キアロスタミ追悼

大好きな監督でした。
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佐野亨 Toru Sano @torusano1124

またしても動かない身体をソファに横たえ少しだけウトウトして起きると、アッバス・キアロスタミの訃報が。感覚の鬼のようなひと。淀川長治さんが「(観ないと)死刑だ」と言った『桜桃の味』は90年代につくられた最も美しい映画のひとつだろう。ソフト廃盤中の『クローズ・アップ』再上映を望む。

2016-07-05 07:54:26
阿部和重 @abekazushige

確実に世界の映画史に残る傑作中の傑作。youtu.be/hoY5QF3mYoA

2016-07-05 07:55:39
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こゆるぎ岬 @o_thiassos

まじで。。キアロスタミ死んだん。。

2016-07-05 08:05:48
こゆるぎ岬 @o_thiassos

最も敬愛する映画作家のひとりであるキアロスタミが亡くなってしまわれたので、簡単に思いなど書いてみるか。

2016-07-05 09:57:52
こゆるぎ岬 @o_thiassos

①以前も書いたけど、キアロスタミの映画は97年の『桜桃の味』が初体験で、衝撃を受けた。これは「ジグザグ道3部作」の3作目で、荒涼としたイラクの郊外の煤けた茶色の風景の中、絶望した男が自殺を手伝ってくれる人を探し、知り合った人との交流が描かれる。ただ、キアロスタミは並の監督でない。

2016-07-05 10:10:37
こゆるぎ岬 @o_thiassos

②自殺したい男は無口で、死にたい理由を語らない。当然自殺幇助など断られる。死にたい理由はしいていえば「自殺は罪だ。しかし不幸も罪だ。不幸な人間は他人を傷つける。それは罪だ」ということ。一人の老人が引き受けてくれる。この鳥を殺して剥製を作る仕事をしている老人はこう言う。

2016-07-05 10:14:34
こゆるぎ岬 @o_thiassos

③主人公は致死量の睡眠薬を飲んで穴を掘って入るから上から土をかけてほしい。老人はこの自殺を決意した男と少しの時間をともにし、手伝いの報酬を家族の医療費に充てる旨を話し、ささいな喜びで生きていることを明かす。「すべてを拒み、すべてを諦めてしまうのか?桜桃の味を忘れてしまうのか?」

2016-07-05 10:20:33
こゆるぎ岬 @o_thiassos

④主人公はやがて自殺穴を掘り、中に横たわる。老人に「もし寝てるだけかもしれないから、声はかけてくれていいよ!」横たわった穴から、暗い夜空と月が見える。ここで映画が顛末を明らかにせず、終わる。しかしここからが、キアロスタミ。その桜桃の味という映画の撮影風景に画面を切り替えてしまう。

2016-07-05 10:23:36
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑤荒涼とした秋の煤けた風景ではなく、撮影に取り組んだ時期では同じ場所が、春の青さ、生命の輝きに満ちていた。主人公もそこでは笑っている。絶望した男に生への希望が灯ったのか、それは明かさず、この世の美をメタで被せてくるんである。淀川さんは、キアロスタミのこのセンス、才能に感動した。

2016-07-05 10:29:59
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑥確か昔はイランは子供映画しか作ってはいけない、という法があったのだとか。キアロスタミの初期の映画は子供映画ばかりだ。 デビュー作の10分に満たない『パンと裏通り』は、少年がおつかいをした帰り道、怖い犬がいる路地をなんとか通り抜けようとするだけの話だが、スリルとサスペンスがある。

2016-07-05 10:49:22
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑦『ホームワーク』では、イラクの子供にとって「宿題」とはいかなるものなのか、学級の一人一人へのインタビューをしていくことのみで、イラクの教育制度の問題を炙り出していく。ラストの、子供の「音読」に音楽をつけたあざとい演出も、痛烈な皮肉だろう。

2016-07-05 10:57:07
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑧伝説の映画『クローズアップ』は、シネフィルが尊敬する著名な映画監督になりすまし、一般人にあなたたちで映画を撮ると騙し詐欺で捕まる、という実際の事件を、なんとその本人を使って再現する。偽映画監督が自分を演じることで、自分という人間を知っていくんである。なんちゅうトリッキーな挑戦。

2016-07-05 11:07:54
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑨僕が一番好きな『友だちのうちはどこ?』は、小学生が「次に宿題忘れたら退学だ」と教師に言われた隣の席のクラスメートの宿題ノートを間違えて持ってかえって来てしまうことから始まる、甘美な冒険の物語。こんなに美しい映画のラストを他に知らない。購入オススメ☆

2016-07-05 11:13:54
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑩『そして人生はつづく』は前作『友だち~』の撮影現場を見舞った大地震のドキュメントで、そしておそらくキアロスタミの最高傑作なのだが、『そして人生はつづく』の撮影中に、男キャストが女キャストにコクってフラレたという実話を、当人たちに別の設定を与えて演じさせる『オリーブの林をぬけて』

2016-07-05 11:19:46
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑪『オリーブの林をぬけて』は、配役された設定とガチの恋愛を混同した主人公が、この映画の撮影が終わったら大好きなこの子に会えない!という動機で撮影中に猛アタックを仕掛ける様がそのまま描かれる。虚実がないまぜになっている。こんな切り口で大胆に映画を撮ってしまう作家など、やはりいないわ

2016-07-05 11:24:48
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑫以上書きなぐったけど、ジャンルの優れた才能は、そのジャンルで表現できることの「枠」を拡げる。それが映画なら、映画で出来ることの可能性を拡げる。だからこそキアロスタミは偉大だった。矮小な人間を見つめ、映画作家として自分の道を拓いた。キアロスタミがいたから映画の味わいを深められた。

2016-07-05 11:28:58
こゆるぎ岬 @o_thiassos

⑬敬愛するキアロスタミへの哀悼の意として、今日はこれをパラパラめくることにする。「そして人生はつづく」が、キアロスタミの人生が終わっても、キアロスタミの映画はつづく。 pic.twitter.com/cssUeyshEI

2016-07-05 11:33:04
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こゆるぎ岬 @o_thiassos

どこかでキアロスタミ追悼上映してくれないかなぁ。 『パンと裏通り』 『トラベラー』 『クローズアップ』 『友だちのうちはどこ?』 『そして人生はつづく』 『オリーブの林をぬけて』 『桜桃の味』 『風が吹くまま』 くらいは。。

2016-07-05 11:45:44
こゆるぎ岬 @o_thiassos

一点間違い、『桜桃の味』はジグザグ道三部作ではないですね。

2016-07-05 11:47:19
こゆるぎ岬 @o_thiassos

キアロスタミは小津が好きで、黒澤明はキアロスタミが好きだったんだよな。むろん蓮實重彦はキアロスタミを日本に知らしめるのに一役かってたわけだが、やっぱ、淀川先生がキアロスタミの映画を語るときに子供のように喜んでいたのが印象的だなぁ。前衛的な試みを「遊び心」としてすんなり受け入れてた

2016-07-05 11:54:21