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帽子男 @alkali_acid
ショタ勇者が、魔王にさらわれた幼馴染のおね姫様を救い出すために身の丈より大きな聖剣を背に、旅に出て、立ちふさがる幾多の怪物を斬って斬って、とうとう闇の城までたどりついて、対決する
帽子男 @alkali_acid
激闘の末に満身創痍で、巨大に変身した魔王を斃し、城の地下に囚われていた姫のもとへたどりつくと、そこには幾多の怪物にとりかこまれ、もてあそばれている姫の姿。乳房は何倍にもふくらみ、尻は厚みを増し、手足は失われ、髪は伸び放題で、腹は満月のように膨らんでいる。
帽子男 @alkali_acid
少年は刃こぼれした光の刃を振るってすべての怪物を切り伏せ、愛する人に腕を伸ばす。すると触手から解放された唇があえいで、言葉をつむぐ 「どうか…」
帽子男 @alkali_acid
「この子だけは殺さないで…」 少年は凍り付く。女の悲痛な表情。 「この子だけは…」
帽子男 @alkali_acid
振り返ると、切り刻んできた異形の敵には、どこか、おかしなところがある。一匹の蟾蜍に似た首を見下ろすと、死んだ瞳は、姫と同じ青。 「あ…ぁ…」 「私の…子供を…もう…殺さないで…」
帽子男 @alkali_acid
少年は絶望し、武器を振り上げ、力なく下ろし、背を向けて立ち去る。 背後からすすり泣きが聞こえる。
帽子男 @alkali_acid
十数年後。山奥で暮らす元勇者の青年。長身だが女と見まがうほどほっそりして長髪という、俺の好きな感じの容姿でお願いします。
帽子男 @alkali_acid
絶望に駆られて、剣を捨てて、城を数刻さまよってから、再び地下へ戻ると、姫の姿はどこにもなかった。四肢のない奴隷がどうやって去ったのか、あるいは魔王のしもべに残党がいたのか。
帽子男 @alkali_acid
勇者は姫の行方を捜したが、見つけらなかった。一方で王国は少年の力を隣邦との戦のために使いたいと願うようになった。探索の旅の道すがら、騎士がたびたび追いすがっては城へ戻るよう請い、拒むと次第に王は不信を強め、ついに姫の命を奪った疑いをかけ、謀反の徒として捕縛の命を発した。
帽子男 @alkali_acid
かくして少年は人里を離れ、山奥に隠遁することとなった。低かった背は伸びて、ひょろりと高くなったが、筋骨隆々には程遠い。今は冒険のあいだに覚えた薬草の知識をもとに山の幸を採り、身分を隠して野人の集落と取引をする程度の交流しかない。
帽子男 @alkali_acid
ひとりだけの静かな日常。けれど折に触れ、夢を見る。再び少年に返り、神々の祝福を受けた無双の膂力を振るって魑魅魍魎を屠ってゆく。だがどれもが姫の顔をしている。どれもが姫の声で泣きさけび、血を吐く。
帽子男 @alkali_acid
目を覚ますと汗でぐっしょり濡れている。 「…僕は…なぜ」 あの時、身重の姫のそばを離れたのか。己の所業に耐えられなかったからか。姫の恐怖に面していたたまれなかったからか。
帽子男 @alkali_acid
かつて勇者だった青年は甕に汲んだ水で、山の民にしてはなめらかすぎる肌を洗い、粗織の服に袖を通す。子供の熱に効く白羽根草をとりにゆこう。野人の集落にも最近ずいぶん新しい命が生まれたから、きっと必要になる。
帽子男 @alkali_acid
東屋を出たところで、不意に頭をあげて、西の方に頭を向ける。かすかな殺気が、近づいてくる。抑えていても、感じ取れる。狼や熊とは異質の、闇の族(うから)だけが持つ強い死の気配。 だが元勇者は身構えるでもなく、ただじっと待つ。やがて、草叢を分けて、小さな影が姿をあらわす。
帽子男 @alkali_acid
少年が立っている。愛した姫君によく似た、憎んだ魔王によく似た、人と魔の混交した顔だち。 「お前が、勇者か」 恐れげもなく尋ねる。
帽子男 @alkali_acid
「昔はそうだった。君は?」 「僕は…魔王だ!お前に殺された父と兄弟の敵を討つ」 「お母さんは?」 「…?」 「君のお母さんはどうしてる」 「死んだ」 「そうか…」
帽子男 @alkali_acid
「勇者のくせに、聖剣はどうした!」 「あれは捨てた」 「ふん。僕相手なら素手で十分だとでも?」 元勇者は答えず、じっと幼き魔王を見つめてから違うことを尋ね返した。 「…私を殺したら、そのあとはどうする」 「くだらない質問だな。決まっている」
帽子男 @alkali_acid
「父や兄弟の命を奪うようお前に命じた人間の王を殺し、国を蹂躙してやる」 「なるほど。そういうことなら」 元勇者はゆっくりと戦いの構えをとる。 「止める」 「やっとその気になったか。ゆくぞ」
帽子男 @alkali_acid
幼き魔王が変形を始める刹那、勇者の前蹴りが精確に小さな胴を撃つ。 「がぶっ…」 次いで拳の連打で顔面に集中して浴びせると、鼻血を垂らして、ひざまずいた標的のうなじのあたりにようしゃなく手刀を浴びせる。
帽子男 @alkali_acid
二代目の魔王は母方の血が強いのか、人に近いらしい。あの日、闇の城で斬り捨てたどんな怪物よりも、もろい。 そうだろうか。当時まだ小さかった勇者は、すでに並の男の百人力を発揮することができた。成長した今、不要になったというのに、拳も蹴も岩をも砕くほどの武威を得ているかもしれない。
帽子男 @alkali_acid
それをもろに浴びて、なお爆ぜずに立っているだけで、幼い魔王は頑丈とは言えないだろうか。 いずれにしても元勇者は崩れ落ちる半魔の少年を見降ろしながら、どこか悲しげな面持だった
帽子男 @alkali_acid
「結局また、僕は…同じことを」 だが倒れた相手は息絶えてはいなかった。近づくと呼吸している。 ほっとした元勇者は、華奢な敵を小屋に運び込む。打撃は体内深くまで衝撃となって浸透しているかもしれないが、できる限り手当してみよう。
帽子男 @alkali_acid
破壊に比べ治癒の技は簡単ではなかったが、元勇者はかつて戦いの中でつちかった薬草の知識を掻き集めて、施療にあたる。まず湯を沸かし、全身を日光菊と月影蘭の花でおおい、霊芝の滴を切れた唇に垂らす。
帽子男 @alkali_acid
次に服を脱がせる。素肌に直接あてさせるのが一番だ。だがどういう作りなのか、魔王の衣は頑丈で、結び目も解けない。恐らく防御のためだろうが。苛立った勇者は指で金具をつかみ、ねじり切る。
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コメント

のくた6/2神戸かわさき @knockta 2016年7月2日
前半だけがTLにRTされていたからワクワクしながら続きを見たら……ひでぇ(褒め言葉)      ・・・・
欠点’s @weakpoints 2016年7月3日
もうちょっとだったのに(フゥ・・・
徳川か〜とん @katn250 2016年7月31日
こういうストーリー好きだぁ