デビルサマナー葛葉あきつ丸vs吸血極道 #3
(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)
2016-07-02 21:01:19「ふむ、こっちでありますか。感謝するであります」「ピー!」上機嫌な様子で飛び回ると、妖鳥・チンはあきつ丸の封魔管の中へ戻っていった。「すげえな、悪魔って」アキラは感心した様子で頷く。「いや、アキラ殿も悪魔ですよ?」「俺はヤクザだ!」「ヴァンパイアでもありますっ!」1
2016-07-02 21:03:05「ハッハー!隙ありィーッ!」突如、フスマを破ってオニが現れた!棍棒を振り上げ、2人に襲いかかる!「オラァッ!」「ゲフッ!」アキラの上段蹴りがオニの顎を砕く!続いて、あきつ丸が横を駆け抜け、オニの胴を一閃!「ガハァッ!サヨナラ!」オニは爆発四散!2
2016-07-02 21:06:10あきつ丸とアキラは一時的に共闘していた。屋敷中の悪魔が2人を敵と見なしていたからだ。そして、手を組んだ2人の侵入者は強かった。既に階段を5階分上がり、バリケードも3つ突破している。アドリブで動きを合わせる程度、この2人の強者に訳はない。3
2016-07-02 21:09:05「なあ、ちょっと聞きたいんだけどよ。アンタ、テンドウのタマ狙ってるって言ってたよな。なんでだ?」「依頼を受けたからであります」「依頼?誰のだ」「守秘義務があるのであります」「しゅひ……?」アキラは首を傾げる。あきつ丸はため息を付いて説明した。「秘密という意味ですよ」4
2016-07-02 21:12:07「ああ、俺みたいにテンドウにケジメがあるわけじゃないのか」「ケジメ?」あきつ丸の表情に、驚きの色が浮かんだ。「悪魔がヤクザに恨みを買うって、何事でありますか」「そんなにビックリすることか?」「ふつう、逆であります」「ああ、それはあれだ。俺はちょっと前まで人間だったからよ」5
2016-07-02 21:15:06フスマを開け、中を確認してからアキラは先に進む。「元々俺は、ゴッドビーチ・ヤクザクランっつー組の一員だったんだ。カミウラのオヤジを守ることが、俺の役目だった……だけどな、テンドウの野郎は、オヤジと五分の盃を交わしたってのに、いきなり不意打ちしてきやがったんだ」6
2016-07-02 21:18:02ゴッドビーチ・ヤクザクランは、西東京にある小さな組だ。これといって儲かる訳でもない小さな町を、十数人の組員で守り続けていた、今時は珍しい地元密着型ヤクザだった。規模は小さいながらも、組長のカミウラは広いコネと高い手腕を持ち、他のヤクザたちからは一目置かれていた。7
2016-07-02 21:21:03テンドウもまた、東京に出てきた頃は彼の友誼にあやかっていた。二人は意気投合したようで、程なく五分の盃を交わしている。ヤクザの世界では、お互いを対等な友と認めた、命よりも重い仁義の証である。テンドウは、その盃を投げ捨てて、カミウラを殺害した。8
2016-07-02 21:24:05「オヤジは首をねじ切られて、俺もその時に死にかけた……だけどな、その時オヤジに噛まれたんだ」「それで、ヴァンパイアになったのでありますか」「ヤクザヴァンパイアだ!」「そこはそんなに重要なのでありますか?」「ああ、大事だ!ヤクザヴァンパイアに噛まれたらヤクザになるからな」9
2016-07-02 21:27:01通常、ヴァンパイアに噛まれた人間は、個体次第だが同じヴァンパイアやグール、あるいはゾンビになる。しかしヤクザヴァンパイアに噛まれた人間は、例え女子高生であろうと、教師であろうと、看護婦であろうと、ヤクザになる。そしてカタギから生き血や現金をせしめるのだ。10
2016-07-02 21:30:10「つまりカタギを噛んだと……」あきつ丸は刀の柄に手をかけた。退魔師の目つきになっている。「いや、待ってくれ。確かに2、3人は噛んだけど、全員ヤクザだ!」「ヤクザを噛んだらどうなるのでありますか?」「ヤクザのままだ。ただ、血がマズいからあんまり飲みたくねえ」「ほう……」11
2016-07-02 21:33:05「オヤジの親友がな、そういう難しいことを色々教えてくれたんだ。オヤジ、ヤクザヴァンパイアの本性を隠すために、色々無理してたんだってよ」そのせいで、ヤクザヴァンパイアとしての本来の力が出せず、テンドウにも太刀打ちできなかったとも、アキラは聞かされていた。12
2016-07-02 21:36:04「そんなオヤジを俺が支えなきゃいけなかったのに、俺はテンドウに手も足も出なくて、オヤジを殺されちまった。だからせめて、オヤジの仇を討ちたい。それが俺のケジメだ」力強く握りしめたアキラの拳はブルブルと震えている。本気で悔しがる様子を見て、あきつ丸は刀から手を離した。13
2016-07-02 21:39:01「そういう事情でありましたか。申し訳ない」「別に謝ることじゃねえよ。それより、前」「おや」廊下を曲がった先には、悪魔たちがタンスやテーブルでバリケードを組んで待ち構えていた。「さっきと同じ調子で頼むぜ。サマナーさんよ」「承知であります」あきつ丸は懐から封魔管を取り出した。14
2016-07-02 21:42:05「そこ、落とし穴だから気をつけな」「ああ、はい。どうも」何の変哲もない畳を、提督と浦風は避けて歩く。彼女たちを案内するのは、白黒のストライプスーツを着たヤクザ風の悪魔だ。しかも浦風の知り合いである。正確には、人間だった頃の知り合い、という意味だが。16
2016-07-02 21:45:05「にしてもサブ、随分偉くなったのう。昔はTシャツとジーンズしか着るもんが無かったっちゅうのに」「親分から、着るもんにもーちょい気をつけろって言われたんすよ。見た目でナメられたら、ウチらの商売は成り立たんってね」サブは、悪魔らしからぬ人懐っこい笑みを浮かべた。16
2016-07-02 21:48:06「うんうん。ええ言葉じゃのー。提督も気をつけなアカンよ?」「むう。私だって身だしなみには気をつけてるよ。今日だってほら、いいスーツ着てきてるし」提督は両腕を広げてスーツを見せびらかしてみせる。それを見て浦風とサブは同時に言った。「「金ヅルじゃな」」「やかましいわ!」17
2016-07-02 21:51:06「しっかし、サブが悪魔になってるとはのー……。ビックリしたわ。そんな話、父ちゃんからは聞いとらんからのー」この悪魔は、元は浦風の父親の知り合いだった。小さいころの浦風とも遊んだことがあるらしい。今はテンドウの東京行きに付き合って、この組で働いているそうだ。18
2016-07-02 21:54:06「いや、まあ……そりゃ言えねえっすよ。組員の殆どが悪魔になってるなんて」そう答えたサブの顔は、非常にバツが悪そうだった。「そりゃあ、悪魔になったらなったで、生活とか色々大変ですしね。デビルサマナーを雇うとかじゃダメだったんですか?」今度は提督がサブに尋ねた。19
2016-07-02 21:57:02葛葉あきつ丸から聞いた話のお陰で、提督は多少悪魔に詳しい。人間が悪魔化すれば、相応のリスクが伴うことも知っていた。だから、大きな組織ではデビルサマナーを雇い、敵の悪魔に備えたり、逆に悪魔をけしかけたりするのだ。20
2016-07-02 22:00:22もちろん、派手にやり過ぎればヤタガラスや森羅といった退魔組織に目をつけられる。だから、普通はテンドウのように屋敷を異界化させたり、次々と人間を悪魔化させたりはしない。提督が疑問に思うのも当然だ。「悪魔を雇うなら、専門家に任せたほうが良かったでしょう?」21
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