【実況】▲黄昏のブッシャリオン▲第102話「再起」&平安貴族Tips「胡坐」

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黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲黄昏のブッシャリオン▲第102話「再起」

2016-05-30 22:00:14
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

少女が意志を取り戻したのは、5日目の朝だった。 「……助けに行こう」 切欠は、些細なことの積み重ねだった。屋敷の冷凍庫には当分の備蓄はあったが、万全ではなかった。機械の多くは使い方が分からず、彼女の手には負えなかった。 そして、何より。そこには、彼が居なかった。

2016-05-30 22:04:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

少女……ヤオは二枚格子を開け放ち、朝日に向かって大きく伸びをする。 どうやって? それは、これから考える。 どうして? そんなことは、後で考えればいい。 自問、と呼ぶにも雑多な考えは、流れ込む朝の空気の中に融けて失せた。 別に、考え込んで出した結論ではない。

2016-05-30 22:08:05
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

色々なことが、あり過ぎた。彼女の心は、整理の時間を欲していた。 それは既に終わった。いや……終わってはいないのかもしれない。しかし、少なくとも動くだけの活力は戻ってきた。 取り返しのつかなかいことは、確かにある。だが、取り返しのつくものもまた、まだあるのだ。

2016-05-30 22:12:05
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

「……あっ」 思い切り伸びをしたせいで、体に適当に巻いていた着物の帯が解けて落ちる。胸元がはだけ、ウェットスーツの日焼け跡がちらりと覗く。 着の身着のまま同然で集落を飛び出したせいで、彼女は屋敷にあった着物を適当に引っ張り出して身に付けていた。 「うん、後で着付け、教えて貰おう」

2016-05-30 22:16:05
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

それも、まだ先のことだろう。まずは、彼を助け出す方法を考えなければならない。 だが、そもそも……ヤオには、『マロ』が何処へ連れ去られたのかすら分からなかった。 彼女にできることは、『マロ』に比べれば余りにも少ない。 料理の作り方もわからない。庭の手入れの仕方もわからない。

2016-05-30 22:20:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

服の着方すらも覚束ない。 彼女とて、何もできない訳ではない。早くに両親を失い、一人で生活できるだけの能力は十二分に身に付けている。ただ、あの不死者が桁外れだっただけなのだ。 が、それに気付くことは、彼女にはできなかった。それが数年前以来の『当たり前』だったからだ。

2016-05-30 22:24:03
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

自分一人では、何もできない。ヤオはそう思った。 誰かの助けが必要だ。しかし、誰に助けを求めればいいのか。一番助けを求めたい人を救うために、誰を頼ればいいのか。 彼女は頭を絞り始める。誰か、この無謀な企てに手を貸す人は居ないものか、と。せめて、『マロ』の居場所の手掛かりだけでも。

2016-05-30 22:28:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

そう考えたとき。彼女には、思い当たるものがあった。 「……船団」 村の中には、裏切り者が居た。『マロ』を快く思わなかった者達が。そして、彼等は何らかの方法で『外』とコンタクトを持っていた。そう彼は仮定していた。 結局、その方法を『マロ』が突き止められたのか、そこまでは分からない。

2016-05-30 22:32:09
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

あの時は、時間も無かった。今から集落を洗い直せば、何か出てくるかもしれない。 だが。そもそもの疑問が、彼女の思考の前に立ちはだかる。それが、自分に出来るのか? 「うーん……」 ヤオは胡坐を組む。着物が更にはだけるが、彼女は気にも留めない。彼はいつもこうして、胡坐をかいていた。

2016-05-30 22:36:01
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

あの墜落したUAVを介した回線は、既に見よう見真似で試したものの繋がる様子は無かった。この道を辿る以外に方法が無いことは、彼女にも分かっていた。 しかし……それは、アフター徳カリプスの時代しか知らぬ彼女にとって、余りにも荷が勝ちすぎている。権謀術数は経験が物を言う。

2016-05-30 22:40:07
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

不死者同士の化かし合いに、彼女が付け入る隙は皆無。そこまでは知らずとも、『マロ』すら苦戦する相手を前に、己がやり合えると思うほど彼女は傲慢ではなかった。 「……ちょっと、考え方を変えてみよう」 『……相手の何を知りたいと思うか、でおじゃるな』そう、彼は以前言っていた。

2016-05-30 22:44:01
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

考えるべきこと。知りたいこと。何故、そもそも彼等は『マロ』を攫ったのか。思い当たるのは、ひとつの言葉。 『……麿はもう、千年以上は生きたでおじゃるよ』 「……あれって、どういう意味なんだろう」 考えは一向に纏まらない。彼女はそのまま、後ろに倒れるように伏し、足をばたつかせる。

2016-05-30 22:48:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

彼が、あのタイミングで嘘を吐いたとも思えない。しかし、真実だとして。それが持つ本当の意味を、彼女は理解してはいなかった。 それでも、彼女のまだ知らない何かがある。そのことだけは奇妙な確信があった。それが、『マロ』が拉致された事実に関係しているであろうことも。

2016-05-30 22:52:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

「うーん、わからない……」 考えをゆっくり纏める必要がある。そう思い直し、ヤオは立ち上がった。 まだ、為すべきことはわからない。それでも、少しずつ少しずつ、彼女は再び歩み始めていた。

2016-05-30 22:56:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲黄昏のブッシャリオン▲第103話へ続く

2016-05-30 23:00:14
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

平安貴族Tips 胡坐 平安期、胡坐は正式な座り方であり、女性も胡坐をかいていたとされる。なので、ヤオが胡坐をしていても特に特に問題は生じない。 ※本日のブッシャリオンTipsはお休みです。 ※明日は仏滅のため更新はお休みです。

2016-05-30 23:04:04