【Lancer】Beginning of Rebellion -前編-
- gr_starneon
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それはかつて、仮面ランサーではなくシンキの名で呼ばれていた頃の記憶。ギルド軍所属のハンターとしてその道を歩んでいた男の運命を変えた出来事であった。-1
2016-07-04 23:02:08モンスターの狩猟依頼を完了させ、集会所の憩いの場に戻ってきたシンキ。食欲をそそられる香ばしい料理の匂いと、談笑に賑わう他のハンター達の声に満ちた空間に包まれてようやく狩りから生還できたという安堵を得る。-2
2016-07-04 23:03:04彼は一年程前にギルド軍の一般部隊に任命され、最近では単独で任務をこなす程に実力をつけてきているが、やはりモンスターとの戦いに身を投じるという事は常に生死の危険を伴うものだ。-3
2016-07-04 23:04:04何より、同僚ハンターがその驕り故に命を落としたという話を何度か耳にしてきた。自身ではそう同じ轍を踏むつもりはないが、戦いの中での不幸はいつ起きるか分からない。近い立場の者が実際に死んだというその事実が存在するだけでも狩猟中の恐怖心を煽るには十分だった。-4
2016-07-04 23:05:06そうした緊張もすっかり和らぎ、人混みを掻き分けながら空いてる座席を見つけて腰を掛ける。そしてこれから食事を注文する為にまず兜を外した。汗にまみれた肌が外気にさらされ、心地よい風に開放感を得る。-5
2016-07-04 23:05:08「お? お前さんもしかしてシンキじゃないか?」 不意に背後から懐かしい声に呼び掛けられた。その声の主が誰なのかは瞬時に出てこなかったが、よく親しみ慣れた人物であることは無意識の内に分かっている。シンキが振り向くと柔和そうな顔をした一人の男が立っていた。-6
2016-07-04 23:07:04「アンタは……ヘリックか! 久しぶりだな」 その姿を見るやシンキはだいぶ綻んだ声で相手に語りかける。 「おーやっぱりなー! 調子はどうだ?」 そう言ってヘリックは同じテーブルの椅子に座ると頬杖を付き、ワクワクした様子でこちらを覗き込む。-7
2016-07-04 23:08:04「まあまあだな。最近はすっかり単独行動ばかりになって疲れっぱなしさ」 それを聞いたヘリックは妙に驚いた表情をした。 「単独で? そりゃ何でまた?」 理由を問われたシンキは軽く溜息をついた。自嘲するかのように口元を上げつつ。-8
2016-07-04 23:09:07「ここにいる連中とはどうも馬が合わなくてな……最初にチームを組んだ奴らも俺をやたら見下すような態度で文句ばかりつけてきやがる」 それこそまさにギルド軍の抱える大きな問題点だった。-9
2016-07-04 23:10:08選別を受けて昇格したギルド軍のハンターであるということはそれ自体がある種のエリート階級を意味する。それ故に一般ハンターと比べて格上であるという自信から彼らを見下す風土が広く浸透しており、新入りだった時のシンキも同じように軽蔑されていたのだ。-10
2016-07-04 23:11:10「ふ~むそれで先輩と喧嘩でもしちゃったのかい?」 恐らくヘリックは揉め事が原因で外れ者にされてしまったのだと考えたのだろう。結論から言えばほぼ正解だがその過程は少し違った。-11
2016-07-04 23:12:05「いや、それである日あいつらに言ってやったんだ。これなら一人で狩りに行く方がマシだってな。そしたら単独でリオレイアの狩猟に行かされてな……その狩りを成功させて帰って来たらあの連中何も言わずに逃げるように俺を避けだしたんだ」-12
2016-07-04 23:13:07結局は群れなければ碌に戦えない連中だったのだろうな。あの時の様子を振り返ってようやく気付いた。彼らの中では一人で飛竜を狩るなど常軌を逸する領域の話だと思ってたから俺を屈服させてやる為に無理難題を押し付けたつもりになっていたのだろう。-13
2016-07-04 23:14:06実際、現役のハンターであっても巨大なモンスターには一人の力で敵うものではないと信じている者も少なからずいるという。だから当初の思惑とは裏腹に五体満足で戻ってくる俺に相当ショックを受けたのだろう。むしろ不気味さすら覚えたのかもしれない。-14
2016-07-04 23:15:09「なるほどなー。だが俺が来たからには大丈夫! 固い絆で結ばれた我が戦友たちを紹介しよう!」 そう言うなりヘリックは立ち上がるとシンキの腕をぐいぐい引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。 「お、おいこれから飯食うところなんだが……」 「飯なら皆で食う方がうまいぞぉ!」-15
2016-07-04 23:16:06一度決めると止まらなくなるのは相変わらずだな。シンキはそう思いつつも久々の戦友との再会に心が躍るかのような感覚を覚えた。ギルド軍という組織に所属するものとして今の今まで周りに味方がおらず孤独に戦い続けるのは先行きが不安だった。-16
2016-07-04 23:17:04しかし、こうして信頼のできる友が現れたのは願っても無い事。陰りの見えていた自分のハンター人生に日が差したようだった。そんなことを考えつつヘリックに引き摺り回される事数分、見慣れぬ三人のハンターが集まるテーブルでようやく彼は足を止める。-17
2016-07-04 23:18:04「よー待たせたな皆の衆!」 「おせーよヘリック。また迷子にでもなってたのかよ?」 少々柄の悪そうな顔つきをした赤髪の男が真っ先に罵声で迎える。だがヘリックは特に気に留める様子もない。 「そうではないのだ! 何と! 俺の後輩がついにギルド軍所属になったのだー!」-18
2016-07-04 23:19:09それを聞くと何に驚いたのか三人が一斉にざわつきだした。 「ヘリックに後輩なんていたのかよ!」 「かわいそうに、そりゃ苦労しそうだな」 「へーアンタがそうなのか! 俺はセイン、よろしくな」-19
2016-07-04 23:20:10三人は口々に好き勝手言いたい放題し始める。ヘリックは地味に自分をバカにした発言をされてる事に気付き、何だと―と仲間にすかさず反論し始めた。一瞬にして場がやかましいほどに賑わいだし、初対面の人ばかりでなかなか落ち着けないが、そこまで嫌いな雰囲気ではなかった。-20
2016-07-04 23:21:03「よしじゃあ早速クエストに連れて行こうぜ!」 「いや、ついさっきクエストから帰ってきたばかりだから遠慮しとく」 赤髪の男からの誘いを丁重に断る。さすがにソロ狩りからの連戦は身体が持たない。-21
2016-07-04 23:22:07「えーそりゃ聞いてないよー」 「お前は知ってるだろ」 ふざけた調子で文句を垂れるヘリックに即座にツッコミを入れてやる。以前の付き合い柄、こういう時に知っててわざとらしい事を言うのは覚えていた。そのやり取りを見ていた他の三人も爆笑している。-22
2016-07-04 23:23:05今の反応を見るにやはりヘリックの扱いはこの仲間内でも相変わらずのようだ。 「ハハハ、まあそれなら仕方ないな。じゃあ明日にしようぜ」 「明日だと俺は先約があるから今日はいつもの面子で行くとして、明日は皆で行ってきなよ」-23
2016-07-04 23:24:08