- samayoikurage
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はーい、それでは始めていきます。自民党憲法草案、緊急事態条項の説明と検討、です。さあ、何人フォロアーさんが減るかなっ?質問があったら言ってくださいねー。わかる範囲でお答えします。
2016-07-07 19:35:15今回の参議院選挙で改憲派が3分の2の議席を取ると改憲がなされる可能性が高くなります。根拠は現行憲法96条。「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民投票において、その過半数の賛成を必要とする。」という趣旨。なので3分の2で発議が可能です。
2016-07-07 19:36:53発議のあとは国民投票があるんだけど、改憲派に3分の2を与えた世論は、過半数が憲法改正(「改訂」という人もいますが法文に合わせます)に賛成する可能性が高いですよね。したがって、憲法改正が行われる可能性が高いです。じゃあどんな内容なのかな、色々ありますが、緊急事態条項を見たいです。
2016-07-07 19:38:53自民党の憲法草案はここで見られますよ。Q&Aもあるから合わせて読んでくださいね。 constitution.jimin.jp/draft/
2016-07-07 19:39:48草案98条以下が緊急事態条項ですね。長いんですが、簡略化して言うと、緊急を要する事態が起こったときは、内閣総理大臣が緊急事態宣言を発し、これにより、内閣が法律を作ることができ、何人もこれらに従わなければならない、ということです。
2016-07-07 19:44:29さて。これの何がマズいのか、という検討に入ります。そのためには昔の話からしなくてはいけません。昔は王様が法律を作り、これを官僚に実行させ、裁判も自分の意のままにやっていました。これを独裁制と呼んでもいいでしょう。
2016-07-07 19:50:55独裁制の長所は名君がスピーディに優れた政治を行えることです。短所は愚かな王様がスピーディにとんでもない政治をやってしまうことです。人類は幾多の経験の末、名君を期待するより愚かな王を取り押さえておく方がましだ、と考えるようになり、いわゆる三権分立が主張されました。
2016-07-07 19:52:06三権分立とは、文字通り、三権、すなわち司法・立法・行政の3つをそれぞれ別人に担わせ、それぞれがそれぞれを監視・干渉・抑制し合うことで暴走を防ごうというシステムのことですね。モンテスキュー。覚えておられますでしょうか。
2016-07-07 19:53:46したがって、立法と行政は同一の人間がやってはならないのです。そのようなことをすると、自分で作った法律を自分で執行することになってしまい、三権を分けた意味がなくなるからです。今回の緊急事態条項はこれに反する可能性がきわめて高いです。なぜなら、内閣が法律を作れるからです。
2016-07-07 19:56:29立法と行政は兼ねられてはならない。これは人類があまたの血の上に掴み取った真理です。自民党の憲法草案はこれに真っ向から異を唱えるものです。とうてい許容することができません。
2016-07-07 20:01:58問題はまだあります。憲法草案99条3項です。要は「緊急事態においては命令に従いなさい」と書いてあります。どんな命令が発せられるのかわかりません。これを白紙委任してしまっていいんでしょうか。憲法とは政府の暴走を防ぐセキュリティ装置なんです。白紙委任は許されません。
2016-07-07 20:03:54しかも緊急事態の間、衆議院は解散されません(草案99条4項)。国民がストップをかける機会は失われていると言わなくてはなりません。緊急事態条項についての検討はさしあたりこんなところです。続いて、予想される反論について述べたく思います。
2016-07-07 20:06:23自民党は親切にもQ&Aを作ってくれました。 constitution.jimin.jp/faq/ これです。これもできたら目を通してほしいですけど…。
2016-07-07 20:08:41「どのような事態が生じたときにどのような要件で緊急事態の宣言を発することができるかは、具体的には法律で規定されます。」と明記してあります。法律で。つまり、国会の過半数で、ということです。与党の思い通りに、ということですよね。(与党はふつう、国会の過半数を占めています)
2016-07-07 20:10:07もう一度草案の99条以下に戻ってもらって、と。やたらと「法律の定めるところにより」と書いてあるのがわかります。これなら大丈夫なんではないでしょうか。国会は法律を作る過程でコントロールすることができるのではないでしょうか。
2016-07-07 20:13:57いえ、そのようには考えられません。日本の政治はもともと、三権分立をちょっと緩和しているんです。内閣総理大臣は国会で選任されますよね。ということは与党が総理大臣を決めますよね。これを議院内閣制と申します。もっと三権分立を徹底した制度もありますけどね(アメリカ大統領制など)。
2016-07-07 20:15:30とすれば、法律のコントロールは及ばないと考えられるでしょう。なぜならば、その法案を提出し、多数決を占めることができるのは他ならぬ与党なのですから。議会運営にもよりましょうが、与党は常に高い可能性で法律を成立させることができる、と考えてよいでしょう。
2016-07-07 20:17:17また歴史に戻って、と。大日本帝国憲法を見てみましょうか。 ndl.go.jp/constitution/e… 23条を見てほしいです。「日本臣民は法律に依るに非ずして逮捕監禁審問処罰を受くることなし」(カタカナをひらがなに直しました)。「法律によるにあらずして」とありますね。
2016-07-07 20:19:52「法律によらなければ○○できない」というのには2つの意味があります。1つは「○○したければ法律を作れ」というもの。もう1つは「法律を作れば○○してよい」というものです。これを「法律の留保の2つの意味」と言います。
2016-07-07 20:21:13大日本帝国憲法は多くの権利を臣民に認めていましたが、「法律を作ればOKだよ」との規定があまりにも多かったのです。そしてさまざまな勢力が法律によって臣民の権利を制限し、治安維持法のような法律もでき、多くの国民が苦しみました。
2016-07-07 20:22:38このような反省から、日本国憲法では法律の留保を極力少なくし、さらに、憲法は国会の3分の2以上の発議で…という例の条文もつけました。このように憲法改正の要件が法律より厳しくなっているのを硬性憲法といいます。単純過半数の与党では憲法を改正できないのですね。
2016-07-07 20:25:12というわけで、「法律の定めが必要だから緊急事態条項を憲法においても大丈夫でしょ」という反論には、「法律は与党が作り、与党が議会を支配しているのだから大丈夫ではない」と再反論することができます。これは歴史に学ぶところですね。
2016-07-07 20:27:01話が長くなりましたのでこのあたりでやめますが、今度の選挙が終わり、改憲派が参議院の3分の2を超えれば、憲法改正の発議が行われる可能性はきわめて高いです。なぜなら、それが安倍首相の悲願だからです。私が今話したことが皆さんの投票の参考になりますように。質問があればどうぞです。
2016-07-07 20:29:07