【本多勝一様への追伸①】伝統的思考を、それを知らない相手に理解させることの困難さ

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/本多勝一様への追伸/伝統的思考を説明する困難さ/217頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【本多勝一様への追伸/伝統的思考を説明する困難さ】先便差し上げました後、しばらく考えましたのですが、やはりもう一通「公開書簡」を差し上ぐべきだと感じました。<『日本教について/イザヤ・ベンダサン』

2016-05-14 11:38:49
山本七平bot @yamamoto7hei

②本多様の考え方は結局、日本の伝統的な考え方から必ず派生してくる数種の類型的な考え方の一つであり、過去において、表現は違っても、同じ類型に属する考え方が常にあったので 「まてよ、おかしいぞ、こういう考え方・言い方は『天声人語』が『神風賦』といわれた頃にも確かに読んだぞ」(続

2016-05-14 12:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

③続>といった感想を抱きつつ、私あての「公開状」を拝読する結果となりましたわけです。 従ってある一つの問題を捕えて、そこに表われた本多様の考え方と日本の伝統的な考え方との関連を追及するよりも、(続

2016-05-14 12:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

④続>むしろ「公開状」全般に表われた種々の問題点を、いわば浅く広く、全般的に扱うという結果になりましたわけです。 伝統を幹としますと、その表皮の表層、いわば第一層を扱ったにすぎないことになります。

2016-05-14 13:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤もちろん、伝統的考え方の中心軸は、表層から第二層・第二層と切り込んで行くより、別の方法で解明すべきだと思いますが、やはりここで、表層のみにとどめず第二層にも触れるべきではないか、それをしないことは本多様に不親切ではないかと考えるに至りました。

2016-05-14 13:38:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥前便で取り上げました全ての問題を、一つ一つ第二層まで解明いたすことは短い書簡では不可能ですので、問題を一、二の点に限定させて頂きます。 ただ他の点にも同じように第二層があること、そしてその奥にさらに第三層・第四層と続くことを留意されつつ、お読みいただければ幸いです。

2016-05-14 14:09:20
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦伝統的思考を説明することは非常に困難であります。 あるユダヤ人は 「マルチン・ブーバーの言っているようなことは、ユダヤ人なら十歳の子供でも知っている」 と申しました。

2016-05-14 14:38:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧この言葉は事実ですが、この「十歳の子供でも知っていること」すなわち「自明のこと」を正確にキリスト教徒に伝えることは、やはりブーバーのような偉大な思想家にのみ出来ることであって、十歳の子供はおろか大人にも到底できない、ということもまた事実であります。

2016-05-14 15:09:11
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨日本人なら十歳の子供でも知っている伝統的思考法を的確にヨーロッパ人もしくは中国人に伝えうる人がいたら、その人はブーバーにまさる思想家のはずであります。 これは箸を例にとればすぐわかると思います。 日本人なら十歳の子供でも、無意識に自由自在に箸が使えます。

2016-05-14 15:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩いわば「箸の使い方は十歳の子供にも自明のこと」です。 しかし箸というものを見たことのない民族に、この形態と用法を言葉で的確に伝え、伝えられた者が日本人同様に箸が使えるようにしうる人がいたら、その人は第二のブーバーかも知れません。

2016-05-14 16:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪もちろん、伝統的思考法を、それを知らない相手に理解さす困難は箸の比ではありません。 従って凡人には不可能に近い至難のことと言うべきでしょう。 私が、先便で表層のみにとどめようと思いました理由の一つはここにあります。

2016-05-14 16:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫第二層にふれただけで、言葉という媒体が、逆に越え得ない障壁になって参ります事は、以下をお読みくだされば、お解りになると存じます。 言葉が障壁となると議論は混乱を招くだけになりますので、第二層にふれつつ、かつその混乱をさける為、あくまでも譬話だけで議論を進めたいと存じます。

2016-05-14 17:09:11