再論・2013年8月8日夜の報道ステーションの特集でとりあげられた広島大・鎌田七男名誉教授の研究とその続報

例年6月初めに開催される原子爆弾後障害研究会で続報が発表されるのを待って情報を追加してから公開するつもりで準備していたまとめですが、あまりに情報が出てこないのでしびれを切らして公開に切り替えました。 第1報)鎌田七男、田代聡、木村昭郎、三原圭一郎、大瀧滋、星正治、川上秀史、神谷研二 「広島県内被爆者の子供数」 長崎医学会雑誌 85 (特集号), 300-303, 2010 続きを読む
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nao @parasite2006

表1の赤枠(父親の被爆状況と被爆からの経過時間の影響)の中の下線部の数字0.61は、子供の出生が1年遅いと白血病発症リスクが前の年の61%に低下する、すなわち1年に39%(発表当時の中国新聞記事では約38%)ずつ低下することを示しますpic.twitter.com/0jBxRCkbuy

2016-05-30 22:17:07
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(↑この中国新聞の記事は一度オンラインから消えましたが、現在では中国新聞ホームページの「ヒロシマ平和メディアセンター」にアーカイブされてこちらで全文を読む事ができます。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=31627

nao @parasite2006

被爆1年後の1946年を100として、時間経過とともに被爆二世の白血病発症リスクが毎年39%ずつ低下していく様子をグラフに表したものがこちら。10年を超えると被爆1年後の出生の場合の1%を切ります。 pic.twitter.com/JWOMn3BFBB

2016-05-30 22:29:49
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nao @parasite2006

こういうことなら「両親被曝の方が片親被ばくより白血病の発生率が高い」というストーリーが成り立つのが1946-55年生まれの被爆二世に限られるのも道理。pic.twitter.com/JWOMn3BFBB

2016-05-30 22:38:36
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nao @parasite2006

興味深いことに、論文(長崎医学会雑誌 89(特別号)272-275, 2014)の考察の項には「臨床的観察から被爆二世白血病は親の被爆後に生まれた第1番目の子供に発症頻度が多い傾向が見られていた」とあります。被爆から出生までの時間が短いほど子供の白血病発症リスクが高いことと符合

2016-05-30 22:43:08
nao @parasite2006

考察はさらに続けて「今回の解析により、被爆二世の白血病発症リスクは原爆被爆後の早期から高く、年ごとに前年に比して約39%ずつリスクが減少していくという結果が得られた。これは原爆の子孫への影響が明らかに存在し、生殖細胞の子供への影響はかなりの速さで減少していくことが明らかとなった」

2016-05-30 23:10:43
nao @parasite2006

うーん、「原爆の子孫への影響が明らかに存在し」というからには、それが認められる1946年6月1日-1960年5月24日までに生まれた被爆二世の親、特に父親の被爆線量がどのくらいで、これ以後に生まれた子供の父親との間にどのくらい差があるのか示してほしいと言いたい。

2016-05-30 23:22:42
nao @parasite2006

被爆14.8年後までに限られるものの父親の被爆状況が子供の白血病発症に影響するのに対し、母親の被爆状況は被爆28年後までの観察期間を通じて影響しないことは、放射線照射が子孫の発がんに及ぼす影響を調べたマウスの実験と同傾向togetter.com/li/680454

2016-05-30 23:44:05
まとめ 8月8日の報道ステーションがとりあげた放射線の遺伝的影響をめぐって:動物実験結果を中心に まとめ「8月8日の報道ステーションで取り上げられた広島大・鎌田七男名誉教授の研究の原著論文を探して読んでみました」(http://togetter.com/li/549170 )の姉妹編です。 2013年8月8日夜の報道ステーションの特集の放送後の議論を別まとめから切り出し、単独で読めるようにしました。 番組で取り上げられた野村大成・阪大名誉教授の次の論文の話が中心ですが、放射線の遺伝的影響を調べる動物実験では、どれほど凄まじい量の放射線が照射されているかご覧下さい。 Nomura T. Parental exposure to X rays and chemicals induces heritable tumours and anomalies in mice. Nature 1982;296:575-.. 17935 pv 500 3 users 5
nao @parasite2006

(ただしこのマウスの実験は、ものすごい線量を照射していますのでご注意くださいtwitter.com/parasite2006/s… twitter.com/parasite2006/s… twitter.com/parasite2006/s… twitter.com/parasite2006/s…

2016-05-30 23:48:37
nao @parasite2006

大阪大・野村大成名誉教授の1982年の論文bit.ly/14Ldtuq から、X線照射マウスから生まれた仔マウスの発癌(出生8カ月後)への影響の図。照射線量の単位は100 rad=1 Gy。1Gy=1 Svで換算可 twitpic.com/d93029

2013-08-19 04:53:01
nao @parasite2006

X線照射線量率は72 rad/min=4320 rad/h = 43.2 Gy/h。これを連続照射するか(黒丸)、1回30秒(32 radすなわち0.32 Gy)ずつ2時間間隔で繰り返し照射(白丸)。最大照射量は5.04 Gy。

2013-08-19 05:02:54
nao @parasite2006

一番右のoocytes=卵母細胞とそのすぐ左のspermatogonia=精原細胞はDNA修復機能のある細胞で、2時間間隔の反復照射(白丸)では修復機能が働き発癌率が連続照射時より低下、ゼロ照射時の値5%周辺に。一番左は成熟精子細胞で修復が起こりにくく、反復照射も連続照射も同結果

2013-08-19 05:18:00
nao @parasite2006

一方放影研による被爆二世への影響調査の対象となった被爆一世の方々の被爆線量の中央値は0.14 Gy bit.ly/oNAwWS 野村名誉教授の実験twitpic.com/d93029 で照射された最低線量0.36 Gyよりまだ低い。

2013-08-19 05:26:52

その3:被曝二世白血病患者の親たちの被曝線量はどのくらいだったのか

nao @parasite2006

広島大・鎌田名誉教授の研究対象となった1946年6月1日-1973年12月31日生まれの広島で被爆した親を持つ被爆二世119,311例の両親の被爆線量別内訳(長崎医学会雑誌 85(特別号)300-303, 2010)はこちら pic.twitter.com/nuaFeeDtuP

2016-05-31 00:19:57
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nao @parasite2006

この表pic.twitter.com/nuaFeeDtuP に表示されている被曝線量は「空気カーマ」rerf.or.jp/glossary/kerma… 遮蔽の影響を考慮しない被爆線量です。両親とも被爆線量の推定値が出ている被爆二世は119331人中緑色で塗った2541人、すなわち2.1%

2016-05-31 00:43:52
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(↑父親の被曝線量推定値が出ている被爆二世の数は16695人で、全体に占める割合は14%、すなわち7人に一人ということになります)

nao @parasite2006

この研究で使われた被曝線量推定法は広島大学による「ABS93D」という方式で、推定に必要な情報と限界を表にまとめました。爆心地からの距離を確認できず旧町名で代用していたり、入市被爆者で線量推定対象から外されている人が多いのです。 pic.twitter.com/XzjMOFPCSu

2016-05-31 01:10:25
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親の被爆線量の推定ができなかった理由として、上のツイートにあげた2つ以外に「原医研=広島大学原爆放射線医科学研究所や放影研=放射線影響研究所で線量を計算する際、日本家屋でないと計算できない(遮蔽がコンクリートの壁の場合、何枚の壁があり、それぞれどの程度の厚みがあるか分からないと中性子やガンマ線の減少率が計算できない)」という事情があったのだそうです。
(広島県医師会速報第2151号
http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/2151_006.pdf
p.13)

nao @parasite2006

被爆した場所の旧町名が爆心地から2 km以内にあった人の場合、ABS93D方式では遮蔽を考慮しない被爆線量の空気カーマがどの程度かわからなかったので、かわりに被爆距離別の遮蔽カーマ(空気カーマの約半分)の表を見つけてグラフ化しました pic.twitter.com/1warWaPN8P

2016-05-31 01:32:45
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nao @parasite2006

2013年8月8日夜の報ステが伝えた広島大・鎌田七男名誉教授の研究を報告した和文論文長崎医学会雑誌 87 (特集号), 247-250)pic.twitter.com/vgK7MAjhzf には「親の睾丸ないしは卵巣被曝線量で500 mSvを超える症例は一例も見られなかった」(続く)

2016-05-31 01:39:13
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(↑写真に写っている本文記述を読めば、これが被爆二世119331人全体の親の話ではなく、白血病を発症した94人の親の話であることがわかります)

nao @parasite2006

(続き)これを1 Sv=1 Gyと読み替えて遮蔽なしの空気カーマに換算しようとして臓器別の透過係数を探しましたが、ABS93D方式のものが見つからなかったので、代わりにこれの下敷きになった放射線影響研究所(放影研)のDS86方式の臓器別透過係数の表を探し出しました。

2016-05-31 01:43:37
nao @parasite2006

DS86による透過係数が求められている臓器はこの表のとおり複数ありますが、実際には赤色骨髄の線量が代表として使われます(女性の場合はさらに乳房も)。 pic.twitter.com/qoFhjA24vJ

2016-05-31 01:54:37
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nao @parasite2006

中性子線量はγ線量の1/10-1/100なのでrerf.or.jp/glossary/kerma… 実用上はγ線だけ考えていれば十分。γ線の平均臓器線量透過係数は卵巣が0.74、精巣(睾丸)が0.78なので、臓器線量500 mGyを遮蔽なしの空気カーマに逆算すると641-675mGy

2016-05-31 02:01:54
nao @parasite2006

DS86による爆心地からの距離別被曝線量推定値を広島市内で求めた結果をグラフ化しました。γ線量に比べて中性子線量がずっと小さいこと、γ線量は1.5 km以内で急上昇することがわかります。 pic.twitter.com/Irggzgboxv

2016-05-31 02:17:10
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nao @parasite2006

また遮蔽なしの全身線量の目安となる空気カーマは、広島の場合爆心地から2.5 kmでおよそ10 mGy2 kmでおよそ100 mGy1.5 kmで500 mGy1 kmで4 Gyと覚えておけばいいでしょうpic.twitter.com/Irggzgboxv

2016-05-31 02:27:15
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