【ブルータル・ブラインド・ビースト】#1

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ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

◉ブルータルブラインドビースト劇場◉

2016-06-18 11:01:24
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

【ブルータル・ブラインド・ビースト】

2016-06-18 11:02:14
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

『新しスシ・ドンブリ!実際安いドンブリ・ポン!』ネオサイタマ全域に展開するチェーンドンブリ店、ドンブリ・ポン。騒々しい店内BGMに被せて、新商品の宣伝アナウンスが放送される。短い昼休憩時間、スーツ姿のマケグミ労働者たちは、喧騒とともに実際低品質なドンブリを掻き込む。

2016-06-18 11:03:30
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

日々に疲弊し、午後からの労働を呪う彼らが、店内の一角にたむろするブキミな三人組に注意を払うことは無い。それぞれ威圧的なTシャツ、白塗り顔、席には楽器ケース。一人は金の長髪に目隠し布。もし彼らを観察している奇特な者がいるならば、そこに書かれた文字を読み取ることができるだろう。

2016-06-18 11:05:09
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

『AAAHDDUB』。ブッダを冒涜するワードだ。彼らがブラックメタリストであることに疑いの余地は無い。一般市民にとってその類の連中は、音楽者というよりも犯罪者のイメージが強い。それは彼らが度々起こす聖職者殺人やシュライン破壊のせいだ。彼らはしばしば無軌道テロリストと同一視される。

2016-06-18 11:05:47
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「BBBにもそろそろ新曲が欲しいな」スキンヘッドの巨漢がハシでドンブリを叩きながら、他の二人に提案する。「だな」大量の逆さ仏像のアクセサリーを身に付けた男が短く返す。メモと筆ペンを取り出し、「なんかテーマ挙げろ、マス」「仏像を燃やす」巨漢マスが即答した。

2016-06-18 11:06:31
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「それ前やったろ」「突き詰めんだよ、インフェルノ・クヨーエを。それからベンド・ザ・ボンズも」力説するマスの言葉を取り敢えずメモする。「どうもなんか足んねえな」「じゃあエーカー、お前が何か挙げろよ」「ブッダ偏微分」「ツマンネ!ビースト、お前は」「ネギ赤トーフ丼がうまい」

2016-06-18 11:07:23
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

ビーストと呼ばれたのはアンタイブッダ目隠しの男だ。他の二人はとうに食べ終わっているにも関わらず、彼だけはまだ、覚束ない手つきでスプーンを使いドンブリを食べている。目隠しを取れと言う辛辣な読者の方もいるかもしれない。だが、彼の目隠しの下、空洞の眼窩を目にしてもそれが言えるだろうか?

2016-06-18 11:08:05
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

彼は自らの手で己の眼球を抉り出したのだ。それだけではない。長髪が隠してはいるが、その下には無惨な耳の切り落とし痕がある。彼が、かような凄惨な自傷に及んだ深遠なる理由を語ることはない。「トーフ?話聞いてたか」「トーフ、成形された信仰、オカラめいた骨粗鬆」二人は白い顔を見合わせた。

2016-06-18 11:08:59
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「「テンサイ」」エーカーとマスはビーストの含蓄ある言葉に同時に感嘆した。「でもこれどうすんだ、トーフの歌やるか」「いや、俺たちのアイディアがこれで繋がる……全部」エーカーは筆を走らせる。ビーストは食事に戻っている。「仏像も燃やすのか!?」「そうだ!そう……できたぞ」

2016-06-18 11:10:00
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

エーカーはメモを掲げる。『カラケシ・カリカチュア』。大きく曲名がショドーされていた。「アアアダブ」マスが思わずアンタイブッダワードを唱えた。なんたる過激アトモスフィア溢れるタイトル!「歌詞は任せろ、四日で書き上げる」「頼む」「ゴチソサマデシタ」三人はアンタイ合掌し、オヒラキした。

2016-06-18 11:11:11
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

ビーストはマントを羽織り、ギターケースを背負う。ケースに入っているのはギターではない。サイバーバトーキンと呼ばれる電鳴マニアック弦楽器だ。彼は先ほどのエーカーとマスとともに、アンタイブディズムブラックメタルバンド活動をしている。彼はヴォーカルとサイバーバトーキニストを兼任する。

2016-06-18 11:11:43
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

彼は、嘗てはただ一人でアンタイブディズム音楽活動を行っていた。だが彼のそれは音楽になりえなかった。「ブッダに呪われているようだった」あらゆる努力が水泡に帰す毎日に、カンニンブクロに溜まるアンタイブッダ衝動が爆発しそうだった。そのとき、彼はマスとエーカーに出会ったのだった。

2016-06-18 11:12:16
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

エーカーは彼の思想を音に変えた。マスは彼の思想を詩に変えた。彼の世界は、二人を通してようやく音楽になった。「ブッダよ、我の言葉を封殺せんとするならば」彼はドンブリ・ポンを後にし、ネオサイタマの街へ。「我らは我らが言葉をもってアンタイせん」突如暴走トラックが襲来!「ワーッ!?」

2016-06-18 11:13:10
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

CRAAASH!トラックは速度を落とさずドンブリ・ポンに突っ込み、そして停止した。店内無惨!ビーストは?彼は間一髪、驚異的な跳躍力を発揮し、トラックの進路上から逃れていた。無事!サイバネ改造もされていない彼が、何故かような身体能力を持つのか!?そもそも彼は目が見えないはずでは!?

2016-06-18 11:14:19
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

答えは単純である。彼は又の名をブルータルブラインドビースト、ニンジャである。彼は非凡な感知能力を持ち、盲目であっても周囲の様子を把握できる。ではその非凡な彼は、何故暴走トラックの接近を寸前まで感知できなかったのか?それは彼の単なる油断に他ならない。ネオサイタマは油断ならぬ街だ。

2016-06-18 11:15:05
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「死ぬかと思ったぞ」ブルータルブラインドビーストは乱れた服を直しながら立ち上がる。幸い怪我は無い。衣服も多少汚れた程度だ。だがそこで彼は不自然に気付いた。背にあるべきものがない。マントではない。「バトーキンはどこだ」彼はそれの気配を探るが、知った形を見つけることはできなかった。

2016-06-18 11:15:59
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「アイエエ……ヤッチマッタ」衝撃で酔いの醒めたトラック運転手は、己が破壊した店を見た。賠償を求められるだろう。彼にそんなマネーは無い。「逃げよう」彼は驚くほど冷静に状況判断し、運転席から外に出た。「どこへ行く」「アイエーエエエ!?」サイバー馬の頭部を携えた憤怒の悪鬼がそこにいた。

2016-06-18 11:17:16
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

アマミ・ゲンザンはネオサイタマに数少ないシャミセン職人だ。泡沫めいて物品が生まれ消えてゆく都会では、シャミセンなどのトラディショナル製品は殆ど忘れ去られている。だが、粗悪イミテイションでない「本物」を必要とするならば、彼のような職人の出番となる。彼は辛うじて存在意義を保っている。

2016-06-25 13:36:44
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

驚くべきことに、彼の生活レベルは標準的だ。なぜか?それはシャミセンを必要とする客層に秘密がある。性や薬物の刹那的快楽に溺れるマケグミがシャミセンを嗜むだろうか?否。彼の客は殆どがカチグミだ。観賞用の装飾華美な特注品を望む客も多い。そして、彼らの機嫌を取れば、金の払いは良くなる。

2016-06-25 13:38:32
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「ミスージノー、イトニー……」アマミは完成したばかりのシャミセンを軽く弾いて音を確かめる。「悪くない」アマミは頷いた。とはいえ、これもまた観賞用だ。これ以降に弾かれる機会があるだろうか。「良いさ、シャミセンは鳴ってこそよ」そのとき、フスマが開いた。「イラシャイマセ」声をかけた。

2016-06-25 13:42:56
ブルータルブラインドビースト @aaahdduBBB

「カネだ!カネを出せ職人!」下着覆面で顔を隠し、包丁を構えた中年強盗が押し入ってきた!「アイエエエ!」客を想定していたアマミは絶叫!よく見ればこの強盗、声や脚が震えている。生活に困窮しての悪性ヤバレカバレか!しかしアマミはそれを知る余裕もなく、知ってどうなるというものでもない!

2016-06-25 13:44:11