ニンジャスレイヤー第三部最終エピソード「ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ」予告編
重金属酸性雪で灰色に染まった摩天楼は、さながら整然と立ち並ぶ緩慢な巨人たちのカンオケ。蜘蛛の巣の如く張り巡らされるケーブル。整然とハイウェイを走る陰鬱な車の列は、死骸を貪る甲虫の群れか。だがこの街に真のハカバは無い。合理化の名のもとに撤去され電子化、管理下、やがて忘却の果て。
2016-06-14 22:42:15……「ああ、そうさ、今日も残業だ」百十七階。高層オフィスビルの回廊。バリキドリンクを飲みながら、疲弊したサラリマンが窓際に立つ。「寒波?心配だから早く帰ってこい?……そんなふざけた理由で、休めるわけないだろ。なあ、いい加減現実見ろよ。オーボン?そんなもの、知るか。これが世の……」
2016-06-14 22:45:16彼はドリンク剤を取り落とし、声を失った。「おい、今……!何だ、今の……!」彼は己の目を疑い、サイバーサングラスを外して捨てた。降りしきる重金属酸性雪を切り裂いたのは、火花、銃弾。そして透明の防弾ガラス窓に突き刺さった。鋼鉄の星。スリケン。その鋭いシルエットが、網膜に焼きついた。
2016-06-14 22:48:22サラリマンはガラス窓に張り付き、目を凝らした。反射したガラス面には、自分自身の姿。その先には、ネオサイタマのふざけた現実が広がっていた。
2016-06-14 22:49:00ここは百十七階。防弾ガラス窓の向こう。カタナを握った女ニンジャが二本煙草を吹かし、破れたジャケットの袖と傷を見ていた。直後、彼女はガラス窓の僅かな足場を蹴って走り、カンバンを飛び渡り、危険なほど鮮やかにスリケンを投げ放った。
2016-06-14 22:51:46暴徒鎮圧ドローン3機が冷たく明滅しながら彼女を追跡し……目にも留まらぬ斬撃で切断され、爆ぜた。火花散らす無数のパーツと、破壊されたクローン脳髄の緑色の血が、防弾ガラス窓に叩きつけられた。サラリマンは茫然とそれを見ていた。そして足元に目を転じた。
2016-06-14 22:53:52その遥か下。雪に染まったマルノウチ大通りでは、いつの間にか、市民とハイデッカーの衝突が発生していた。ニュースの知らせぬ騒乱が。アマクダリの洗脳サイバーサングラスをかけ、柔らかな鎮静プログラムに浸り続ける市民には、決して見えず、決して聞こえぬ戦争が。生き残りをかけた戦いが始まった。
2016-06-14 22:54:44音楽。ノイズまみれのゲリラ放送電波が、周波数をハイジャックする。……『ヨー、人々、これはKMCレディオ。DJゼン・ストーム、ヒナヤ・イケル・タニグチ、そしてDJニスイ、デリヴァラーが送る……革命レディオ!』
2016-06-14 22:57:07「イヤーッ!イヤーッ!」ヤモトはチリングブレードの連続攻撃を鞘で打ち返し、斜めに斬りつける。「グワーッ!……ウフフフフ!」チリングブレードは噴き出す血を押さえ、ヒステリックに笑った。「つくづく邪魔な女、厄介なジツよ。だが増援を待つ俺の仕事は……成ったぞ!」
2016-06-14 23:00:40「ドーモ」頭上から飛び降りた白い髪のニンジャがアイサツした。「サクリリージです」ニンジャは己の胸に手を突き刺し、血塗れの肋骨を引き抜いた。ナムサン。これが彼のカタナなのか!チリングブレードは刀傷を氷で素早く止血し、凍てついたツルギを構える。「二対一……これをどう戦うかのォー……」
2016-06-14 23:05:03「……カラテだ!」ヤモトの瞳が桜色に燃えた。チリングブレードは獰猛に目を見開く。「いや、三対一!」「ドーモ。アンブレラです」激しく狂い舞う雪の中、カラカサを開いたニンジャがゆっくりと降り来たった。
2016-06-14 23:05:36