等で普及することになる。

2016-05-06 20:21:18
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

おお!ありがとうございます。ちょうどこれが出版される前に、自分は現地調査に行ったのだと思います。現物を早速確認したいと思いますが、こちらの1996年論文が下敷きになっているのかもしれません。 twitter.com/tsubu_02/statu…

2016-05-06 19:57:20
つぶ二 @tsubu_02

@ke_1sato タイムリーにも 熊本の地域研究 山中 進/鈴木康夫 編著 2015 seibundoh.co.jp/pub/search/029… に「第4章 熊本大地震の記録」「第15章 熊本における地域防災」がありますね。

2016-05-06 19:40:02
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

先ほど教えて頂いた『熊本の地域研究』を勿論参照して語らねばならないが、明治22年の熊本地震については網羅的な情報探索の余地がまだあるに違いない。熊本城の石垣が崩落したことを以てしても、今回の地震の方が激烈であったはずだが、市井の記録類を拾うことでさらに比較検証は可能かもしれない。

2016-05-06 20:30:32