提督のいない鎮守府

個人的な備忘録も兼ねたSS未満の何か
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白閃 @WhiteGlintNo9

提督が「ログイン」しなくなって数ヶ月。賑やかだった鎮守府で今はただ一人、かつての上司の机でひたすら記録という名の日誌を綴る秘書艦… とかそんなお話下さい

2016-05-31 17:00:20
白閃 @WhiteGlintNo9

「何故司令官は私を解体して下さらなかったのですか?解体してくだされば、来るはずのない者を待つ痛みを味わずに済んだのに。変わらぬ日々を過ごす苦しみに囚われることも無かったのに。抱いてしまうかすかな希望に悩まされる訳も無かったのに!」

2016-05-31 17:11:38
白閃 @WhiteGlintNo9

初期艦にして秘書艦、そして唯一のケッコン艦である吹雪は来るはずもない提督をひたすら待ち続けていた。 提督が“ログイン”しなくなってから鎮守府の季節は止まり、日が昇っては暮れるの繰り返し。彼女が書き連ねた記録と言う名の日誌が執務室に積み上がっていく。

2016-05-31 18:42:17
白閃 @WhiteGlintNo9

工廠は動かない。 誰も作業を指示しないからだ。 艤装も持たなくなった。海に出ることは無いからだ。あまり長く身体を動かさなかったせいか指輪が外れた。練度が落ちたからかもしれない。 壁紙が剥がれた。紫外線で劣化したソレは、かつて吹雪の好きな色に、と司令官が張り替えたモノだった。

2016-05-31 18:54:11
白閃 @WhiteGlintNo9

作戦司令部からの入電も無い。更新するべき情報が無いからだ。ここの鎮守府は既に忘れられたのだろう。 執務机は片付けた。長い間使い続けたが先にガタが来てしまった。それでも吹雪は待ち続ける。代わりに段ボールを引っ張り出した。 艦隊規模は縮小した。構成する艦娘が居ないのだから当然だ。

2016-05-31 19:03:56
白閃 @WhiteGlintNo9

執務室の窓から見える母港に変化は無い。それこそ何1つ。ただ明るくなって暗くなる。その繰り返し。季節は廻らず、月日は過ぎていく。 日誌はとうに止めた。書くモノが無くなったからだ。媒体的にも、内容的にも。 それでも彼女は待ち続けた。

2016-05-31 19:09:59
白閃 @WhiteGlintNo9

そしてその瞬間に前触れは無かった。 唐突に執務室の扉が開かれる。 咄嗟に背筋を伸ばして忘れかけていた敬礼のポーズを取る 現れたのはまだ初々しい、知らない顔の人間だった。しかし吹雪にはもうどうでも良かったのだ。だって司令官には違わないのだから 「初めまして、司令官。吹雪です」

2016-05-31 19:14:50