セイバー提督と神通さん【第三話】

映画「エネミーライン」と小説「ダイナミック・フィギュア」ネタを再現できたので満足です ※途中、神谷と国木田の関係が「上司部下」➡「同期」とすげ変わってますが、そこはそういう仕様でして、出世に差の出た元同期という・・・すいません書き間違えましたァァァァ!!!
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深海さかな @dzurablk_kai

大湊警備府から下北半島をまたぎ、太平洋側に抜けた場所に位置する、青森県猿ヶ森砂丘 別名、陸上自衛軍猿ヶ森試験場はその日、珍しく喧騒に包まれていた 「第一戦車大隊、配備完了」 「各普通科中隊、準備よし」 「護衛艦隊のミサイル支援は順調に推移」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 22:49:51
深海さかな @dzurablk_kai

砂丘の切れ目、数少ない森と砂の境目に寄り添うように備え付けられた、87式通信車に併設された第七師団の司令部テントはごった返す無線で、静かになることがない 「三沢と八戸の航空隊は?」 第七師団長、国木田は骨張った面立ちから鋭い眼光を放ち問いかける #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 22:54:38
深海さかな @dzurablk_kai

「三沢方面は敵のジャミングにより通信途絶、八戸からは一個飛行隊しか出せないと・・・」 「対戦か?」 「いえ、通常の第9飛行隊です」 国木田は部下に聞こえぬよう、癖で出た舌打ちを密かに口の中で噛み殺す 「あの物量の敵を陸上戦力で足止めしろ、ということか」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:00:01
深海さかな @dzurablk_kai

テント外の砂丘にハルダウンした戦車や装甲車、自走対空砲が睨む先の太平洋では今ごろ、海を埋め尽くさんばかりの黒い群れが海岸に殺到していることだろう そろそろ深海棲艦と呼ばれる化け物が、目視で確認できる頃合いだ 国木田は宛にならない無線室を部下に任すと、 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:04:43
深海さかな @dzurablk_kai

デザート迷彩に彩られたLAVに乗り込み手近な指揮所へ向かわせた 固めな後部座席に腰を落ち着けると部下の目の無いことをいいことに、ズボンのポケットに隠し持ったピースを取り出す国木田 「全く、あの化け物が来てからと言うもの、こっちにはろくな仕事が無いな」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:08:51
深海さかな @dzurablk_kai

「私らに楽な仕事なんてありませんよ」 そう返したのは助手席の陸曹だ 天井の銃座についた隊員の脚を避けて差し出されたライターに紫煙で答えると国木田は、ようやく満足げな顔になった 「戦車は足りない、航空支援は来ない、挙げ句敵は物量戦だ こんな事があるか?」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:12:36
深海さかな @dzurablk_kai

「遠すぎた橋みたいですね」 国木田の毒舌に慣れた銃座の普通科隊員が半笑いで答えた 「あんなのは映画で観るのがいいんだよ 自分でやるのなんてまっぴらごめんだ」 「全くです」 笑い声に包まれる車内 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:14:05
深海さかな @dzurablk_kai

「大体、あの深海棲艦てのは何なんだろうな?」 と、レンジャーに向けてドライバー 「さあな 何でも噂じゃ、新興資源が原因でで産まれたらしいが」 「新興資源?」 そう聞き返したガンナーに、セブンスターに火を点けながらレンジャーは答える #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:25:42
深海さかな @dzurablk_kai

「これは通信の知り合いから聞いた話なんだが ニュードとかいう自己増殖する資源が原因らしいんだ それが生態系を乱したんだと」 「なんだそりゃ? 聞いたこともねえ」 「まぁた与太掴まされましたね?」 「いやいや、本当なんだよこれが」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:29:01
深海さかな @dzurablk_kai

腕の赤十字に似つかぬタバコをくわえたまま、レンジャーは車内中央に顔を寄せ声を潜めた 「ほら、師団長も聞いたことありませんか? エイジェンとかいう宗教団体の話」 「ああ、あの訳のわからん連中か」 国木田の記憶だと、化学防護隊のマーク対象になっていた団体だ #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:32:20
深海さかな @dzurablk_kai

新聞やニュースでは北欧かどこかに本拠を構える自然保護団体が母体となった環境保護団体、くらいにしか紹介されない影の薄い団体だ 「あれがニュードを海にばら蒔いたんだとか」 「それを今度は、東京の地下鉄でやろうってのか?」 国木田の皮肉に笑いが漏れる車内 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:35:23
深海さかな @dzurablk_kai

「そういう話です」 「全く、下らん話だな」 「そんな夢のような資源があるんなら、戦車や支援戦闘機も無数に生産できて万々歳じゃないですか」 「ほんとほんと! いやあ、一曹の話は勉強になります!」 そんな雑談を聞き流しながら、国木田の視線は海辺に注がれる #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:39:59
深海さかな @dzurablk_kai

突然日本近海に現れた深海棲艦と、その圧倒的な物量にやむなく青森まで撤収した北海道の第七師団 そこに何の予兆も因果関係も無いと思い込んでいたが、今にしてみれば北海道に再開発の話が持ち上がった時期と深海棲艦の出現時期は確かに一致する #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:43:44
深海さかな @dzurablk_kai

だが空を飛ぶロボットを見た、内閣の秘密部隊が新型ヘリの運用をしている、なんて隊員の噂が飛び交うくらい、ここ最近の北海道を巡る状況は複雑怪奇だったこともまた事実 結局のところ真相など、常時ECMが飛び交うこの青森上空の電波事情とさほど変わりなく五里霧中だ #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:48:35
深海さかな @dzurablk_kai

「・・・今度市ヶ谷に言ったときに、同期に探りでも入れてみるか」 そうぽつりと漏らした国木田に 「お、やっぱり師団長は話が分かる!!」 そうレンジャーが歓声を上げた直後、車内の無線機ががなり声を吐き出した 「敵第一波、来ます!!」 #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:51:14
深海さかな @dzurablk_kai

その報告が終わらぬうちに車内のとりとめもない雑談は、120mm戦車砲の轟く砲声にかき消されていった #私の彼はブラストランナー

2016-06-30 23:52:03
深海さかな @dzurablk_kai

『ねー神通ー? 結局あの話受けるのー?』 目を閉じてセイバーのコックピットに身を収めていた神通は、姉のそんな問い掛けに目を開けた 「そのつもりですけど・・・」 『えーなんでー!? 神通ちゃんいなくなったら通常任務はどうするのー!?』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:45:48
深海さかな @dzurablk_kai

神通は不満げに声をあげる那珂に答えた 「ブラストの操縦訓練を受けられて、報酬として新型の機体まで貰えるなんて話、断る理由がありません 二水戦の任務なら陽炎たちに任せてますから大丈夫よ」 『えーでもー!!』 『私も反対だ』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:49:26
深海さかな @dzurablk_kai

那珂に続いて声を上げたのは、大湊警備府の提督こと、セイバーのOSだった 『いくらなんでも急すぎる 次の機会でいいじゃないか』 そう言って引き留める神谷に、川内が無線越しに悪戯っぽい言葉を投げ掛ける 『あー提督、神通が他の機体に乗るのが嫌なんでしょー?』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:51:41
深海さかな @dzurablk_kai

姉のジョークに人知れず頬を染める神通をコックピットのカメラでひとしきり観察した神谷は、その様子をHDDレコーダーに記録してから川内に言い返した 『馬鹿言うな 神通が訓練したいのなら、協力するに決まってるだろう』 『じゃーなんでー?』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:54:41
深海さかな @dzurablk_kai

忍び笑いを含んだ声音に、神谷は声のトーンを落とす 『・・・胡散臭いんだ、今回の話』 「胡散臭い?」 神通が問い返す 『ああ、話が出来すぎてる』 『どの辺がー?』 神谷は那珂に答えた #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:58:00
深海さかな @dzurablk_kai

『訓練期間も演習場の位置も、主催者のプロフィールさえ「社則で公表できません」だぞ? そのくせ報酬だけは釣り上げる これが胡散臭くなくてどうするんだ やっぱりそんな依頼に、神通を出させる訳には・・・』 「提督」 神通の声にコックピットが沈黙に支配される #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 18:59:50
深海さかな @dzurablk_kai

「私は少しでも、ブラストを上手く操れるようになりたいんです」 『神通・・・』 「そのためなら多少危険な依頼でも、乗り気ってみせます」 神谷はそんな、神通の一途な言葉になにも言い返すことはできなかった 再び沈黙が降りしきったその時 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 19:10:02
深海さかな @dzurablk_kai

『あと3分で着くぞ、準備してくれ』 そう男の声が無線に割り込み、セイバーのコックピットは目映い色とりどりな光に包まれた 神谷がメインシステムを立ち上げたのだ 『神通、起動準備だ』 「はい」 すっかりこなれた手つきでスイッチを弾いていく神通 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 19:12:18
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