「ネクロマンティック・フィードバック」 #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネクロマンティック・フィードバック#1」 #njslyr

2011-02-05 17:41:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」トンカツ・スシ店舗の輝くネオンが、這いつくばった男の青ざめた相貌を責め立てるかのように照らし出す。恰幅のいいトンカツ・スシ店主は、腕組みして哀れな男を睨みつける。「いい加減にしろよ、このヨタモノめェ……」

2011-02-05 17:45:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しっ、し、死後裁きに遭う!アーマゲドンは明日だぞ!最後の聖餐をふるまえ!」青ざめた男は震えながら店主へ人差し指を突きつけた。「アーマゲドン!アーマゲドン!」「うるせーッ!」店主は男の脇腹を蹴りつけた。「アイエエエエ!」「オラッ、塩まいとけ!塩!」

2011-02-05 17:48:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

店主はカリカリと怒鳴り散らしながら店内へ帰って行く。後を任されたニュービー店員が怖々、打ちひしがれた男に話しかける。「あンたさぁ、しょうがないですよ、迷惑ですよ、これは。もうやめたほうがいいですよ」「アーマゲドン……アーマゲドン……」男は泣き出した。

2011-02-05 18:05:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

繁華街ストリートの雑踏は負け犬を冷たく一瞥、あるいは空気のように全く無視して、右へ左へと歩いて行く。夜空を切り裂くショッキングピンクのネオン看板「ヤッコ」「ワタベさん」「電話しない?」……。

2011-02-05 18:08:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオサイタマ路上で規定事実めいて繰り返されるチャメシ・インシデントをあらためて記憶に刻みつける者など、一人たりとも存在しない。マッポーの社会において、通り一遍の無力な狂信は個性の主張にすらならないのだ。

2011-02-05 18:10:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「じゃあもう、やめてね、うちのテンチョ=サン、次はきっと金属バットだから」「アイエエエエ……でも本当なんです……アーマゲドンが……」やれやれ、とニュービー店員は肩をすくめると、裏口へ消えていった。男は起き上がる気力もなく、四つん這いで泣き続ける。

2011-02-05 18:17:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニュービー店員はすぐに戻ってきた。そして、手に持ったバイオ笹タッパーを差し出す。「あのね、これでかんべんしてください。期限切れ廃棄のオニギリです。当たり前ですがトンカツは入ってないよ。あと、次来てももうあげないから。これが最初で最後、わかりますか?」

2011-02-05 18:23:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男は震える手でタッパーを受け取る。「せ、聖餅、聖餅……!」そして素早く後ずさると、「よ、よいか裁きの日は明日なんだ!アーマゲドン!アーマゲドン!」ニュービー店員を力強く指差し、踵を返して走り出した。脇道から出てきた家紋タクシーの前に飛び出し、罵声を浴びながら、雑踏に紛れる。

2011-02-05 18:27:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ワンルームマンションの鉄扉を体重をかけてなんとか開くと、男、アンドウ・コウタロウは踵の潰れた靴を脱ぎ捨て、タタミの上にフラフラと転がり込んだ。手にした笹タッパーを開き、オニギリをがっつく。「グフッ!ウフッ!」咀嚼しながら彼は泣いていた。泣きながら、食べた。

2011-02-05 19:03:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

室内は異様であった。天井から無数の木彫りのブッダ像が吊り下がり、部屋のキモンの方角の壁際には無数のローソクが山のように飾りつけられている。その上には神棚と、「裁き裁かれる」と毛筆書きされたカケジク……。何も知らずにこの部屋を訪れた者は絶句することだろう。

2011-02-05 19:06:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダンゴ工場でモチ・プレッサーを操作する職に就いていたごく平凡なアンドウが「インスパイアされた」のは三ヶ月前のことだ。答えはキモンと反対方向の壁際に貼られた一枚の写真にある。二十歳前後の女性、どことなく彼に面影の似た……花嫁姿で、ハカマ姿のハンサムな若者と並んで写真に写っている。

2011-02-05 19:17:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不幸な事故であった。出産と同時に妻は他界、彼は娘を一人で育て上げた。そして娘は、朴訥な青年と結ばれ、三ヶ月前、晴れやかに結婚式を執り行ったのである。暴走トレーラーが式場を出た新郎新婦に突っ込んで、何もかもを奪い去ったその瞬間、アンドウは天から降ってくる輝く存在を幻視したのだ。

2011-02-05 19:25:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナムアミダブッダ……ナムアミダブッダ……」オムスビを食べ終えたアンドウは、独自にインスパイアされたチャントを唱えながら、ロウソクにマッチで火を灯していく。「アーマゲドン……アーマゲドン……恐ろしい……」

2011-02-05 20:02:14
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アンドウは口の中でもごもごとチャントをひとしきり唱えた後、ロウソクの一本を素手で掴み、燭台に突き刺した。それを持って、鍵もかけずに、再びマンションから外へ出ていく。

2011-02-05 20:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これはアンドウの毎日の日課である。数ブロック離れた場所にある廃テンプルへ、「聖別された」ロウソクを備えに行くのだ。啓示を受けたアンドウは、常よりも熱のこもった表情で、小走りに儀式の場を目指すのであった。

2011-02-05 20:49:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

路地は暗いが、そこまで治安の悪い地域でも無い。明らかに何も持たない貧相な男を狙う者はいない……しかもそれが目に熱をたたえた狂者とあっては、なおさらのことだ。

2011-02-05 20:56:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウはぶつぶつとつぶやき続ける。夢にあらわれた啓示についてだ。「イーグルとカラスが食らい合う炎の夜……血の使徒が現れ、滅びの日を告げるであろう……罪人は再生し現世を食らう……血の使徒は燃える剣を突き刺し、やがて朝は死を洗い流し、聖杯に光は満たされり……アーマゲドン!」

2011-02-05 21:02:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは墓地に分け入って行く。石や合成大理石製の墓石は、スキー板めいたノロイ・ボードでデコレートされている。ノロイ・ボードには今や誰も正確な意味を知らぬ古事記時代のノロイ文字が書かれている。ネオサイタマにおいても、墓地の様式は日本の一般的な慣習下にある……。

2011-02-05 21:12:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

墓地の奥にある廃テンプルの恐ろしいシルエットを、アンドウはためらいなく目指して行く。もはや彼にとってこのテンプルを参拝することは習慣なのだ。やがて天井のところどころ失われた腐れ木造建築のテンプルがアンドウを見下ろす。

2011-02-05 21:15:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは足元のチェストに屈みこんだ。錆び付いた銅の金具で補強された木箱に刻まれているのはコインスロットである。アンドウはポケットから汚れた硬貨を取り出し、律儀に投入した。チェストの内蔵スピーカーがくぐもった合成音声を返す。「ゴクローサマデシタ!」

2011-02-05 21:26:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「堕落した者たち……地から蘇る……アーマゲドン……救いたまえ……」もぐもぐ繰り返しながら、アンドウはテンプルの玄関先から吊り下がった汚いロープをつかみ、揺さぶった。ロープにくくりつけられた真鍮のベルが陰鬱なメロディを奏でる。リンゴーン、リンゴーン。

2011-02-05 21:30:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウはしばらく無心にロープを振り続けていたが、唐突に玄関のショウジ戸へ駆け寄り、引き開ける!テンプルの中はがらんどうの一室であり、奥には粗末なステンドグラスがある。どこか禍々しさを覚えさせる、「血の使徒の降臨」の浮世絵がモチーフである。

2011-02-05 21:43:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは跪き、手に持った燭台の火を、ステンドグラス直下の火鉢に落とした。火鉢に刺さった無数のセンコが催眠的な煙を立ち上らせる。「マッポー・アーマゲドン……燃える剣、救いたまえ、アーマゲドン!」

2011-02-05 21:46:05
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011年2月14日
「ネクロマンティック・フィードバック」 #2 http://togetter.com/li/100230
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