松竹対東映 仁義なき戦い

小玉大輔氏による、1970年代初めから80年代にかけて繰り広げられた松竹と東映の熾烈な抗争物語についての連続ツイートをまとめました。
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小玉大輔 @eigaoh2

「松竹 東映 仁義なき戦い」1970年代初めから80年代にかけて繰り広げられた松竹と東映の熾烈な抗争物語を虚実ないまぜでツラツラ書いてたら、20ツイートぐらいの長大なものになってしまいました。お付き合いください。

2016-06-08 13:34:32
小玉大輔 @eigaoh2

松竹は関係者は今も昔も東映を認めてないらしい。特に岡田&俊藤体制時代の東映を「ヤクザ映画ばかり作って日本映画をダメにした会社」と蛇蝎の如く蔑んでいた。一方、東映は「ヒット作一本も作れん会社が何言うとんねん」と苦々しく思っていた。 pic.twitter.com/nTtCw8b5yZ

2016-06-08 13:37:18
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小玉大輔 @eigaoh2

そんな時、東映の看板女優藤純子が歌舞伎の尾上菊五郎とし、女優引退を宣言。一番の稼ぎ頭で唯一無比の存在を松竹に奪われたことになった東映関係者の怒りは大きく、披露宴会場で東映のスターたちのスピーチはかなり緊迫をはらんだものだったという。 pic.twitter.com/1Zr7OXTnQk

2016-06-08 13:38:01
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小玉大輔 @eigaoh2

松竹にしてみれば藤の結婚・引退は自分たちがどうこうしたことではなく、東映の怒りは全くの筋違いと思えた。しかし藤の引退で任侠映画が下火に。そこで東映は松竹の「男はつらいよ」を下品にした「トラック野郎」を製作、大ヒットさせたのであった。 pic.twitter.com/QQdyk6RmEq

2016-06-08 13:39:51
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小玉大輔 @eigaoh2

対し松竹は逆襲に転じる。東映と揉めた高倉健とトップ監督山田洋次を組ませ、やくざ映画のスターから国民的スターに格上げさせ、東映で伸び悩んでいた渡瀬恒彦を招き、野村芳太郎映画でトップスターの座に押し上げ、東映の鼻をあかしたのだった。 pic.twitter.com/ZFW7V4tjC5

2016-06-08 13:41:32
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小玉大輔 @eigaoh2

松竹の攻撃は続く。東映がボツにした「蒲田行進曲」をサルベージ。東映のエース監督深作欣二を起用し、撮影は東映京都撮影所で行ったのだ。そして大ヒットさせただけでなく、その年の映画各賞を独占。松竹は完膚なきまでに東映をコケにしたのだった。 pic.twitter.com/ZEbKejYx5b

2016-06-08 13:42:56
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小玉大輔 @eigaoh2

東映もやられっぱなしではない。持ち前の不良性感度を高めて、松竹の面子を潰す策を考え出した。それは女優王国と言われる松竹の女優を汚してやろうというものだった。東映が的にかけたのは当時の松竹のトップ女優、松坂慶子である。 pic.twitter.com/qQ6oVaBRhW

2016-06-08 13:43:31
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小玉大輔 @eigaoh2

東映が用意した企画は女優映画の才人蔵原惟繕を招聘し、自社のエース深作欣二を共同監督を務める文芸大作であった。プロデューサーの土下座、社長同士のトップ会談を経て、東映は松坂を獲得に成功する。 pic.twitter.com/GeJZotnJXq

2016-06-08 13:44:02
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小玉大輔 @eigaoh2

そしてこの映画で東映は松坂に本格的な濡れ場をやらせるのだった。東映の大物菅原文太を相手に松坂はそれまで見せたことがなかった艶技を見せ、松竹関係者を震撼させた。何故なら松竹で彼女はここまで肢体を見せたことがなかったからだ。これにはある秘密があった。

2016-06-08 13:44:52
小玉大輔 @eigaoh2

実は撮影中、松坂は監督の深作と男と女の関係になっていたのだ。深作に松竹への意趣返しの気持ちがあったかは定かではないが、以後、松坂は東映・松竹問わず深作監督作ならバンバン脱ぐようになり、従来の松竹女優とは異質な存在になってしまった。 pic.twitter.com/RaYHo8isFO

2016-06-08 13:45:39
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小玉大輔 @eigaoh2

女優を使って松竹に痛撃を与えることに成功した東映はまだまだ手を緩めなかった。松竹のプライドを傷つけるべく、次なるターゲットを選びだした。それは往年の松竹スター、佐田啓二の遺児で中井貴恵。 pic.twitter.com/f5RxsN6BGU

2016-06-08 13:47:08
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小玉大輔 @eigaoh2

松竹の大監督、木下恵介に芸名を付けてもらいデビューした中井に東映はそんな彼女にオールスターやくざ映画で日本の首領の娘を演じさせる。ここで東映は彼女に軽いベッドシーンをやらせたのだが、この背後にはさらなる策略が隠されていた。 pic.twitter.com/dcvJIWiMm6

2016-06-08 13:49:28
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小玉大輔 @eigaoh2

東映は自社のエース監督三人が作る文芸大作への出演依頼を中井貴恵に行う。出演シーンの担当が前作の監督ということもあり、彼女は出演を承諾。しかしその監督はデビュー作から女優を脱がせ屋だったのだ。殺し文句は「君が脱がなければ監督を辞める」 pic.twitter.com/0UnP8TOwrW

2016-06-08 13:52:18
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小玉大輔 @eigaoh2

中井貴恵もこの言葉で脱ぐ決意をする。東映が長きに渡る松竹への怨みを晴らす時がやってきた。東映は濡れ場の相手は松方弘樹。大スターだが、彼は前貼りをつけない豪傑。初めて脱ぐお嬢様二世女優の気配りはこれっぽっちもない。 pic.twitter.com/CaAj6X4djS

2016-06-08 13:54:05
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小玉大輔 @eigaoh2

作品を見た松竹関係者は「佐田さんのお嬢さんになんてことさせたんだ!」と激怒し、慌てて自社の映画に中井喜恵を起用するが、東映のつけた“脱ぎ女優”のイメージを払拭することが出来なかった。東映は藤純子を奪われた時の怨みを晴らしたのだった。 pic.twitter.com/zy9nMUWa7m

2016-06-08 13:55:19
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小玉大輔 @eigaoh2

東映の攻撃はまだ続いた。その頃、女性ライターが書いたルポが話題になっていた。その映画化はほぼ松竹に決まっていたのだが、東映は横取りを画策。原作者に「松竹なんかにこの素材を上手に料理出来ない」と迫り、見事映画化権を獲得。 pic.twitter.com/cYlgXl0bNb

2016-06-08 16:13:36
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小玉大輔 @eigaoh2

映画化にあたって東映は監督に東映プロパーではなく、松竹で大作時代劇を作っていた五社英雄を起用。もしこの企画が松竹で実現していたら監督を任されたであろう人物である。これだけで松竹に対して充分な挑発だったが、東映は手を緩めない。 pic.twitter.com/TBRId9glDj

2016-06-08 16:14:04
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小玉大輔 @eigaoh2

東映が主役に据えたのは小津安二郎の最後のミューズ、岩下志麻。彼女は長年、松竹の看板女優がやくざ映画の主演を務めるなど誰も想像していなかった。完成した映画は大ヒット、東映のドル箱になったのだが、東映の真の狙いは…。 pic.twitter.com/LTt3sAuPP2

2016-06-08 16:16:09
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小玉大輔 @eigaoh2

松竹女優の象徴岩下志麻のパブリックイメージを根本から覆したことだった。以降、岩下志麻と言えば「極妻」となり、松竹時代の正統派美女イメージを消し去ってしまったのだ。東映は高倉健、渡瀬恒彦、「蒲田行進曲」の借りを返すことに成功したのだ。 pic.twitter.com/PWoPkE9kg5

2016-06-08 16:17:05
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小玉大輔 @eigaoh2

怨念と意地が交錯し、女優たちを犠牲にした松竹と東映の戦いは90年代に入ると決着を見ないまま収束していった。その後、このような映画会社間の激烈な抗争は行なわれていない。それが映画ファンにとって幸せかどうかは誰にも分からない…。 pic.twitter.com/XSYDyIfH9f

2016-06-08 16:18:12
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