ラノベ作家・笹本祐一氏「電子書籍に関して考える」

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笹本祐一 @sasamotoU1

それはともかく、昨日のニコ生の電子書籍の話見た。ニューメディアって出てくる時は海のものとも山のものとも付かないんで、将来どうなるかわからないけど、とりあえず自分の本棚を見てみる。今、笹本の仕事部屋にある一番古い本は1959年版の航空学辞典。

2011-02-08 11:29:37
笹本祐一 @sasamotoU1

実家に行けば1930年代の本も何冊かあるが、戦前の本だと旧仮名遣いで読みやすくはない。まあ慣れてるけど。で、今度は自分のPCの中を見てみる。ネットから拾ってきた古い写真や資料を除けば、一番古い文書はたぶん自分の原稿。笹本の原稿は、90年代初頭から電子化された。

2011-02-08 11:32:00
笹本祐一 @sasamotoU1

10年後、20年後にどんな機器で電子書籍を読むようになっているのかは解らない。iPadやキンドルの進化型みたいなタブレット型なのか、それとも本みたいに両開きなのか、はたまた巻き物拡げてそこに映し出される電紙ディスプレイなのか、立体表示される画面に文字列が映し出されるのか。

2011-02-08 11:34:57
笹本祐一 @sasamotoU1

どういう形態のデバイスが主流になっているのかは解らないけれども、とりあえず現行のフォーマットさえ使えれば将来のデバイスでも今書いてる原稿は読めるだろう。20年前の現行でもプレーンテキストデータだから、今のウィンドウズでもMACでも読めるし書ける。

2011-02-08 11:37:38
笹本祐一 @sasamotoU1

んじゃ、この電子データが仮に50年前のものだったとしたらどうか?電子業界や放送業界じゃあ昔のフォーマットが読めなくなったとか仕方ないから昔の機械探して読む、なんて話がいくらでもある。いくらでもあるなら、それを教訓として下位互換さえ搭載してくれればなんとかなるかなー。

2011-02-08 11:40:48
笹本祐一 @sasamotoU1

 身の回りの本を見てみると、あんまり古い本は言語自体が変化してる、具体的には旧仮名遣いだったり文語体だったり古語だったりすると覿面に読みにくくなる。となると、資料的価値はともかく商業的価値は現行品ほどには期待出来ない。

2011-02-08 11:43:16
笹本祐一 @sasamotoU1

ただし、資料的価値を問題にする場合は、写真がある。文語体だったり古語だったりする古文書が口語体になるあたりから写真てものが普通に印刷されて流通するようになった。写真や絵なら、文語体の時代のものだろうが外国のものだろうが見ればわかる。

2011-02-08 11:46:13
笹本祐一 @sasamotoU1

ネット上をうろついてみれば、電子化なんて概念もなかった時代の写真や絵画がいっぱいある。解像度や再現度はどんどん上がっていってそのたんびに更新されているから、将来的にはあんまり心配しなくてもいいかなー。

2011-02-08 11:48:47
笹本祐一 @sasamotoU1

電子書籍に関する不安はいろいろあるけれど、ユーザー側としてみると「それはいつまで使えるのか?」これに尽きるんじゃないかと思うのよねー。買った本なら、劣悪な環境だったり燃やしちゃったりしない限りはまあだいたい自分の寿命と同じくらいは読める、ような気がする。

2011-02-08 11:52:07
笹本祐一 @sasamotoU1

本なら大丈夫ってのも実は幻想で、酸性紙を使ってるそこらへんの本ってのは半世紀から一世紀もあればぼろぼろの粉に返ってしまうものなのよねえ。中性紙にしても三世紀から四世紀が寿命、とか言われると、かつての羊皮紙とか、竹簡とか、十数世紀以上の寿命を平気で保つ碑なんかが遥に優位。

2011-02-08 11:56:05
笹本祐一 @sasamotoU1

今日買った電子書籍は、少なくとも数十年、出来れば生きてる間は読みたい。でも、今普通に使われてる電子書籍デバイスは十年単位で使われるようには出来ていない。技術進歩が早いからね、今の最新の技術で作られる電子書籍デバイスを十数年使えるように作るのも非現実的である。

2011-02-08 11:58:07
笹本祐一 @sasamotoU1

だけど、ふと自分の人生を振り返ってみると、レコードとかβとか8ミリビデオとかレーザーディスクとか、着々と滅びつつあるメディアいっぱい買ってるのよねえ。βは笹本の家ではまだ生きてるけど、録り溜めたテープの99パーセント以上は二度と再生されることはないだろう。

2011-02-08 12:00:17
笹本祐一 @sasamotoU1

まあだいたい、家庭用ビデオテープってのが録画後十年も経つとぼけはじめて往年の鮮明度が失われていく。カセットテープもどんどん延びていく。デジタル信号なら大丈夫か、ってえと、信号を記録する酸化鉄は保つけど、それを定着させる接着剤にはそれほどの寿命はない、らしい。

2011-02-08 12:02:26
笹本祐一 @sasamotoU1

てえことは、「永久保存版」は昔ながらの出来れば中性紙の本の形で数世紀分の寿命を期待しつつ、電子書籍に関しては十数年くらいの寿命しか期待せずに利便性を享受する、ってのが現実的な姿勢かなあ。

2011-02-08 12:05:15
笹本祐一 @sasamotoU1

問題は、情報としての書籍の寿命は人の感覚として半永久的なのに、メディアとしての電子書籍の寿命は明らかに短いって齟齬じゃないのかなー。まあ、電子データとして書籍ほどの長寿命が期待出来ない代わり、複製しての増殖ははるかに簡単で、そっちで情報としての寿命が延びることは期待出来る。

2011-02-08 12:07:40
笹本祐一 @sasamotoU1

書籍になった情報の寿命は本それ自体と、古本屋や図書館といったインフラに期待出来る。図書館はアレキサンドリアから数えれば千年単位の歴史があり、古本屋だって百年単位の歴史がある。ところが、電子書籍を維持するインフラとしての電子メディアはそれほどの歴史がない。

2011-02-08 12:11:51
笹本祐一 @sasamotoU1

インターネットが一般人に普通に使えるようになったのがwin95からとしてもたかだか15年、ブロードバンドったら最近10年くらいの話でしかない。同様にご家庭に家電としてのコンピューターや携帯電話が入ってきて情報端末として使われるようになって、その程度の時間しか経っていない。

2011-02-08 12:15:01
笹本祐一 @sasamotoU1

電子書籍に対する電子音楽(ちょいと意味違うな)じゃなくてデータ販売される音楽については、メディアとしての歴史が書籍より短い分だけ問題がそれほど複雑化しなかったように見える。なんせ、音楽が楽譜じゃなくて再生可能なメディアとして販売されたのは19世紀になってから。

2011-02-08 12:16:50
笹本祐一 @sasamotoU1

楽団を雇えるような金持ちはともかく、一般家庭で音楽の再生が出来るようになったのはまず量産されたオルゴール、次いでエジソンの蓄音機、さらにレコード、それからラジオやカセットと音楽の販売形態、配布形態はたかだか100年程度の歴史しかない。

2011-02-08 12:18:24
笹本祐一 @sasamotoU1

音楽の販売はレコードの時代が長かったけどそれも半世紀ちょいしか保たず、カセットとの併売からCDになって、いまはデータの形での流通が普通になっている。そんな歴史があるからか、音楽の客は「今日買った音楽がいつまで聴けるか」について書籍の客ほど神経質ではないように見える。

2011-02-08 12:20:26
笹本祐一 @sasamotoU1

mp3やあるいは他のデジタルフォーマットになってる音楽データに関しては、「これがいつまで聞けるのか」なんて切実な悩みはあんまり聞かない。なんでだ?

2011-02-08 12:22:21
笹本祐一 @sasamotoU1

音楽ファンがデジタルデータの寿命について思い悩まないのは、たぶんかつてレコードで配布されたものがCDになり、今デジタルデータで配布されてるから、将来的にもあんまり心配する必要はないと歴史的教訓を得ているからだろう。まあ、そのために金払うのに慣れてる、のもあるのかも知れない。

2011-02-08 12:25:00
笹本祐一 @sasamotoU1

これが音楽じゃなくてビデオになると話はもっと加速され、ビデオテープがレーザーになり、DVDになり、今やブルーレイとマニアは数年おきに新しいメディアに自費で更新することを求められている。そりゃつきあってられん、ってネットで見る方向にも走るわな。

2011-02-08 12:26:28
笹本祐一 @sasamotoU1

てことは、電子書籍に関しても似たような未来が待ち構えているんじゃないだろうか。音楽メディア、ビデオメディアが定期的なメディアとプレイヤーの更新を求めて来たように、電子書籍に関してもデータ形式及びプレイヤーの進化に伴って機材の更新を求められる。メーカー的には期待出来る展開よね。

2011-02-08 12:28:40
笹本祐一 @sasamotoU1

問題は、書籍ってのは文字情報の集積であり、そこに書かれている文字はハードカバーでも新書でも文庫でも電子書籍でも、ケータイに表示されようが大画面ディスプレイに映し出されようが情報としての質は変化しない、ってところである。

2011-02-08 12:30:03