空想の街　雑貨屋　氷涼祭2016

SAIKI @saiki_vc

雑貨屋は眠い目を擦りながら起き上がった。カーテンを開けると部屋に差し込む日差し。カーテン越しに感じる外気は既に熱さを帯びている。氷涼祭。今年もその時期がやってきたのだとあくびをしながら思う。#空想の街 #雑貨屋

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今日は時計塔広場で風船が配布されるからそうそうお客様も来ないだろうが、念のため風船を補充しておこうと考える。それから和風小物も。明日の和装に備えてか、今年は帯留めや和風のアクセサリーを求めるお客様が多かった。#空想の街 #雑貨屋

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街の外れにあるこの小さな雑貨屋でも少しずつお客様に足を運んでいただけるようになったのは、ひとえに先日タウン誌に載せていただいたからではないかと考えていた。タウン誌の力って凄いな。あらためて感謝をする。#空想の街 #雑貨屋

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店に着いた雑貨屋はベストに袖を通す。この店を始めた時からの、夜の闇で作られた相棒。人にはよく暑そうだと言われるが、夏はベストの下に一工夫をしている。正確に言えばシャツに氷を少しだけ編み込んであるのだ。#空想の街 #雑貨屋

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地下深くにできていた氷を運んでくるとき、そのときの記憶も一緒についてきた。氷のあった場所、その暗さや冷たさを。その場所から離れても、氷が氷のままでいられるようにと。そういえば先日すべて出てしまったハンカチは、この氷を同じように編み込んだものだった。#空想の街 #雑貨屋

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どの年も暑さ対策には苦労するものだ。地下水や氷を編み込んだもの、雪を取り入れたものがよく出て行くようになるとそう思う。外の看板を「OPEN」に変えながらぼんやり見上げた空は透き通るように青い。小さく見えるのは白鴉だろうか。#空想の街 #雑貨屋

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いよいよ明日は氷涼祭。そう考えると少し落ち着かない。1年ぶりに会えるのだから無理もないかと思わず苦笑する。今年は何をしようか。色々と想像してみたが本人に聞くのが一番早いし確実だろう。考えるのはこの辺にして店に集中する。#空想の街 #雑貨屋

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そろそろかな、と思っていたところに丁度ドアベルが鳴る。「いらっしゃいませ」そう声を掛けると思っていた通りの青年。「お久しぶりです」笑う彼は昨年とそう変わらない。「今年も彼女へ何か？」「はい。実は彼女からリクエストがありまして」#空想の街 #雑貨屋

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「リクエスト？」思わずおうむ返しに答えてしまったが今年はどうやら勝手が違うらしい。「彼女がここに来たいと言うんです。昨年、プレゼントは毎回どこで買ってくるんだと問い詰められまして。それでここの話をしたら私も行くと」少し申し訳なさそうに彼は笑う。#空想の街 #雑貨屋

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そこまで聞いてピンときた。「つまり今年は、実際にここに来てプレゼントを選びたいと」「……そうなんです。すみません」「謝ることではないでしょう。歓迎しますよ」どうかすると泣きそうな彼に笑って言う。そうするとようやくほっとした表情になってくれた。#空想の街 #雑貨屋

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「そうすると、用事があるのは今日ではなく明日ですね」「急に来られてもご迷惑かと思いまして」急に来ていたとしてもそんなに困ることにはならないが律儀な人だ。苦笑して了承する。「では明日、お待ちしております」#空想の街 #雑貨屋